第33話 西城裕也はクズであれと願う
いっその事、一昨日私を襲ってくれればこんなに悩む必要も無かったのに、等と考えてしまうくらいには私は精神的に追い詰められていた。
『なにそれ? アイツはやっぱり最低じゃん。 女をペットか何かだと思ってるんじゃないのっ!? 釣った魚には餌をやらない典型的な屑野郎ねっ!!』
そして妹は私の話を聞いても尚激昂しているのだが、とりあえず『西城裕也のやる事なす事全てが気にいらない、アイツが何をしようと悪いのはアイツ。 だってアイツはクズだからアイツが全て悪いに決まっている』という思考になっている事が、アイツの行動に疑問を感じたからこそ感情を排除して第三者目線で思考できる余裕が生まれた私だからこそ理解できた。
そして思う。
今までの私はどうだっただろうか?
西城裕也のした事だからと、妹のように勝手にアイツが悪いと決めつけていなかっただろうか?
していないとは思いたいのだが、それを肯定する事が出来ない今までの自分がいるのも確かである。
そして今朝の西城裕也と東城圭介とのやり取りを思い出す。
もし今回の婚約の件が、本当の被害者が西城裕也だったのだとしたらアイツの素性を知らない第三者が状況だけ見ればどう考えても悪いのは私と圭介ではないか。
そして私は『アイツに限ってそんな訳がない。 今まで私は間近でアイツのクズ具合を見て来たはずだ』と自分に言い聞かせる。
そうでなければ私はどの面下げてアイツに会えば良いのか分からなくなってしまうのと同時に、私の親がしでかした事の罪悪感により潰れてしまいそうだからである。
だからこそ、西城裕也はクズであれと願うのであった。
◆
「何だ?」
「……いえ、何も」
そもそも何で未だに北条彩音がここにいるのか理解に苦しむ。
結局彩音は今回も俺の家に泊まっていったらしく、今も俺と一緒に朝食を食べているではないか。
因みに両親は今お互いに仕事や予定で忙しくてこの場に居ない事だけが救いだ。
もしこの光景を見て『仲睦まじい二人』『何だかんだ言って歳の近い者同士上手くいっている』などと思われてはたまったモノではない。
別段だからといって今後の進展が狂うとかは無いとは思うのだが主に精神的にキツイものがある。
むしろそれを見込んだ高度な嫌がらせではないかと思ってしまう程だ。
そもそも彩音は俺の事が嫌いなはずであるのに、何故わざわざ俺の元に来るのかが本当に理解に苦しむ。
昨日の彩音の反応を見るに彼女は未だに俺の事を嫌っており、東城圭介の事を異性として好意を寄せているという事は、東城に引き寄せられた時の女の顔と、その後俺に向ける侮蔑の視線を見れば一目瞭然である。
ならばそのまま学校終わりにでも二人で乳繰り合てくれた方が俺としては、一つ攻める武器を手に入れれる事ができるのでありがたいと言うのに、そこまでバカでは無かったという事か。
いや、昨日の圭介の啖呵を聞く限りそのレベルのバカであるとは思うのだが……。
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