第38話過去編 誰かの記憶2
シルキーsaido
「あぁ、族長の家系に伝わる伝統の服に間違いない。前に儀式の時に見たことがある」
そう言って彼女は抱き締めているもうひとりの私の服についた汚れを手でぱっぱと払うと
もう片方の腕で抱きしめていた少女を両手で抱き上げる。
その服は私が着ている服と同じなので私の先祖だろうか。
「そういえば、族長の家は残っているのよね?」
そう紫の髪の女性が言うとスキンヘッドの男が答える。
「うん?あぁ、残っている。だが入れるのか?」
そういうのには訳があってその家には結界が貼ってあるので一部の人しか入れないと予想されているからだ。それも普通の人には見えないように細工してあることから強固な結界であ。
「この子ならいけるはずよ。」
そう言ってもうひとりの私を撫でるサリーと呼ばれていた女性。
横には翅の生えた少女らしき人
「そうか....」
「ねぇ、早くしましょう。また奴らが来るかもしれないんだから」
奴ら?この村を焼いた奴だろうか...もしくは別の誰かの可能性もある。
「そうだな...そうしよう。」
「そうすると、外を誰かが見張っていたほうがいいんじゃないか?」
そう仲間の一人が言うと他の仲間も同調し始めた。
「じゃあ、俺が見張っておくよ」
仲間の一人が言う。
「そうね...じゃあ私たちは族長の家に行って開けられるか試してみるわ」
そう言うのはサリーと名乗っていた紫の髪の女性とおどおどしている獣人族の少女。
「じゃあ私は仮の家を作ってくるよ。この通り廃材は沢山あるし1日も経たずに出来るはずだよ」そう金槌らしきものを持ちながら言ったのは鍛冶屋をやっているのか剣や斧を叩いて、使えるかをチェックしている。その横には大きな鋸らしき物もあることからどうやら木を斬り倒したりして木材を手に入れるみたいだ。
もっとも廃材なら村中にあるが、その木材はところどころ燃えたりしたのか
使えるか怪しいのがほとんどだが。新しく木材を調達するので些細な問題だろう。
「わかった。エミリー行きましょ?」
たぶん族長の娘だと思われる少女を連れて歩き出す
「はっはい!」
遅れてエミリーと呼ばれたおっとりした女性が後に続く
「ここね」
「.....」
「あれ?開かない?」
と言った瞬間ギイと音を立てて二つに分かれて開く扉
「本当に開いちゃった....」
まさか本当に開くなんて思っていなかったのか、口をあんぐりと開けるサリー
「.....ん」
サリーの袖を持ってくいくいと引っ張り
「行かないの?」
と言いながら小首をかしげる少女(見た目的にはどっちかっていうと幼女)
「えぇ..いきましょうか」
そう言ってサリーとエミリーは先に入っていった少女を追って家の中に入っていった。家の中は族長の家と聞いていたので豪華絢爛な装飾や設備があると思っていた、エミリーなのだが、いざ入ってみると実際は木と石の家で、金や宝石を使った装飾がひとつもなく。村人の家と言われても納得できる内装だったので驚いたようだがサリーは前に入ったことがあるのかさほど驚いていない様子。
「やっぱり族長の家に不似合いな質素な家ね」
「確かにそうですね。あれ?サリーさんはこの家に入ったことがあるんですか」
入った事がないのか
「一度だけ、成人の儀式で入ったことがあるわ。それに、あなたもここに入ったことがあるんじゃないの?」
「そうなんですね。私は混血だからやらなかったのかな。」
納得したのか手をポンと叩く
「成人の儀式は純血種なら必ずやるけど、混血なら仕方ないわね。」
何か察したような顔をして納得するサリー
「んで、どこの種族との混血なの?」
混血で有名なのはエルフと人間の混血であるハーフエルフであるが
大体の混血は両方の迫害される事が多いのだそう。
「えっと、私は蚕妖精と光の妖精の混血です。」
「あぁ、それで、金髪なんだ。」
サリーがこう言ったのには訳があって
種族によって髪の色は異なる事が多い。蚕妖精だったら白い髪に黒い目、光の妖精なら金髪に緑の目、エルフも金髪が多い。そして人間はさまざまな色の髪や目を持つが、その髪色は生まれ持った素質や血筋に影響する。と言うのも
例えば、赤い髪なら火の魔法の適性が高い。青や水色は水魔法の適性が高いなど
このように髪色でその人の魔法適性がわかるとうわけだ。
「サリーさんは蚕妖精なのになんで紫色の髪なんですか?」
通常蚕妖精は白い髪なので何故紫色の髪なのが疑問に思ったのか
「あー小さい頃に使った魔法で髪が染っちゃったのよ」
簡単に言えば魔力が不安定な人によくある魔力変化ってやつね?と言いながら
壁にある大きな棚を漁るが出てくるのはどこの家にもある物ばかり
ひとしきり探し終わったのか近くで探していたエミリーの手元を覗き声をかける
「そっちは何かあった?」
「何もないですぅ」
何も見つけられない無力感で涙目になっているエミリー
「本当にこの家にあるの?」
「ねぇ、この家のどこに資料があるの?」
探しているのは族長の蚕妖精に受け継がれる魔法を記した書物で
聞いた話によれば禁術である死者蘇生も可能になる魔法を記しているとの噂があるが....
「.......こっち..」
そういって少女はさっきまでサリーが調べていた棚の方に向かって歩き出す
「え?そこはもう調べたんだけど....」
「この中に起動するためのスイッチがある」
そう言って壁にある変色した部分を触るとその部分の板が外れて中からきらりと光る宝石みたいな石が露出する。その石は魔力を帯びている事からこの石は....
「魔石?」
現れた石は魔石で魔力を流す事で隙間から見える何かの仕組みが作動するように仕掛けられている。
「私もやってみて良いですか?」
そう言ってエミリーさんが手を上げると蚕妖精の少女は
「ん....」
と言って頷き横に退いてスペースを作る
退いたのを確認してエミリーが魔石に触れ、魔力を流す
「.....はっ!」
起動するには十分なくらいの魔力を魔石に注ぐしかし魔石はなんの反応もせず。起動しない
「.....やっぱり起動しないですよね。」
「起動するはずないじゃない。族長の一族じゃないんだから」
「えへへ....」
「......もうやっていい?」
ジト目で目の前の二人を見つめる蚕妖精の少女
「あっ....ごめんねじゃあ、おねがい」
「ん......起動コードSー11」
その言葉と同時に魔力を流す。すると横に掛けてあった額縁からかちゃりと言う音がして取っ手の部分が出現する。
「…こんな仕掛けだったのか....」
「来ないの?」
階段を少し降りたところで待っている蚕妖精の少女
「え?あぁ、行くよごめんね。またせちゃって」
「ん...いい」
と言った瞬間にブツッと電源が切れるような音を立てて目の前が真っ暗になり
次に瞼を開けた時にはいつもの部屋で横になっていた。寝ているとも言う
「夢.....」
ブルっときて催したくなったのでトイレに行く
「ん....トイレ」
トイレは和式っぽいやつでいわゆるボットントイレってやつね
「ふう....」
見せられないよ!
まだ起きていたのかなぁ...一緒に寝たい....
前世で子供の頃はお婆ちゃんと一緒に寝ていたのが思い出によく残っているからなぁ....
「........」
「シルキーちゃん?どうしたの?涙を流したりして...なにか怖い夢でも見たいのかい?」そう心配そうな顔をして此方に駆け寄ってくるアルカお婆ちゃん
顔を上げると
また夢で見た、自分には見覚えのない記憶がフラッシュバックする
「.....怖い夢を見たんです...」
「そうかい...じゃあ一緒に寝ようかね」
そう言ってアルカお婆ちゃんは寝ていた場所から横にずれて私が寝れるスペースを作ってくれた。
「....はい」
私は何も言わずに一緒のベットに入る。
するとアルカお婆ちゃんは私を横から抱きしめてくれた。
つづく
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