第3話 再会。

ミチトがメロの説明を受けている間にナハトは95人まで勝ち抜いていた。


「次!お願いします!」と言うナハトの気迫はここまでビリビリと伝わってくる。

剣技は独学だったせいで変なクセが付いていたがカラーガで洗練されていた。

それは故ナイライやサルバンに嫁いだノルアを力強くした剣だった。


サンクタは剣を振るうナハトを見て「ふむ。やはりレイカーを手放したくはないのだが…メロ嬢?負けてもフォーム返しは無しにしないかな?」と提案をする。

メロは嬉しそうに「ありがとうございますサンクタ様。でもナハトの家族はフォームに住んでいますから、勝ち抜けた時の王都はまだ近くてもカラーガからは離れすぎてます」と申し訳無さそうに説明をする。


「そうか…残念だ。だがレイカーには彼女も居るから留意してくれないかと…」

「か…かかか…彼女!?ナハトってば訓練は?何やってるの?」

突然の彼女がいる話にメロは驚きの表情でナハトを見る。


「ふむ。決して潰れないレイカーの力強さは騎士団でも人気を集めているし女性団員からもモテている。そして訓練も恋愛もやり切っていたとシャーリーからは報告を受けた」

この説明に呆れ顔で「…やり切るって…流石パパの弟だね」とジト目のメロがミチトを見ながら言った。


これにはサンクタが驚き、メロに「何!?メロ嬢が記憶を失っても覚えていた唯一の友人ではないのかい!?」と聞く。


「えへへ、はい。友達でパパの弟です。内緒にしててごめんなさい」

「…確かに似ている。なんといえば良いのだろう。レイカーもメロ嬢も闘神様に似ているのだな」

これにはナイワが「ふふ。やっぱり。私はそうじゃないかと思っていましたよ」と言って笑う。


「ナイワ!?それなら言ってくれ」

「うふふ。言って何か変わるのはダメですよ。それにしても彼はレイカー、闘神様はスティエット、なにかご事情がおありなんですね」


ミチトが母は同じで父が違うと説明をしている間にナハトは99人に勝ちきって膝に手を置いて肩で息をしていた。


そんなナハトに「ナハト!勝ったね!凄いよ!」と言って手を振った女性がナハトの彼女だろう。

やりきった顔で手を振り返すナハトを見てミチトは「強くなったな」と感慨深げな顔をした。


ミチトはメロを見て「メロはこれを見せたかったの?」と聞く。メロは首を横に振って「ううん。パパは100人目。パパには勝てないけど胸をかしてあげて欲しいんだよ。ナハトの16歳のお祝い…。15歳のメロが欲しいのはパパがナハトにお祝いをあげる思い出だよ」と笑顔でハッキリと言った。


「…ったく、メロのお祝いだからやるよ。サンクタさん、暴れて良いんですか?」

「ええ、頼みます」

この言葉を聞いたメロは先に前に出て「ナハト!」と声をかける。


ひと目でメロとわかって驚くナハトが「メロ?なんでカラーガにメロが?」と聞く。メロが「ふふふ。フォーム様達に強いナハトがもっと強くなれるようにお願いしたのはメロだよ」と言って微笑んだ。


メロの登場にナハトの彼女が怖い目でメロを睨み、同僚達は「何あの可愛い子」「すげぇ可愛い、どこの令嬢だよ」「ナハトのなんだよ?」「ナハトにはナノカが居るだろうに…」とざわめく。


だがナハトは内心穏やかではない。

ここに来られたこと等が全てメロの差し金だとしたら、この勝利が仕組まれたものだとしたらと思い思わず「…メロが手を出してくれていた…じゃあこの99人抜きも?」と言ってしまうと呆れ笑顔のメロが「優遇なんて頼まない。勝てたのはナハトの実力だよ。勝てたナハトには王都第三騎士団への紹介状をメロやサンクタ様の名前で王都のリミール様やアンチ様、チャズ様達に出すよ」と言った。

更に王都第三騎士団の名前が出て混乱するナハトは「…メロ?」と聞き返す。


「だって1年の特別訓練でフォーム様が送り出してくれたでしょ?」

「だからこれで勝てたらフォーム様の所に部隊長として…」


「それは負けた時だよ。ナハトはパパの後を追って王都に行きたくないの?」

「…行きたいよ」


「うん。じゃあもう一つ。実はこれは100人抜きだよ。100人目を呼ぶからね。まあ100人目には勝てないけどナハトが望んだだけコテンパンにしてくれるよ」



ナハトが超展開についていけず、「え?」と聞き返す中、ミチトが訓練場に出て「大きくなったなナハト」と声をかける。


「お…お兄さん?」

「ああ、8年ぶりだな」


ナハトが言葉に困っている間、シャーリー達がミチトを見て「闘神!?」「ディヴァントの剣!?」「ミチト・スティエット!?」「レイカーが闘神の弟!?」とざわめき、その他の兵士達もミチトがマ・イードの闘神だとわかると大歓声が湧き上がる。


ミチトは歓声を無視して「ナハト、少しだけ見ていた。一年目にしては悪くない。メロの誕生日祝いでメロは俺がナハトの相手をする事を求めているから相手をする」と言う。


言葉の意味を理解して身震いをしたナハトが「…いいの?」と聞く。

ミチトは「ああ、疲れているなら疲労は飛ばしてやるから全力でかかってこい」と言って優しい笑顔を見せた。


ナハトはメロを見て「メロ、ありがとう。嬉しいよ」という。メロは「良かったよ。頑張ってね」と言った後でミチトに「パパ、殺さないでね」と声をかける。


このやり取りを聞いているギャラリーも穏やかではない。

口々に「闘神の剣技…見れるのか!?」「本当か?」「お前たち!治療中の奴らも今は我慢をしてレイカーの戦いを見逃すな!」と言って前のめりで訓練場を見る。

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