第28話 熟知している者の味方

「そうは言うても、アイツの言っている事は間違うてないからなぁ……」

「あ? お前はアイツの味方って言いたいのか?」


 そんな時、南川翔子がまるで俺ではなくてアイツの方が正しいと言うようなニュアンスで話しかけてくるではないか。


 どこをどう見れば俺の方が悪くなり、アイツの方が正しくなるのか俺には理解できない。


「そうやない。 そうやないけど、あの二人は日本の法律上では婚約者同士なのは間違いないと言うとんねん。 そしてお前がやっとんのはどう考えても女性サイドにちょっかいをかけて既に決まった婚約を破断させようと動いているわけで、個人の感情などを全く考慮せず状況だけで見ればどう考えてもお前が悪役やと言うとんねん」

「だが、どう考えてもアイツは彩音の弱みに漬け込んで無理やり婚約をさせられているのは明白だっ!! そんな事おかしいだろうっ!!」

「だから、状況だけで考えたらと言うとんねん」

「でもっ!!」

「デモもへちまもあらへん。 それに彩音は無理矢理婚約させられたと言うたんか? うちは自分から西條祐也の婚約者になる事を選んだという言葉しか聞いたことあらへんで?」

「そ、それはだから……西條祐也が彩音の弱みに漬け込んで断る状態ができない状態で婚約を持ち込んだからだろうっ!!」


「彩音は、自分の恋と、家族と北上グループを天秤にかけて家族と北上グループを選んだだけやないの」


「なんか言ったか?」

「いや、なんも。 まぁ、確かに断れない状況で婚約を持ち込むのは卑怯やなと」

「当たり前だろっ、人の気持ちを踏み躙るような事が罷り通ってたまるかっ!! そんな事が罷り通る法律ならば、法律の意味がないだろうがっ! そんな事すらも分からない西條祐也には正義の名の下で法の裁きを下してやるべきだっ!」

 

 やはり、アイツには一度現実というものを、悪は裁かれるという事をその身でもって教えてやるべきだろう。


 この俺に上から目線で偉そうに説教をしてきた事を後悔させてやる。


「覚えてろよ、絶対に許さねぇからな」


 そして、東城圭介の後ろで「法律は正義の味方やない。 法律を熟知している者の味方や。 そこを理解できていないと足元すくわれるで……」という南川の言葉は結局彼には届かなかったのであった。


 



 正直言って高校の授業は俺にとっては単なる予習復習でしかない上に、西條祐也の記憶まであるとなると退屈で仕方ない。




──著者より


昨日のコメントはありがとうございました。

皆様のコメントから胸もみはアリという判断にいたしました( ^ω^ )ノはいっ!




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る