第30話 そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
そしてやはり一番気を付けなければならないのは東城圭介だろう。
今日のアイツの反応を見る限り感情で動くタイプなのは間違いないので、今の状態で殺されるとすれば東城圭介が今の所一番の本命だと思って良いだろうが、北条姉妹は俺の家にいてもおかしくないという立場を利用してくる可能性も十二分にある為今一番俺を殺すことを成功させる確率が高いと言えよう。
となるとなんだかんだで全員ヤバイ事になるのだが、それはこの世界に来たその時から分かりきっているので今更である。
むしろ逆に言えば俺がこの世界に来たこと自体がイレギュラーなのである。
そもそも西條祐也本人は近い未来幾つもの死亡フラグが立っている事も当然知らないわけで、死亡フラグしかない事を知っている俺とでは警戒心などは雲泥の差であるのは間違いない。
そう考えれば、現段階で生き残る確率がゼロから間違いなく一以上にはなっているのは確かなので、今のところは今の状況で満足するべきなのかもしれない。
こういう場合は決まって、変に欲を出してしまって失敗するものである。
とりあえずは現状維持で様子見で行こうと、自分の中で今後の方針を決めるのであった。
◆
私は今何を見ているのだろうか。
今目の前には犬飼さんと西條祐也が親しげに、しかも授業中にもかかわらずヒソヒソと会話している姿が目に入ってくるではないか。
あれは本当に西條祐也なのだろうか?
クズで、性格が悪くて、ましてや自分の側仕えに対してあの様な親しげな態度や表情をするような奴ではない筈である。
それに、今朝も急に胸を揉まれた時はビックリしたのだが、その後耳元で謝罪された事にも驚いた。
その時は、あのいっ時だけだと思っていたのだが、思い返せばアイツは私の妹も襲われそうになった所を助けてくれたし、それに二日間彼の家に泊まったというのに結局何もされなかった。
だから私はこの西條祐也という男性を見極めようと思う。
そこまで思った瞬間、私の中での西條祐也という人物像が少しずつではあるものの、確かに変わってき始めている事に、私はまだ気付けていないのであった。
◆
「お帰りなさいませ、祐也様」
「……一体何をしている?」
家に帰ると北条彩音が三つ指をついて出迎えてくれた。
な…何を言っているのかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……。
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
このイベントはエロゲでは体験していないので、完璧に不意打ちであった。
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