EP1 模範


 ほぅほぅ、今日もマッチングしまくってますな。


 今回はこいつらを見てみよう。




 女28歳

 ニックネームすずか

 職業歯科衛生士

 趣味スノボー


 男35歳

 ニックネームたぬきち

 職業システムエンジニア

 趣味ドライブ




男「初めまして、写真を見てチャットしました。これからご飯でもどうですか?」


女「初めまして。大丈夫です」


男「よろしくです」



 数分後待ち合わせ場所にて。



女「たぬきちさんですか?」


男「すずかちゃん?」


女「はい、着くの早かったですね」


男「俺歩くの早いからね」


女「そうなんですね」


男「写真通りの人だ、可愛い」


女「そんな事ないですよ、たぬきちさんも写真より実物の方が断然いいですよ」


男「ありがとう、じゃあどっかお店でも入ろうか」


 歩き始める二人。


女「はい。この辺よく来るんですか?」


男「職場がこの辺なんだ、今日もさっきまで仕事しててさ、一人で飯食うのもなんだか寂しくって」


女「一人ご飯、確かに寂しいですよね」


男「あっ、このお店いっつも並んでるんだけど今日空いてるみたいだな、ここでもいい?」


女「はい、もちろん」


 少し高そうな創作イタリアンの店に入る。


男「どうぞ」


女「男の人に椅子引いてもらったの初めてです」


男「そうなの?当たり前のことなのになぁ」


女「たぬきちさんって紳士なんですね」


男「普通だよ。てかたぬきちは外で呼ぶには少し恥ずかしいからたかしって呼んでくれる?」


女「分かりました、たかしさんは何食べるんですか?」


男「俺はシェフの気まぐれコースにしようかな」


女「じゃあ私も同じのでお願いします」


男「オッケー」


 スマートに注文する男。


女「たかしさんは彼女とかいるんですか?」


男「いたらアプリしてないよぉ」


女「それもそうですね、いつからいないんですか?」


男「ひと月ほど前かな」


女「結構最近までいたんですね、もし失礼じゃなかったらなんで別れたか聞いてもいいですか?」


男「もちろんいいよ。そうだな、別れたってよりは俺がフった形になるかな」


女「なんか原因があったんですか?」


男「その時の彼女がさ、束縛する子でさ、結構精神的にまいってたんだ、その上一緒に住みたいって言われたからもう限界ってなって終わりにしたかったんだ」


女「それほどたかしさんの事が好きだったんですね」


男「まぁ俺学生時代から彼女いなかった事なかったからさ、久しぶりのフリーを楽しもうとしてたんだよね」


女「すごいですね、でも確かにモテそうですもんね」


男「そんな事ないよ。でも社会人になってからも社内で噂とかされるようになってさ、本当、たまには放っておいてほしいよ」


女「そうなんですかぁ」


 料理が到着する。


男「きたきた、じゃあ食べよっか」


女「はい、いただきます」


男「ところで、すずかちゃんはいつから彼氏いないの?」


女「私はもう一年くらいいないですよ」


男「そうなの?こんなに可愛い子をよく周りは放っておくね」


女「なかなか出会いがないんですよ、それでこのアプリインストールしたんです」


男「いい人と会えた?」


女「実は、実際に会うのは今日が初めてなんです」


男「そうなの?今まで会わなかった理由とかあるの?」


女「ただ好みの人がいなかっただけなんですけどね」


男「じゃあ俺は好みのタイプって事かな?」


女「あっそうなりますね!」


男「よかった。実は俺も会うのは初めてなんだよ」


女「そうなんですか?」


男「理由はすずかちゃんと同じだよ、俺たち気が合いそうだね」


女「本当ですね」


 食事も終わりかけた頃。


男「この後、どうする?」


女「みんなどうしてるんですかね?」


男「普通は大体飲みに行ったりするかな」


女「じゃあ行きますか?」


男「うん、もっとすずかちゃんの事知りたいし」


女「じゃあ今度は私の行きつけの店でもいいですか?」


男「もちろんだよ!」



 お会計は男が済ました。


 二人はバーに入る。



女「ここ、よく友達と来るんですけど雰囲気がすごく良くておつまみもマスターの手作りで美味しいんですよ」


男「へぇ!すずかちゃんってお酒強いの?」


女「強くはないですけど、好きですね。たかしさんは?」


男「俺はいっつも付き合いとかで飲まされてるからさ、嫌でも強くなったよ」


女「お酒飲める人って私憧れるんですよね」


男「そんないいもんじゃないよ?」


女「でも私が酔った時に介抱してもらえるじゃないですか」


男「酔うほど飲まないの」


女「ハハッ怒られちゃいました」


男「ほどほどにしようね」


女「はい、たかしさん何飲みます?」


男「俺はジントニックにしようかな」


女「まずはビールにしましょうよ」


男「ごめんごめん、そうだね」


 ビールを頼む女。


女「乾杯」


男「乾杯」


女「ぷはー、美味しいですね」


男「いい飲みっぷりだね」


女「私、チョビチョビ飲む女ってあんまり好きじゃないんですよね」


男「そうなの?なんで?」


女「ぶりっ子って思いません?ビール飲む時点でお酒好きなんだろうからグイッと飲めばいいのにって思うんですよね」


男「そうゆうのよく分からないや」


女「たかしさんはぶりっ子好きなんですか?」


男「小学生の時は何も知らず好きになってたかもね。でも今はすずかちゃんみたいにサバサバしてる方が気持ちよくて好きだよ」


女「私サバサバなんかしてませんよ!でもよく男っぽいねって言われる事はありますけど」


男「そうゆうのがサバサバしてるって言うんだよ?」


女「褒め言葉なら嬉しいです!たかしさんは仕事何やってるんですか?」


男「プロフィールにも一応書いてるんだけどね、システムエンジニアだよ」


女「システム?なんか難しそうですね」


男「難しくはないけど、結構大変だよ。すずかちゃんは歯科衛生士だっけ?」


女「はい。そうですよ」


男「大変な仕事だろうね、俺も時々メンテナンスで行くけど忙しそうにしてるもんね」


女「まぁそれでも楽しくはやってますけどね」


男「てか気になったんだけど、そのネックレスってすごく高いよね、自分で買ったの?」


女「あ、これですか?これは両親から就職祝いで貰った物なんです」


男「そうなんだ、優しいご両親だね」


女「厳しいですけどね。あ、グラス空いてますね、何か頼みましょうか」


男「俺はこの辺でやめとくよ、すずかちゃんもお酒弱いならもうやめといた方がいいよ」


女「じゃあもう一杯だけ飲んでもいいですか?」


男「わかった、いいよ」


 女はカクテルを頼んだ。


男「すずかちゃん結局それ何杯目?」


女「何杯だっけ、忘れちゃいました〜」


男「大丈夫?なんかゆらゆらしてない?」


女「ぜ〜んぜんだいじょうぶですよ」


男「‥‥すずかちゃん?一人で帰れる?」


女「ぜ〜んぜんだいじょうぶですよ」


男「さっきと同じこと言ってるけど?」


女「本当にだいじょうぶですから」


男「ってもう、目半分瞑りかけてるじゃん」


女「なんだか眠くなっちゃって‥‥」


男「仕方ないから送ってあげるよ。家どの辺?」


女「三丁目のいちごビルです」


男「わかった、タクシー呼ぶね」


 男は電話でタクシーを呼んだ。


男「立てる?ほら、俺の腕につかまって」


女「たかしさんって優しいんですね」


男「はぁ。自分の事ぐらいちゃんとしなよ」


女「だって‥‥ぐすん‥‥」


男「えっなに?どうしたの?」


 女は泣き出してしまった。


女「だって‥私‥ずっと寂しかったんですもん。でも久しぶりに誰かと飲めて、嬉しくてつい‥‥ぐすん」


男「そうだったの。可哀想に‥‥」


 タクシーに乗り込む二人。


男「一丁目のぶどうビルまで」


女「えっ、送ってくれないんですか?」


男「俺んち寄ってかない?」


女「‥‥はい」


 男の肩に寄りかかる女。

 期待の眼差しで男を見つめる。



 ぶどうビル到着。


男「歩けそう?」


女「少しなら」


男「俺んち2階だからすぐだよ」


女「おじゃまします」


男「どうぞ、少し片付けるから適当に座ってて」


女「はい」



 一人暮らしの男の部屋といった印象。


男「水いる?」


女「ありがとうございます」


男「うーん、その服じゃ少し窮屈じゃない?俺の服貸そうか?」


女「そんな、大丈夫です」


男「気にしないで、はい」


女「あ、どうも。寝室借りてもいいですか?着替えるんで」


男「いいよ、こっちだから」


女「着替えました。変ですかね」


男「俺の服だから変かどうか聞かれても」


女「あ、そっか」


男「ハハッ。うそうそ、可愛いよ」


女「たかしさんって本当優しいですね」


男「そうかな?普通だよ」


女「もうここまで来ちゃったし、泊まってもいいですか?」


男「大胆発言だね、まぁ別にいいけど」


女「私ソファでいいんで」


男「せっかくだから一緒に寝ようよ」


女「今日会ったばかりだし、さすがにそれは」


男「俺、正直すずかちゃんが彼女だったらいいのにって思ってる」


女「え、奇遇ですね。私もです」


男「じゃあ決まりだね、おいで」


 女は男の布団に入る。


男「本当、すずかちゃんは可愛いね」


女「ありがとう」


 二人は一夜を共にする。






 うーん、模範のような二人でしたね。


 しかし、所々嘘をついていたり、自分をよく見せようと取り繕ったりしていましたね。

 

 それに、クセもなく面白みにはかけますが。


 結局その後男の方はまた検索かけていましたし。

 

 検索条件。

 25歳〜30歳。

 職業看護師、歯科衛生士、保育士。



 明日はもっと面白いカップルが見れるといいんですけど。






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