第14話 勝負はあっけなく
更新遅れて申し訳ないです。
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「すいませーん!大将の方はいらっしゃいますか!」
聞こえてきた声の発生源まで行き視認できるくらい近くまで行って大きな声で話しかけた。
それまで、「えいえいえい」「「「おうおうおう」」」と聞こえていた賊の陣地がシーンと静かになる。
そしてしばらくすると、「はい私です。」と言う声とともに、若い男性が出てきた。
髪の毛こそ黒いがパーマを掛けているようになっていて服も小さく破れて、ダメージジーンズのようになっている。
現代にいたら間違いなくギャル男認定されるような出で立ちだが、今の返事から真面目な性格であることは容易に想像できる。
もしかしたら、リーダーの人は話せばわかるかもしれない!
そんな期待を胸に話しかける。
「こんにちは。僕は奈良県の県神、大宮神です。ここの県神である、天水分神の代理として来ました。単刀直入に言います!反乱を企てようとするのはやめてくださいっ!」
一瞬の沈黙が訪れる。
そしてそのギャル男みたいな男性は一瞬の逡巡のあと答える。
「わ、わかりまし」
「うるせーんだよ!俺達は天下を取って若い姉ちゃんを好き勝手にしたいんだ。黙ってやがれ!」
――いや、答えていたところに、野太い声が聞こえる。
その声が聞こえたところに目を向けると、筋肉がムキムキの人たちが俺の方を睨んで叫んでいた。
それを聞いてさっきのギャル男は方をガックリと落とした。
「じゃあ、そこの、大宮神?みたいなやつを殺せー!」
「「「「うぉぉぉぉぉ」」」」
一方、筋肉ムキムキ男たちの集団が大声を出して集団の指揮を執ると、剣を構えて、俺の方にやってくる。
そんなムキムキ男たちを見て俺は、どうやら、先程出てきた男性は形だけのリーダーなだけだと理解する。
するのだが、
「いや、そんな事考えてる場合じゃないってぇーー⁉」
筋肉ムキムキマッチョマンに追い回されはじめて命の危険を感じたので、それ以上の思考を打ち切らざるを得なかった。
―――タッタッタッ
俺は逃げる。
―――ドッドッドッ
相手が追ってくる。
―――タタタタタッ
必死になって逃げる。
―――ドドドドドッ
相手は鬼のような形相で追いかけてくる。
足音が大きくなってきたので、ぱっと後ろを振り返って見ると、先程100メートルほどあった距離は20メートルほどになっていた。
先程の筋肉ムキムキマッチョマンが、にやりと笑みを浮かべた。
―――あーー、詰んだよぉ!
というか、おかしくない?俺、一応神様だよ?なんで、人に殺されかけてんの⁉
まじで、死ぬって!このままじゃまじで死んじゃうって!
いや、現世では一回死んでるんだけど、そういうことじゃなくてね………
心のなかで思いっきり悪態をつく。
あのとき、転移先を間違えなかったら……と思わずにはいられなかった。
その時、
「大宮神!大きくジャンプして!」
ふと、オロチの声が聞こえる。
「え、あ、うん!わかったぁ!」
その声を受けて必死にジャンプしようとする。
が、
「うわぁ⁉」
必死に走ってきた影響で足がもつれてしまう。
走ってきたエネルギーそのまま、転んでしまった。
「いてててて…、ってヤバ⁉」
腰を強打した俺は腰を擦る。
しかし、目と鼻の先まで迫ってきているマッチョマンの姿を見て、いっきに冷や汗が流れてくる。
にやりと笑う、マッチョマン。
その顔が俺に近づいてくる。
その間5メートル。
俺は目をつぶって、この後剣で切られたときに感じるであろう痛みを待つ。
痛みを待つ。
痛みを待つ。
「………ん?」
いつまでも覚悟していた痛みを感じないから、恐る恐る目を開けると、目の前に先程いたマッチョマンを始めとする、あの集団はいなくなっていた。
「え…?」
狐につままれたような気持ちになりつつ、立ち上がってみると、深く、深く掘られた、穴が見える。
先程、オロチが念のために……と言って作っていた落とし穴である。
その底には人の屍が、たくさん転がっている。
「勝っちゃったよ…」
あまりにもあっけない幕切れに俺は呆然と呟いたのだった。
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