白髪ロシア人ハーフの後輩は学校で一番綺麗な先輩に告白がしたい
あるみす
第1話 4月
先輩の名前は神楽芽愛さん。私のひとつ上の高校三年生です。
艶のあるさらさらな手入れの行き届いた黒髪のロングヘアーに整った顔立ち。背も高く、私より断然発育がいい才色兼備な先輩。
先輩はあまり人と多く関わる方じゃない様で、深く親しくしている人はいらっしゃらないそうです。
だけどそれは先輩が近寄り難い位美人なのも関係しています。この学校の生徒で先輩の事を知らない人はいないですし、男の子ならず女の子からも告白を受けたことがあるようです。
それくらい魅力的で憧れの先輩なのです。
彼女の名前は保田瑠奈。ロシア人の母親を持ち、本人も白髪碧眼という日本ではまずお目にかかれない綺麗な容姿をしている。
背は低くて発育も良くないので小学生に間違えられる事も多いらしくて本人は膨れていたが、贔屓目無しにしても本当に可愛い。
くりくりとした大きな瞳やぷにっとした柔らかい肌はさながらお人形さんの様に整っている。そして彼女の物腰柔らかな性格は天使と言っても過言ではないと思う。
人付き合いが得意じゃない私の耳にも瑠奈の存在や噂は届いていたくらい学校で話題になっていた子だ。
正直、私の好みをど真ん中で捉えている少女、それが瑠奈なのだ。
そんな二人は芽愛にとって高校最後の春に偶然、学校の図書室で出会うのだった。
それまで校内ですれ違うことは普通にあったので図書室で鉢合わせた事も何らおかしいことでは無いのだが、二人してその出会いを奇跡と感じたのだった。
◇
私の学校の図書室は古くなった校舎の3階にあり、窓からは中庭にあるそれは立派な桜が見える。
私こと神楽芽愛は図書室の窓から季節によって姿を変える桜を見ながら本を読むのが好きだった。この学校は部活動が推奨されてるので、今のような放課後は大半の生徒は自分の好きなことに向き合っているので図書室は人気の少ない絶好の穴場だと思っている。
今日も例外に漏れず、窓際の定位置に座って持ってきたファンタジー小説を読もうと図書室に訪れた瞬間、私の目は奪われた。
白く可憐な少女。遠目で見ても分かる程にふわふわとした白く輝くロングヘアーを後ろで一つ結びにしている少女。体つきは幼く、大きくくりっとした宝石の様な碧眼を持つ彼女は私がいつも座っている席に座って読書に耽っている。
その様子は聖女が聖書を読んでいるような儚さを感じさせ、私の視界からはその少女以外の全てが消え失せた。
(ど、どうしよう。近くに座っても大丈夫かな…。急に相席したら迷惑がられる?)
私の思考には今読書の事など微塵も残っておらず、あの妖精のような少女に近づきたいという気持ちでいっぱいだった。
そうこうしてるうちに少女が座っているテーブルまで来てしまった。よくある4人がけのテーブルで、相席してもお互いが気にならない程度のパーソナルスペースは確保されている図書室のテーブル。
私が目の前に立ったのが分かったのか、少女はゆっくりと顔を上げ、その海のようにキラキラと輝く瞳でじっと見つめてくる。
やばい、どうしよう。こういう時どう声をかけたらいいの?ろくに人付き合いをしてなかった弊害がこんな時にっ!不審な目で見られちゃってるよ!そらそうだよね、急に何も喋らない女が目の前で立ってるんだもん!不審者以外何物でもないよ!
「あ、あの…」
「せんぱ…」
お互いの声が被さり、私達は再び口を閉ざさるを得なくなる。少女も気恥しさからか目に見えてオロオロしている。白い頬が薄い桜色に染まっていくのが余計に可愛さを助長している。
「ね、ねぇ。そこ座っても…いい…ですか?」
ん〜〜〜〜〜!!!き、緊張して変態さんっぽい喋り方になっちゃった。だ、大丈夫かな。
少女を伺うと驚いて目を丸くしてるけど、すぐにジェスチャーと共に口を開いた。
「はい、大丈夫ですよ」
声まで可憐!透き通るような綺麗な声が私の心を包み込んでくれる様な感覚を覚えた。
私はお言葉に甘えて少女の目の前に腰を下ろすと持ってきた本を何気なく開いてみる。ぶっちゃけると少女に目を取られすぎて内容が一切入ってこない。
今日帰るまでになんとか名前だけでも本人の口から聞きたいな…。
「あ、あの…。先輩ってあの神楽芽愛さん…ですよね?」
私が言葉に詰まっていると少女の方から喋りかけてくれた。でも「あの」って何よ…後輩ちゃんらしいけど私の名前そんなに広まってるの…?何もしてないじゃん私ぃ…。
「そ、そうだけど。私ってそんなに有名なの?」
私が尋ねると目を丸くして、それからくすくすと声を抑えて小さく笑ってみせる。
「有名ですよ。宮坂高校で神楽芽愛先輩の名前を知らない人はいないと思いますよ?」
「嘘でしょ…。私友達一人もいないのに」
「あ、すみませんっ!そ、それに友達居ないのは私もですから!」
私の心情を察してすぐにフォローしてくれる少女。なんていい子なんだろう。どう転んでも私には出来そうにないや。
今の会話からもわかるように私はこの学校で所謂高嶺の花の存在として扱われている。
私からすれば腫れ物と何ら変わらないんだけどね…。そんな事もあって不本意ながら私の名前はどうやら後輩の間でも有名らしい。…なら1人位友達が出来てもいいじゃん、とは思うけど私がもし逆の立場ならあまり関わりたくないし真当な状況なんだろうね。
「あ、えっと…あなたは何を読んでるの?」
「先輩が知ってるかは分かりませんが。…これです」
おずおずと言った感じで読んでいた本のブックカバーを外して見せてくれた。
それを見た私は最早運命だと思ったよね。だって、少女が見せてくれたのは所謂ライトノベルと言うジャンルの小説で、尚且つ読んでいたのが私が好きで読んでいる作品と全く同じだったのだ。
興奮してる心を何とか抑えながら私は持っていた小説を無言で少女の前に差し出した。
「先輩…!」
「同じ…だね」
嬉しかったのか、はじかれたように立ち上がった少女は言葉を詰まらせる。そんな嬉しそうな姿を見せられると私も妙に恥ずかしくなってくる。
「ラノベ好きなの?」
同じ小説読んでるなら大丈夫だよね。オタク趣味持ってても引かれないよね。
「お恥ずかしいですけど…。私昔から本を読むのが好きで、最近は絵も綺麗なライトノベルを沢山読んでます」
か、かわっ…。その伏せ目がちな表情で照れながら言われたら誰だって落ちちゃうでしょお。なんか顔熱くなってきちゃった。
「良かったぁ、私同じ趣味の人初めて見つけたよ」
「そうなんですか?寧ろ先輩はこういうの読まないと思ってましたよ」
「偏見だよもー、私だって人並みにラブコメ読んではドキドキしてるんだよ!」
「ラブコメが好きなんですか?」
「うん、ああいう出会いしてみたいなぁって。あ〜あ、私も可愛い幼女と出会えないかなぁ」
「男性側に感情移入してるんですね」
くすくすと口元を小さな右手で抑えながら可愛らしく笑ってみせる。
「可愛いは正義だよ。これだけは譲れない。」
「そうなんですかぁ」
「…何かおかしなこと言った?」
私が聞き直すと少女は若干煽るような表情で見上げてきた。その破壊力強すぎでしょ…やばい。
「いえいえ、ただ私ももっと可愛かったら先輩の事虜にできたのかなぁって思いましてー」
「十分可愛いし既に虜だよっ!」
煽られたことに思わずとんでもない事を言い返しちゃった事にハッとなる。
「そ、そそ…冗談で言ったのにびっくりするじゃないですか…でも、ありがとうございます…。」
「もーずるいよ、どんな表情しても可愛いじゃん」
ぼっと顔を真っ赤にした少女は、耐えきれなくなったのか荷物を纏めて立ち上がった。あ、やり過ぎちゃった?待って、まだ話してみたい事沢山あるのにっ!
「すみません、急用を思い出したので失礼します!」
「ちょ、ちょっと待って!」
真っ白な肌を綺麗な桜色に染め上げた少女が図書室を出ていこうとしたので、私は焦って少女の手首を掴んだ。
「な、名前はっ!」
私は少女の名前を彼女の口から聞いてなかった。噂では聞いたことはあったけど、彼女に直接教えて貰いたかった。
少女は立ち止まると鞄に仕舞わずに手に持っていた文庫本で口元を隠し、上目遣いで照れながら小さい声で教えてくれた。
「保田…瑠奈です。よろしく…お願いします」
そう告げると瑠奈ちゃんは走って図書室から出ていってしまった。また会いたいな、会えるよね。だって同じ趣味を持ってるんだから。
瑠奈ちゃんとまた会いたい一心で私はその日以降足蹴もなく図書室に通うのだった。
◇
どうしようどうしようどうしよう!話しちゃった話しちゃった!憧れの神楽先輩と話しちゃった!綺麗な人だったなぁ。びっくりするくらい麗しい容姿で、頭がぐるぐるして上手く話せなかった…。
先輩に可愛いなんて言われて思わず飛び出して来ちゃったけど…悪いことしたかな。次会った時謝らないと。
「明日も図書室行ったら会えるかな…」
私の呟きは誰にも聞かれることも無く霧散していった。
火照った体を冷ますように、私は帰り道を駆け足で帰るのでした。
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