第2話 最悪の事態

 

 ◆


 流石西條家、銭湯の大浴場かと言いたくなるような広さの風呂で朝風呂を入り家政婦が用意した下着と制服に着込み、家族で朝食を取る。


 西條家の家族構成は両親に長男である俺の三人家族である。


 現代では珍しくないよくある家族構成ではあるのだが、これが逆に西條祐也を精神的に追い詰めていく要因であるというのがゲームでのキャラクター設定として情報が出ていたし、西條祐也の流れ込んできた記憶でもその情報は合っていた。


 その原因なのだが、西条家の跡取りというプレッシャーに一人息子という環境が大きい。


 なんだかんだ言ってもまだ未成年であり子供である祐也の小さな背中一つに西条家という重すぎる重荷が背負わされるのである。


 裕也は弱さを見せる事も許されず、そして大人達と期待を裏切らない為にも全てにおいて完璧でいる必要があった。


 その結果、性格が捻じ曲がってしまったという事なのだが、それは周囲の期待を裏切りたくないという彼の純粋さでもあり、性格が捻じ曲がっても根っこの部分では腐りきれなかったのだろう。


 だからこそ祐也のルートではヒロインや主人公等に殺されるルートの他に、ヒロインと行為を及んだ後に罪悪感と片思いであったヒロインと行為をできた満足感で自殺するルートがある程である。


 恐らく自分で自分自身の心を守る為に演じたキャラクターに耐えられなくなった、ある意味この作品の加害者的な立ち位置でもあり被害者でもあったのだろう。


 結局のところクズには間違いないのだが、クズになりきれないクズであったと言えよう。


 もちろん、彼がゲーム内で行った行為の数々は許されないようなものも多々ある為、だから救われるべきだとは思わないし、自業自得だとも思う。


 逆に言えばこれから俺はゲーム内で行ってきた取り返しのつかないような悪行には手を出さす、性格最悪だよね程度の嫌われ者ポジションでエンディングまでやり過ごせば何とかなるかも知れない。


 流石にいきなり良い人を演じるのは怪しすぎるし、そもそもゲーム内の展開を変えてしまう恐れがかなり大きいと見て良いだろう。


 そうなれば俺の唯一の武器であるゲームの知識が全て無駄になる可能性まで出てくるのだ。


 それだけは何としてでも避けたい最悪の事態とも言えよう。


 未来が分かるからこそ逆に安全であり、生き残る事を最優先事項にするのならば、表面上は悪役で、取り返しのつかない展開になるイベントや行動は避けて行動する生活を徹底した方が良いと判断する。



 

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