メロの誕生日。~俺、器用貧乏なんですよ。外伝~

さんまぐ

第1話 メロのお願い。

メロが15歳の誕生日にミチトにとあるお願いをした。

メロ自身、物欲もあまりなく大きくなって養女の立場を気にしてか昔以上にお願いをするタイプではなくなっていた。

その為、毎年ミチト達が無理やり聞き出してプレゼントを行ったりするので15歳の誕生日としてお願いがあると言ってきた事は稀で、ミチトは「なんだい?パパはメロの為に頑張るよ」と喜ぶ。


メロは少しモジモジとするように「パパについて来てもらいたいの」とだけ言うと、ミチトは顔を暗くして「え?…王都?」と言う。

結局のところ、成長限界を迎えて世界の根(ミチトは大地の根と呼ぶ)に自分を置く羽目になった際に今までを後悔して前向きになってやる気を出したのは一瞬の事で、ミチトは何年経っても王都が苦手で、言い換えれば自分のタイミングで行けない王都は忌避していた。


「ううん。違うよ。位置登録はメロが済ませておいてあるから来てくれるだけでいいの」

「うん…わかったよ。それがメロのして欲しい事なんだよね?」


「うん…ママやお母さん達のお許しは貰ったから一日頂戴ね」

メロの行動力はスティエット家の中でも群を抜いていて、ローサの護衛と言いながら率先して王都に行って人脈を築いたり、パーティーにもアクィと一緒に行ってスティエットの存在感を確たるものにしてきていた。


その行動力や手腕は下手をするとライブ以上の女帝になれるとローサもモバテ達もメロに一目を置いているが、当人は「そんな気はないですよぉ。私はライブお姉ちゃんやイブお姉ちゃんのお世話をするんです」とモバテ達の前ではメロ呼びではなく一人称を「私」にする徹底ぶりで話す。


お陰で下手をするとミチト以上の人脈があるのでどこに連れられて、何を願われるのか、ミチトはヒヤヒヤしていた。


ミチトはリナとの夜にメロの話をしながらどんな目に遭うか心配と話すと「あはは。大丈夫だよ。メロは立派な何処に出しても恥ずかしくない娘だよ?そんな根回しなんてしないよ」と言って笑い飛ばされた。


「リナは聞いたんですよね?」

「うん。メロらしい素敵なお願い。モノより思い出を願うメロらしいお願いだよ」

リナの穏やかな言い方と優しい笑顔を見ると心配はなくなっていくが疑問は残る。


「んー…。リナの言う事だから信じますけど、俺とメロだけなんですよね?」

「うん。きっと欲を出せばキリはないけどメロの願いはとにかくミチトだよ」


全員で行けると嬉しいがとりあえず自分とだけでも嬉しいと言う事がわからないミチトは「益々わかりません」と漏らす。

リナは「ふふ。良いじゃない」と笑うとミチトの腕に抱きついて「それにしてもミチトは何年経っても変わらず私を愛してくれるね」と言う。


「当然です!今の俺があるのもリナのお陰です!」

「ふふふ。ありがとうミチト。とりあえず視察事務所の仕事はイブやライブ、ヨシ様達やスレイブの子に任せて、メロの日を楽しんであげてね」


「子供達のことをよろしくお願いします」

「うん。タシアも9歳だから役に立つしね。ヤキモチベリルもラミィが面倒見てくれるよ」

この言葉を聞いて穏やかな気持ちでイチャイチャをしながら2人は眠りについた。



約束の朝、ミチトは朝一番から出かけるかと思ったが片目が遠視術で金色になったメロは優雅にクッキーを焼いて焼き加減で天気を予報して「うん。この焼き加減なら今日は晴れ!」と言いながら半分を収納術にしまって残りをタシア達に振る舞う。


鼻歌交じりにクッキーを渡すメロにタシアが「メロは今日何かあるの?機嫌がいいね」と聞く。メロはニコニコ笑顔で「そうかな?パパとお出かけだからね。タシアはお留守番をよろしくね」と言いながらクッキーを焼き上げた鉄板や調理器具を洗いはじめる。


ラミィがメロの横に立って「メロ姉様、タシアなんかより私に任せてください」と言うとメロは注意することもなく「うん。ベリルをよろしくね」と言った。



時間にして10時を過ぎた頃、メロが「パパ、お願いします」と言うのでミチトは「うん。じゃあメロについて行くよ」と立ち上がる。

リナは見送りで「何かあったらアクィを行かせるよ」と言い、アクィも「そうね。ミチトより私向きの話になったら言いなさい」と言ってメロを優しく抱きしめた。


「お母さん、ママ、ありがとう。イブお姉ちゃんとライブお姉ちゃんが視察事務所から帰ってきたらパパの事謝っておいてね」


メロはそう言うと転移術を使う。

移動先はミチトもかつて何回か来たことのある土地だった。


「カラーガ?」

「うん。今日はパパとカラーガに来たかったの」


目の前には自分のスレイブであるイシホの生家があり、ひと目でカラーガだと気付く。

ミチトにはメロとカラーガのイメージはなかったので「メロはカラーガとも繋がったの?」と聞いてしまう。少し照れたメロは「えへへ」と笑うと「うん。イシホお姉ちゃんやノルアお姉ちゃんとも仲良くしてもらってるし、アルマ君とマアルちゃんにも懐かれてるよ」と言った。


そこに証明するように次期当主のアルマと双子のマアルが「メロお姉ちゃん!」「待ってたよ!」と言って駆けて来る。

メロは優しく微笑んでしゃがむと「こんにちは。お邪魔します」と挨拶をする。


アルマとマアルはミチトの前に立つと姿勢を正して「闘神様、おはようございます」「ようこそカラーガへ」と挨拶をする。

その姿は次期当主とその双子として立派だった。


ミチトは少し困ったような呆れ顔で「…闘神って…。元気そうで何よりだよ」と返しながら2人に「メロはよく来るの?」と聞く。

「メロお姉ちゃんは年に3回くらいです」

「初めてお空から来た日はビックリしました!」

この返事にミチトは驚きの表情でメロを見る。


「え?天空島使ったの?アクィに位置登録させてもらわずに?」

「うん。丁度エワガン達にケーキを持って行ったからそのついでで天空島を移動させてもらったの」


「…マジか。じゃあサンクタさん達とも?」

「うん。お茶とかご招待いただいてるよ」


本当にミチトがトウテに引きこもって育児に邁進している時にメロはお散歩と言ってマ・イード各地を回っていた。

それにミチトはメロには手持ちの術を全て授けていたので収納術も転移術もなんでも使える。無いのは膨大な術量くらいなものでオーバーフローの制圧は場合によっては無傷とはいかない場合もあるが、基本的にはある種小さなミチトが国中を漫遊している感じだった。

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