第28話 第二部 相棒と再会
「フェリオ!」
通路を抜けると広いお城の廊下に出、少し歩くと豪華な広間に出た。
そこから離れた離宮という場所の建物にフェリオたちはいた。
一室に入ると兵士がたくさんいた。その中に相棒の姿を見付ける。
「オリビエ、よかった」
フェリオも近寄ってくる。
「ハスラムさんと合流できたんだ」
これまたよかったとフェリオは安堵した。
「ここに着いたら、えらいことになってたから」
どうにかミリーと麻袋を届けたものの、関係者からこれを鑑定できる賢者が攫われて大騒ぎになっていると聞かされた。
賢者という言葉に嫌な予感がしていれば、これから会う予定のハスラムが自分たちを探しに出かけていると知る。
「ハスラムから聞いた。なぁ」
三人は壁際に下がる。
「トザレは?」
三人の空間ができ、オリビエは一番の心配事を口にする。
「今城内の救護室にいるよ。どうにか助かったって状態」
切り傷など体中に受けていて、意識も虚ろらしい。
「重症ってところ」
見舞いにいったフェリオは答える。
「よかった。そうなると、あれは?」
「無事にミリーさんを通じて依頼主の手に渡った」
「よかった」
これにオリビエは心の底から安心した。
「けどだ、それを鑑定できるというか、オレたちが会いたいアーサーさんがいない」
「そうなる」
賢者を取り返さなければならないが、落とし主を探す旅をしなくて済んだことは嬉しかった。
「けどさ、マズいよな。グルラン帝国が絡んでいるんだろう?」
帝国所有の城の中にいる。鑑定の依頼主は王命を受けたものとなる。
今でこそ敵対はしていないが、いつまた戦争をしかけてくるか分からない危険な国。できれば関わりたくない。
「あ! オリビエさん!」
三人でひそひそやっていると、明るい声がしてきた。
「ミリーさん、無事でよかったね」
抱き付いてくるミリーを離す。
「ミリーでいいです」
「ああ、じゃあオレのことはオリビエで」
「うれしいです! けど私はオリビエさんと」
ポッと顔を赤ら、オリビエを二人から離れたところへ引っ張って行く。
「フェリオ、あれって、どうなっているんだ?」
助けを求めるようなオリビエの視線を受けたハスラムが心配げに訊いてきた。
隙あらば逃げ出そうとしていることが分かる。彼女にも迷惑をかけたのだろうかと。
「なんていうか、ミリーさんはオリビエのファンだそうです」
「ファン? 何の?」
ハスラムは、ずっとオリビエの腕を握り世間話をしている二人を怪訝そうに見ていた。
「オリビエに憧れているみたいなノリかなぁと」
フェリオもどう説明していいか分からなかった。
逃げている間も危険だというのにオリビエのことばかり訊いていた。
趣味は? 好みは? と。危機感の無い者を守るために剣を振るう自分は何なんだろうかとむなしいような気分になるぐらいに。
「おもしろいな」
危機感にかけている二人を笑い見るハスラムだった。
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