第32話 美味いビールをぐびっと ラッカセイ
第三節
2023年、今年は記録的な猛暑であった。菜園の栽培もマニュアル通りにはいかない。なので、肌で感じる気温・気候で勝負であった。
ラッカセイはといえば9月中旬から10月下旬、下葉が黄色く枯れ始めたころが収穫時と言われている。しかし、10月も半ばというのに畝を見渡してみても、どれもこれも青々と繁っていて萎える様子が少しも窺えない。
う~む、どうしたものか? 初めての栽培なのでコツが掴めない。でもよ~く見ると、株元周りに穴の空いたラッカセイの殻が散らかっている。
――カラスの仕業か!?
いくら自然の取り分だからと言っても、賢いやつに先を越される訳にはいかない。一か八か、いっそ全部抜いてみることにした。
株をつかんでゴソッと引いてみると……見事、大成功!
鈴なりに実が連なっている。根をひっくり返してみると、まだ膨らみ切っていない小さな莢もたくさんあるが、それと同じくらい成熟したものも着いている。初トライ栽培ならば大成功と言えるのではないだろうか(自画自賛)。
品種としては中手豊(ナカテユタカ)・千葉半立(チバハンダチ)・おおまさり共々、満遍なく着荷していて収量の優劣は見受けられない。株をすべて抜き終わったら、本日の作業は早仕舞い。酒屋で633mlを大量に買い込み、さっそく家で調理実習だ。
まずは何と言っても採りたて鮮度抜群の茹で豆。たっぷりの湯に塩を大さじ一杯ほど投入し、茹でること40分。柔らかくなっていたらざるに引き上げだ。湯気が立ち上る。
そして、待ちに待った黄金の麦水。冷やしたジョッキにトクトクと注ぎ込む。
ブファー 快感!
若かりし頃の薬師丸ひろこ様さながらだ。熱々の希少茹で豆に麦水が何杯もすすむ。網目模様がはっきりしていて、硬い莢が実が詰まっていて格別だ。おおまさりの食味はサイズが通常品種の二倍だからといって、味に大雑把さは微塵も感じられない。と言うか、むしろ栗のようなホクホク感がベリーグーだ。
茹で豆にしてもまだまだ収量があり、全て食べ切れない。ピーナツ御飯を炊いてみる。これも栗ご飯とはちょっと違う風味とカリカリの食感でなかなかオツなものだ。
30株からは予想以上の出来高だ。明朝のパン用にとピーナツバターの作成だ。水・食用油・砂糖を少々、ミキサーで撹拌。無農薬・無添加ピーナツバターの完成だ。
ちなみに長期保存用に殻ごとカラカラに乾かすと、一般的に売られているピーナツだ。食する時にプライパンで煎ったり電子レンジでチンしたりと、ひと手間加えると美味くなるらしい。
旨いアテを鼻血が噴き出すくらい堪能した。麦水も勢いよく枯渇していく。明日はきっとリバースするに違いない。こうしてにわか農夫の短い夜が更けていった。
写真掲載中
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