09:不穏なお茶会への誘い
コンコン。
ノックの音に返事を返せば、侍女のアデリナが入ってきた。
「お嬢様、お茶会のお誘いが来ております」
そう言って差し出された封書は一通のみ。
お茶会は一般的に女性だけの催しで、仲が良い年の近い女子が集まって行われる。
そしてお茶会は、未婚と既婚で分かれて開催されることが多い。なぜならその二者では会話の内容からして全く違うからだ。
方や夜会で出会った素敵な令息のお話や婚約の噂話で、方や旦那や子供の話に姑の愚痴だったりと言うことだ。
近しい年代の子が結婚したてであれば未婚の方にも混ざる事があるだろうが、数年も立てば興味のある話題が変わり次第に参加しなくなっていく。
適齢期を越えてもなお未婚なわたしは、既婚側に入る事も出来ず、かといって未婚の年の近い女子も居らずと、久しくお茶会には参加していなかった。
こんな状況でお茶会のお誘いだ。
まさか先日のわたしの噂を聞いて、
正直なところ「いまさらなに?」としか言いようが無い。
少々呆れ気味に封書を裏返し封がされている蝋印を見れば、最近見た覚えの有る印だった。
バルナバス伯爵……、十三歳の恋敵、ブリギッテ嬢だ。
なるほど。
わたしは概ねの事情を理解した。
この前、街中で出会った年若い令嬢を思い出す。たとえ年齢が十三歳とは言えど彼女は間違いなく恋する女だった。
ならばきっとあの時に気づいたに違いない。
わたしが、自分の恋敵だという事に。
敵認定をしたわたしを態々誘うのだ、このお茶会は確実に
そんなわたしの機微に気づいたのだろう、アデリナが心配そうに声を掛けてきた。
「お嬢様、無理にご参加なさる必要はありませんわ」
確かにそうなのだが……
これって逃げた事にならないかしら?
二十三歳のわたしが、たかが十三歳の子供から逃げる? まぁそれはどうでもいい。
しかしこの逃亡はそのままディートリヒの争奪戦敗退の意味にならないか?
それは困る。
だったら、
「出席すると、返事をお願い」
畏まりましたと、アデリナが退出していった。
相手の屋敷でお茶会かぁ、周りはきっと敵ばかりね……
たかが十三歳と絶対に侮らない、だって相手はわたしと同じ女なのだ。
少しばかり胃が痛くなった気がして、わたしはベッドに潜り込んだ。
※
先ほどわたくしは執事から出席の手紙を受け取っていた。
まさかの出席の返事である。
「あの年増! いい度胸ねっ、絶対にけちょんけちょんにしてあげるわ!」
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