第10話

「春川さん!!」

「春川さん、その役目なら俺が!」

「俺のほうが、そのインキャよりこの辺詳しいからさ!!」


俄かに俺とハル...

俺は彼女の苗字を知らなかったのだが、

今しがた分かった。

どうも春川というらしい。

それにしても、みんなよく知ってるなぁ。

多分、美人ギャルだからだな。

春川ハル。なんとも覚えやすい名前だが、

その彼女と俺との距離感は一気に遠のいた。

男子軍団が割って入ったからだ。


「そんなインキャに頼まなくてもいいっしょ!?」

「ここは俺が!俺が案内してあげるよ」

「俺と一緒に帰ろっ」


俺より遥かに陽キャな面子が。

我先にと春川さんを口説きにかかっていた。


俺なんかが出る幕じゃないと悟り、

そそくさと教室から出ようとした。

だがしかし。

「山吹くん!待ってよっ」


彼女は男子軍団を押し除け。

俺の前に躍り出たから大変なことになった。

ちょっとした騒ぎになり、

俺は現場から逃げ出したかった。

大人気の女子とかかわると、後がこわい、

ってことを身をもって知った。

暴力までは振るわれなかったけど、

男子から滅茶苦茶睨まれた。



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