どこかの世界の物語

収録作品10『黒歴史』『よろずの八記商店』『矢鳥秀悟』『アンチゲーム』『帰郷』『宇宙旅行』『異世界調書』『ナンバーズ』『銀杏の雨』『太陽を背負う』『探偵ミサキハルカの日常』『夏唄』『春唄』ほか

181

私がバイトでお世話になっている笠越運送は、男ばかり働く暑苦しい職場である。

その中でも、癒やしがひとつだけある。

男ばかりの中に紅一点。

私と同じ大学に通っている山野さんの存在だ。

彼女は、人がよく誰にも平等に接してくれるいい後輩だ。

　　　　　　　　　　　　　「黒歴史」

　　　　　　　　　　　　　　　佐田　健人

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　6月8日　一点赤太刀（イッテンアカタチ）

　魚言葉　紅一点

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182

小さい頃の俺──僕は、虚弱体質だった。

家の外に出ることがなく、ずっと子供部屋にこもっていた。

体質のせいでもあるが、僕は外に出るのが怖かった。

　　　　　　　　　「よろずの八記商店4」

　　　　　　　　　　　　　　　花形　竜星

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　6月9日 珍珠鱗（チンシュリンユイ）

　　　　魚言葉　虚弱体質

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183

そこの座椅子で寝ているのは、先生の愛猫の茶々だ。

先生は、無類の猫好きで野良猫を拾ってきては、里親が見つかるまでこの家で飼う。

　　　　　　　　　「よろずの八記商店2」

　　　　　　　　　　　　　　　花形　竜星

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　6月10日　伊寿墨（イスズミ）

　　　　　　　魚言葉　座椅子

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184

今回の新人賞に向けて、一緒に案を出していきましょう。

先輩は、すごい人なんですから自信を持ってください。

何事も、自信がないとできないものです。

　　　　　　　　　　　　「矢鳥秀悟」

　　　　　　　　　　　　　　瑠璃川　八代

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　6月11日　パール・グーラミィ

　　　　　　　魚言葉　新人賞

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185

古紙回収にまとめて置いたもの、どこに行ったか知っている？

いや〜別に、ちょっと気になっただけ。

　　　　　　　　　「よろずの八記商店12」

　　　　　　　　　　　　　　　花形　竜星

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　6月12日　雨鱒（アメマス）

　　　　　　　　魚言葉　古紙

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186

一発逆転の何かがあれば、この最悪な状況を打開できるはずだ。

早く、ここをどうにかしないと俺の正体がバレてしまう。

　　　　　　　　　　　　「アンチゲーム」

　　　　　　　　　　　　　　　百野　怜都

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　6月13日　糸引き鰯（イトヒキイワシ）

　　　魚言葉　一発逆転

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187

一口だけ、ちょうだい。

そんなに嫌そうな顔しないでよ。

私の分もあげるよ。

　　　　　　　　　　　　　「帰郷」

　　　　　　　　　　　　　　　李元　潤一

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

6月14日　輪抜風流魚（ワヌケフウリュウウオ）

魚言葉　一口だけ

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188

これ以上無理すると、臨界点に達してしまう。

それが、わからないほどあんたは馬鹿じゃないだろ。

　　　　　　　　　　　　「宇宙旅行」

　　　　　　　　　　　　　　江田　裕二郎

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　6月15日　薔薇目抜（バラメヌケ）

　　　　　魚言葉　臨界点

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189

さまざまな本を翻訳してきましたが、これでよかったのかと悩むときがあります。

直訳した内容ばかりではなく、自分達の世界のものに例えたり言葉を変えたりしました。

例えば、東海道はこちらの世界では夕回道と表すことができます。

　　　　　　　　「異世界調書　あとがき」

　　　　　　　　　　　　　　　　間宮　始

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　6月16日 東錦（アズマニシキ）

　　　　　　魚言葉　東海道

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190

南の島で、優雅にバカンスとはいかない現状を抗議したいものですわ。

社員旅行で来ているのに、仕事を入れてくるところ……ブラック企業としか言いようがない。

あ〜あこっちは、聖地巡礼できると思ってカメラ新調したばっかりなのに……。

　　　　　　　　　　　　「ナンバーズ12」

　　　　　　　　　　　　　　　樋川　五月

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　6月17日　南葉丹宝（ミナミハタンポ）

　　　魚言葉　南の島

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191

遠足前のうきうき気分、誰もがある経験だ。

ただ、そんなふうになれるのは子供だけだ。

もちろん、例外はある。

大人になると、いろんなものがまとわりついてうきうき気分ではいられない。

　　　　　　　　　　　　　「銀杏の雨」

　　　　　　　　　　　　　　　江東　久志

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

6月18日 横筋黒玄華（ヨコスジクロゲンゲ）

魚言葉　遠足前のうきうき気分

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192

国旗を掲げて国歌を歌うことで、自分達が何を背負って戦っているのかを理解するためだ。

　　　　　　　　　　　　「太陽を背負う」

　　　　　　　　　　　　　　　小崎　正明

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　　6月19日　鰰（ハタハタ）

　　　　　　　　　魚言葉　国旗国歌

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193

なぁ、さっきのあの女……。

劇場で歌っていた、合唱団にはいなかった。

普通に歩いているように見えるが、俺とすれ違うまで気づかなかった。

　　　　　　「探偵ミサキハルカの日常10」

　　　　　　　　　　　　　　百合崎　未来

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　　6月20日 ソード・テール

　　　　　　　　　魚言葉　合唱団

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194

団扇で仰いでも、涼しく感じられないんだけど……。

暑い日に限って、エアコンがお釈迦になることある？

あ〜あ、今日はとことんついてねぇ。

　　　　　　　　　　　　「夏唄」

　　　　　　　　　　　　　　小原田　秋水

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　6月21日 天狗剥（テングハギ）

　　　　　　魚言葉　団扇

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195

この変な照明器具は、どこに置くの？

ベットの隣で、いいのね。

わかった。

毎回思うことだけど、結美子って変わったセンスあるよね。

　　　　　　　　　　　　「春唄」

　　　　　　　　　　　　　　小原田　秋水

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　6月22日 提灯鮟鱇（チョウチンアンコウ）

　魚言葉　照明器具

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196

お前らは、いいよな！

何度でも、舞台に立てられるからよ！

俺は、藪医者になんて言われたと思う？

再起不能だってよ！

俺はもうあの場所には、戻れねぇんだ。

　　　　　　　　　　　「落ちた白鳥」

　　　　　　　　　　　　　レフ・ニーニャ

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　　　6月23日　鯰（ナマズ）

　　　　　　　　　　魚言葉　再起不能

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197

私の白目には、紫色のシミのようなものがある。

気になり調べてみると、結膜母斑と言うものだった。

白目にできるシミや黒子のようなもので、悪いものではなかった。

　　　　　　　　　　　　　　「桜の町」

　　　　　　　　　　　　　　　　清水　蛍

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　6月24日　白鱚（シロギス）

　　　　　　　　魚言葉　白目

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198

いとこの結婚披露宴に、私の姉が新婦の友人代表として選ばれた。

とても喜んで、引き受けていたと聞いている。

しかし、姉は来なかった。

風邪をこじらせて、寝込んでしまっている。

私は、今姉の代理としてマイクの前に立っている。

　　　　　　　　　　　　　「黒歴史」

　　　　　　　　　　　　　　　佐田　健人

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　6月25日 嫁鯒（ヨメゴチ）

　　　　　　　　魚言葉　結婚披露宴

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199

テレビで放送している芸能人の離婚会見、私は馬鹿馬鹿しくて見ていられない。

それを取り上げるマスメディアも含めて不快に感じられる。

これは、ただの夫婦間で起こった家庭の問題である。

それを他人が根掘り葉掘りと聞いて、他人が自分語りをする。

　　　　　　　　　　　　「情報の需要性」

　　　　　　　　　　　　　　　　相川　樹

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　6月26日 白尼鯛（シロアマダイ）

　　　　　魚言葉　離婚会見

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200

おい、いつまで他人の振りをしている。

いい加減、そこをどけ！

あんたには、用はねぇんだ。

あんたの隣の客に、俺は用があるんだ。

　　　　　　「探偵ミサキハルカの日常5」

　　　　　　　　　　　　　　百合崎　未来

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　6月27日 松川（マツカワ）

　　　　　　　　魚言葉　隣の客