第4話 どこまで行っても中途半端

 しかしながらこれで分かることは、西條祐也の今現在の北条彩音と婚約するルート、その中で数多ある死亡エンドから自殺エンドは無くなったと見て良いだろう。


 だがそのルートへ持っていくには北条彩音を無理やりそういう行為をして初めての経験を奪わないといけないわけで……。


 流石にこればかりは俺もこのルートを選ぶ勇気も度胸もない。


 西條祐也自身はここまでやったのに全てが無駄であったという現実を突き付けられて自暴自棄になったのだろう。


 自殺するくらいなのだから彼の苦しみは俺如きが想像できるような苦しみではなかった筈である。


「祐也、学校はどうだい?」


 そして朝食を取る為にダイニングへと向かう。


 流石西條家、風呂場からダイニングへ行くだけでも数分はかかるほどの広さであり、広すぎるのも問題だな、と思わず思ってしまう。


「いや、いつも通り普通だ。 可もなく不可もなく。 楽しくもなければ面白くもない。 いや、馬鹿ばかりでつまらん」

「そうか。 何かあれば報告するんだぞ? お前は西條家の跡取り息子なんだ。 その道を邪魔する物はそれが何であれ西條家の全てを駆使して握り潰してやるからな」

「ああ。 分かったよ親父。」

「それなら良いが。 それと──」

「『全てにおいて西條家に恥じぬ、結果を叩き出せ。 それが出来ぬのならばお前を庇ってやる道理もない』だろ? バレたら困るような犯罪行為やらないしテストやスポーツでも常にトップで居続けてやるよ」

「あぁ、分かっているのならばそれで良い。 それでこそ俺の息子だ」

「はいはい」


 そして俺たちのやり取りを微笑ましく眺めているだけの母親。


 結局の所この両親も何処か狂っているのだろう。


 そもそも両親には俺の為ならば他人の人生がどうなろうと知った事ではないという雰囲気すら感じてしまうし、間違いなくそう思っているのだろう。


 そんな両親相手に、両親から見て多少・・素行が悪くなった程度で何かが変わると思っていたあたり、やはりというかなんというか世間知らずなお坊ちゃんだったのだ。


 どこまで行っても中途半端。


 それが、西條祐也の記憶やゲームでの情報から感じた俺の感想である。


 それにしても、この朝食だが不味くはない。 確かに美味い。 だが何かが物足りない。


 献立はザ和食といった感じの朝食で、焼き魚に味噌汁に卵焼きに白ごはんなのだが、せめて醤油くらいはかけさせて欲しい。


 入院した時に食べたような味付けと言えば分かりやすいだろう。


 こればかり食べて来たような人間からは何も感じないのだろうが、ジャンクフードやファストフード、インスタントやレトルト食品で回していた独身時代を過ごしていた俺からすれば、よく言えば繊細な味付け、悪く言えば物足りないとどうしても思ってしまう。

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