第5話 メイド・サーシャの証言

私はサーシャと申します。


アレク様の専属のメイドとしてアレク様がお生まれになってからずっとお世話をさせていただいております。


本日は執事のセバスにアレク様を夕食にお連れするようにと命令されましたので、アレク様をお迎えにと移動しました。


アレク様の部屋に着き、何気なく扉を開けると目の前には大声を出した後に手のひらを前に出したままで恥ずかしそうに(真っ赤な顔になって涙目で)突っ立ったままのアレク様がおられました。


はっ!


その時、私は思い出しました。


私の弟がよく子供の頃に魔法ごっこをしていたことを。


魔法が出せなくても子供たちは木の枝を持って魔法を詠唱し、出もしない魔法をイメージして戦っていたなと。


そういう遊びがあったなと。


目の前のアレク様の姿が、まさしくそれだと。


まだ3歳ですが、やはり男の子はそういった遊びを喜ぶのだと思いました。


また恥ずかしそうに私の後ろにおとなしくついて来られるアレク様はとても可愛らしゅうございました。


アレク様はあまりご両親には似てはおられません。


アレク様もご両親と似ていないことに気づいておられるようで部屋に鏡を置く事を極端に嫌っておられました。


おそらく自分の容姿に気がついてショックだったのでしょう。


でもちゃんと血の繋がった親子であることは父君であられる国王様から言われております。また王妃様との仲も睦まじいので不貞があったわけではないこともこの屋敷で働く全ての者には理解しております。


私はアレク様のメイドとなって本当に良かったと思います。またこのような戯れの時に立ち会う事ができればと心から願うばかりです。


ふふっ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る