魔法が使えるオーガは異端者認定されますか?

@namari600

序章

男は不毛の大地に倒れ伏した。

ここまで消耗したのはいつぶりだろうか。

寝返りを打って空を見上げてみる。

相変わらず空は雲に覆われている。

子供の頃に何度も見た太陽は久しく見ていない。

まったく、こんなくだらないことを始めたのはどの種族の誰だろうか。

「まぁ、馬鹿が格上に喧嘩売ったのが始まりなんだろうな」

悪魔や精霊、のような神霊種。

オークやゴブリンなどの異形種。

クラーケンやグリフォンなどの魔動物。

さらに、獣人などの亜人種までが争う大戦争。

最近は天使まで動き始めて厄介極まりない。

中立や不殺を貫いていた種族はとうの昔に消えた。

昔の人族は随分と好戦的だったらしい。

「お陰様で、今現在、黒龍とやり合うことになっているんだがね」

男は起き上がると、目の前に降り立った、先ほどよりもかなり大きい別の黒龍に目を向ける。

「若造よ。恨むのなら、あの世で中立を捨てた貴様らの先祖に言ってくれ」

「一匹死んだだけで族長自らが来るとはね。もしかして身内だったりする?」

黒龍の眉間がピクリと動き、後ろに夥しい数の魔法陣が展開される。

「図星なら言ってくれればいいのに」

魔法陣一つ一つから無数の白い炎が放たれ、一気に視界が奪われる。

さらに、足元の地面が爆発して吹き飛ばされる。

「障壁20枚に身体強化を貼ったはずなんだけどなぁ?相変わらず龍の使う魔法は」

「燃え尽きろ!!!」

追撃の炎魔法は無詠唱の空間魔法で飲み込む。

「じゃあ、本日何度目かの戦闘開始っ!」

         

というのが俺の前世である。この黒龍族長の他にも多くの強敵と争ってきた大魔道士は……

「は〜い。ご飯ですよー」

「はむ」

米をお湯で溶かした離乳食なるものを食べていた。それも女性に。

「よく噛んで食べるんですよ」

女性にしては高い身長。がっしりとした筋肉。

ある部分を除けば普通の人間である。

頭のツノさえ無ければ。

間違いなく亜人種のオーガである。

(初めの頃は、俺が死んだ後に発動する術が作動しただけいいと考えていたが……この甘やかされる生活がまだ続くとなるとなぁ)

思わず体を身震いさせる。

それを見た母オーガ……エナトが心配そうに見つめてくる。

とりあえず笑顔で反応。

「では、ご飯も食べ終えたことですし、お昼寝でもしましょうかね〜」

(いや、どうせならオーガの歴史とか教えてほしいのだが)

俺の意見などそっちのけで、エナトは口元を布巾で拭ってくる。

拭い終えると俺を抱いて、藁を敷いて布をかけただけの寝具に俺と共に横になる。

そのまま、寝息を立てて寝てしまった。

その姿を見ると、俺も眠たくなってくる。

(これからどうしようか)

俺は考えながらも眠りについた。
















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