第12話 夫は病気かも知れない?

「あぁ、あなた。あなた」と毎晩のように獣と化し。優艶に肢体を、腰をクネクネと動かしながら嬌声を漏らし。口では夫健太の名を呼び。彼女の脳内では、(神様、仏様、私達夫婦に早く子供を授けてください)と願う。願を込めながら。


 夫健太と毎晩のように交わり。乱れに舞う。踊る。彩に対して夫健太の方も。夫としての義務を毎晩のように果たしながら。


「ああ、彩~。彩、愛しているよ」と。


 彩の耳元で熱く、激しい吐息、息遣いと共に淡く、甘く囁いてくれながら荒々しく励んでくれる日々が続くのだが。


 やはり彩の許、お腹の中に神様、仏様の命にてコウノトリさんが、二人の可愛らしい赤ちゃんを運んで来てはくれないのだよ。


 だから彩と健太は毎日にように気落ち。落胆をする日々が続く。


 まあ、続いていくから。段々と二人の夫婦の営みの方も淡白なものへと変わり。交わる数の方もね。


「あなた、あの、今日も」と、彩がベッドの上で横たわる健太へと声をかけると。


「彩、今日は御免。仕事で疲れたから。明日でいかな?」と、夫から声が返るようになってくる。


 それも最初のうちは二日に一回は健太の方も励んでくれた。頑張ってはくれていたのだが。


 夫健太が彩の要求、要望に対して「彩、今日は仕事が疲れたよ」、「明日も朝が早いから」と。夫健太がするだけ無駄な事だと諦め始めだしてしまい。彼は彩の要望、要求を断る。拒否をし始めるのだよ。


 だから彩と夫健太との夫婦の営みの方が段々と三日に一回から最終的には五日に一回へと変わってしまい。


 更に子宝に恵まれない環境へと陥った彩は本当に悲しくて仕方がない状態──闇の中へと陥ってしまう。


 まあ、そんな精神、最悪な状態、精神、想いへと堕ちてしまった彩だったのだが。


 ある日、あの時、ふとお昼のアフタヌーンショーを見ている。視聴をしている最中に、ある病気の特集に目を奪われ釘付けになる。なってしまうのだよ。


 そう、彩が画面に釘付け、無我夢中、虜になって見続けた病気、やまいの特集と言うのが。以前にも簡易的に説明をした。【無精子症】と呼ばれる男性が睾丸での精子を作る機能が著しく低下する【非閉塞性無精子】と。睾丸で精子は作られるのだが、途中、通り道で何かが原因で閉塞している為に精子が放出されない【閉塞性無精子症】、二つの病の特集を彩は釘付け、食い入るように見続け。


(もしかして家のひとは【無精子症】なのかも知れない?)と思い始めた


 だから彩は先ずは、自分自身が病にかかっていないか、健全な身体なのかを産婦人科へといき検査──。


 これも以前説明をした通りで、彩は産婦人科の女医から『隅田さん貴女の身体は大変に健全なものだから大丈夫』だと太鼓判を押される。


 と、なれば?


 彩達夫婦に子が授からない原因と理由はどうしても夫健太がにかかっている可能性が大だと彩自身は思う。確信できる。


 それに、彩が通う産婦人科の女医も『隅田さん旦那様も一度病院へと来て検査をするようにと勧めてくださいね』と告げられた彩だからね。尚更夫が原因だと思うのだが。


 これも以前説明をした通りで、彩は夫健太へと【無精子症】の事を告げることができないまま月日だけ流れていく。


 そんな最中に夫婦二人でドラマを見る視聴をしていると【無精子症】もことを少し触れたシーンが流れる。流れていく最中に夫健太の口が開き。


「彩、もしかして僕は【無精子症】かも知れないね。わっ、はははっ」と高笑い。


 そう、夫健太は、自身の顔を引き攣らせながら高笑いを浮かべながら彩へと呟いたのだった。


 ◇◇◇



「あなた?」

「何だい彩?」

「あの、一度病院へといって検査を受けてくれませんか?」


 彩は自身の夫健太の顔を見ない。目を合わせないようにしながら下を向き、小声でボソボソと告げる。


 そう、今迄彼女が夫に対して言いたくても告げる。呟く事を躊躇い言いだせなかったへといって欲しいと嘆願をしたのだ。


 だから健太は、自身の顔色を変えて「彩、君は僕へと何の検査に行けといっているのかい?」と。


 彩の夫健太は、自身の妻が自分へと何の検査に行って欲しいと言っているのかはこの通りでね。


(もしかして彩は、夫の僕に対して、今テレビで言っていた【無精子症】の検査へと行って欲しいと言っているのではないだろうか?)と思いながら言葉を返したのだ。


 だから健太の顔は顔色が変わっているだけではなく、自身の顔を強張らせている。引き攣らせているのだよ。


 それでも彩の夫健太は、自分の妻が【無精子症】の検査へと行けと。行って欲しいと。


「まさか家の彩に限って僕に【無精子症】の疑いがあるから病院へと行って検査。その後治療をして欲しいとは言ってはこないよね。いくら僕達二人の間に子供ができないと言っても。数年ぐらいのものだから。このぐらいの年数の結婚生活で子供ができない人達何て世界中を探す。聞いて回ればごまんといる筈だから。家の彩に限って夫の僕が世間から恥をかくような事は聞いてはこないし。嘆願もしてこない筈だ」と夫健太は、自身の顔色を変えつつも『家の奥様に限って』と高を括るのだが。


 当の本人である彩はと言うと?




(ここまで)


 病院の方へと


 若い夫婦に対して中傷言葉を漏らすよりも。


 健太に対して病院への検査と相談をする事を勧める方が良いのだが。


 そんな事を若い夫婦に親戚一同はしない。


 だから彩は不満を募らせるだけなのだよ。


 それに彩達夫婦へのと言う奴はこれだけでは済まない。


 そう、若い二人の不仲、離婚説まで浮かび、漏れるから。


 彩は更に不満、ストレスを溜め、心の病に掛かり。


 自暴自棄じぼうじきに堕ちる。


 まあ、そんな次期だからNSNや知人達の間で良く囁かれる不倫、浮気の話も、彩の身にも現実に起こってしまう。



 ◇



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