岸に立つ


 江戸時代を生きる兄弟に起こった、ある悲しい物語がある。兄は弟と生きるために働いた。癒えぬ病を抱えた弟は、その傍らで自らの首に剃刀を滑らせた。兄の負担を減らすため、その苦しみから逃れるために弟は、「殺してくれ」と兄に頼んだ。

 悲壮な決意に歪んだ彼の顔を見て、弟はきっと救われたのだろう。兄が最後に見た弟は、安心したような、柔らかな笑みを浮かべていたという。


 私は、少しだけ、分かった気がした。

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その川渡る舟に乗るのは 翡翠 @Hisui__

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