鬼ヶ島の鬼姫
@agito-10pest
第1話 はじまりはじまり
始まりはひとつの小さな村での出来事。
ある日、小さな命がこの世に生まれた。とても元気な女の子でその産声は村中に響き渡ったという。
しかし、その赤ん坊の額には角があった。その角は骨が肥大化したものなのか、はたまた皮膚が盛り上がってできたものなのかは定かではないが、その異形は村人からは畏怖の対象となってしまった。
その子供は忌み子と呼ばれるようになりその家族は白い目で見られるようになった。
生まれてから半年ばかりすぎた頃。ついに村人達は決断した。
赤ん坊を川に流すことになった。
母親は初めは抵抗していたが、生まれたばかりなのに人並外れた怪力を持ち、生まれて数ヶ月も経たないうちに魚や野菜を普通に食べ始め、成長とともに角も大きくなっていく姿を見て耐えられなくなったのだろう。
子供は白い布に包まれて竹の籠に容れられて川に流された。
どんぶらこどんぶらこと流されていくうちに川幅は大きくなっていき、次第に海が見えてきた。
大海原へ出る時に一人の男が竹の籠に目をつけた。
中背で細身の男だった。
竹の籠の中に赤ん坊の姿が見えた時は目を疑ったことだろう。
「………………?!」
男は赤ん坊を見て最初は無表情だったが次第に驚いた様な顔をして。
「まさか……赤ん坊が入っているのか……?」
川幅はとても大きく、水深は大の大人が沈むほどはあるだろう。
しかし男は迷わずに川へ飛び込んだ。
川は男が流されるのではないかと思うほどの激流で足もつかないはずだ。
だが男は泳いで川に流されそうになりながらも竹の籠にたどり着き、見事赤ん坊を救って見せた。
男は竹の籠を抱え上げ川岸へと引き返して行った。
川岸へ戻った男は柔らかい草の上に竹の籠を置き。
「こんなワシに助けられてもいいことは無いが、流されるよりかはマシだろう」
苦笑いをしながらそう呟いた。
少し時間がたち、男は焚き火で濡れた服を乾かしつつ、赤ん坊を抱いていた。
そして赤ん坊の額に角が生えていることを知り、この赤ん坊が捨てられたことを理解した。
「ワシはこれからこの海を渡って島で暮らさないといけない。ワシに着いてきたら野垂れ死にしてしまうかもしれない」
男は広い海を見ながら赤ん坊に語りかけた。
そして男は服を着て赤ん坊を白い布に包んで籠の中に容れようとした。
だが赤ん坊は男の手を離さなかった。
自分もついて行くと言わんばかりに腕を掴んで離さなかった。
「ついて行きたいのか?」
赤ん坊は頷いた
この歳では言葉はまだ分からないはずなのに。
「お前もその角じゃ生きづらいだろう。一緒に行こうか」
男は嬉しそうに赤ん坊を抱き上げ、もう一度海を見てそう言った。
そして男と赤ん坊は海を渡る。
たった2人だけで小さな小舟に乗りある島を目指す。
その島の名は
「行こう、鬼ヶ島へ」
鬼ヶ島の鬼姫 @agito-10pest
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