自作の小説の裏側

上野蒼良@11/2電子書籍発売!

勇者は二度、死ぬ〜転移したところでもう遅い〜編

 ※注意! 4700文字あるから気をつけてね!




 これは、今さっき思い立って書いたものなんだ。もし興味を持ってくれたのなら是非とも見て欲しい。


 さて、今日は2、3ヶ月前に出した小説『勇者は二度、死ぬ~転移したところでもう遅い~』のちょっとした裏話をしていこうと思うよ。主な内容は、この3つね。




・この作品には、プロットがないって話。


・しかし、この作品には元にした作品が存在するって話。


・コイツができるちょっとしたきっかけの話。










①この作品には、プロットが存在しないって話


 知っての通り、僕はまだまだ無名の底辺作家なわけで、だから自分の作品を色んな所に売り出してなんとか日々のPVを稼いでいるわけだけど、たまにコメントをくれるキリストのような救世主が存在するんだ。彼らには本当に感謝でしかないんだけど……その彼らがたまに言うんだ。

「この作品は、奇想天外! 作者の考えたプロットがまさに予想外だ!」


 ごめん。実はプロットなんて存在しないんだ。いつもおらぁ、バイト先でメモを取りつつこっそりプロット書いたり、家でWordを立ち上げて書いたりしているわけで、作ったプロットは全て自分の家の何処かに置いておくんだ。

 でも、申し訳ないが……コイツにはプロットがない。否、作らなかったんだ。


 でも、安心してくれ。それにも色々な理由が隠されてるんだ。


 まず、ここで上げていきたい理由の一つ目は、当時の俺がまだ、物語を1つとして完結させた事がなかったからなんだ。


 コイツを書き出した当時、俺は今よりどん底にいた。プロ作家を目指すと言っても長い文章が書けないし、そもそも本をろくに読まなかった俺に所謂普通の小説を書くなんていうのは、無理だった。それに、実はこれの前に書いていた2作。『茶闘部の男ども』と『Soul Of Ignis ~荒野の剣豪~』が、両作ともいまいちな評価だった。結局、この二作はいまだに止まったままで完結させていなかったし、当時の自分の実力じゃ、しっかりしたプロットの上で物語を完結させるなんて事は不可能だったんだ。

 そんな時に、出てきたのがカクヨムのコンテスト。そう、皆おなじみ『カクヨムコン7』だ。その年、俺は来年から大学3年でそろそろ就職についても考えていかなきゃならない時期になっていくし、そもそもこのままじゃ周りがどんどん書籍化だの人気作家になっただの報告を聞いているだけで俺は、一生物語を完結させられない底辺作家のままなんじゃないかと思っていた。

 そこで俺に声をかけてくれたのがTwitterで知り合ったとある仲の良い作家さんだ。彼は、僕の『荒野の剣豪』を見て、物凄い褒めてくれたのだ。

 こうして、俺は決意する。


「コンテストに出す用の作品を作ろう。今度は、一度しっかりした土台を作らず、その場の思い付きでのびのび書いて、それで世間に自分を見せつけるんだ!」とね。



 ちょっと変な考え方かもしれないが、そこから俺の新作プロジェクトは始まるのだった。


 だから、俺にとってこの作品を書き上げるという事は自分を超える第一歩だった。それを今年の1月付近で実現させたのがこの作品だった。




②しかし、この作品には元にした作品が存在するって話


 そこから、俺の新作づくりが始まるわけだけど……正直、一番最初は本当に何をして良いのか分からなかった。どんな作品を書けば評価されるのかとか、自分は何が書けるのかとか……まだ分からない事だらけだった。

 そこで、俺は思いついた。


「だったら、他の人が過去に残した作品を元に自分で一から作っちゃえばいいじゃないか!」


 最初に言っておくが、これは盗作しよう! と言う意味じゃない。この辺のライン引きは難しいが、俺はただ、過去の名作を元に自分で一から世界観や登場人物を決めていったのだ。だから、そこは強気に主張する。これは、盗作じゃない。



 まぁ、良いや。話を戻すと……俺は、そこから様々なアニメや漫画に触れていき、とにかく知識を得ようともがいた。――しかし、残念ながらアニメや漫画、ライトノベルは、確かに一視聴者としては面白いんだが、俺の書きたい思うようなものはなかったんだ。


「ダメだ。何度ゲオに行っても良いアイディアが浮かんでこない……」


 そうやって俺が悩んでいた時に、ふと頭の中に高校時代のとある友人の言葉がよぎった。

 彼は、俺が小説を書き続けるきっかけをくれた人で今でも本当に感謝している恩人でもある。そんな彼が、俺のプロットや文章を見ていつも口うるさく言っていたのだ。



「お前の書く内容は、ありきたりすぎる。もっと、違う視点を持つべきだ」ってね。



 僕は、その言葉を思い出して、では今まであんまり触れてこなかったものを見て行こうと思った。




 それが、ハリウッド映画だった。それも、1960年代後半から70年代(たまに80年代や90年代、00年代も見ていた)の映画だった。

 世間では、これらの60後半から70年代のハリウッド映画をまとめて「アメリカンニューシネマ」と言うらしい。


 俺は、この辺りの映画に目を付けた。……いや、というより映画をいろいろと見ていくうちにハマってしまったのだ(笑)



 そうして、ニューシネマと呼ばれる映画を中心に俺は、一から作品作りと言うものが何か学びなおした。



 そして、見て来た映画の中で特に「これは、今の時代でも通用する凄さだぞ!」というものを拾って、俺はそれらを元に現在の『勇者は二度、死ぬ』を書きあげたのだ。


 具体的には、どんな作品を元にしたのか。主なものを3つ下に書いておく。



・スタンリーキューブリック監督作 1968年上映『2001年宇宙の旅』


・フランクリン・J・シャフナー監督作 1968年上映『猿の惑星』


・ジョン・シュレシンジャー監督作 1969年上映『真夜中のカーボーイ』



 主なものは、以上だ。これからそれぞれざっくりとどんな映画かを説明しようと思う。

 ※尚、読み飛ばしても平気。その場合は、下にある「以上が3作の解説だ。」から読んでくれ。


『2001年宇宙の旅』(以下、2001年)は、SF映画の金字塔と呼ばれる傑作で、ヒトザルの時代に宇宙人の作り上げたモノリスが人に武器の使い方を教える所から始まり、それと同じのがだいたい現代に、見つかる。宇宙人の存在を認知したお偉いさん方は、極秘に宇宙船ディスカバリー号を調査に行かせる。そして、ディスカバリー号内でAIとの戦いに勝ち抜いたフロイド博士が、木星の付近に到着するとそこで宇宙人によるワープシステムで、謎の空間へ連れて行かれ、フロイドは人類の新たな進化形態へと進化して、地球へ戻って行く……。


 続いて『猿の惑星』(以下、猿)は、ご存じの方も多いのではないだろうか? 宇宙飛行士が地球に戻って来ようとするけど、猿が人を支配する謎の惑星に不時着しちゃって……主人公のテイラーは、猿側の協力者であるコーネリアス夫妻のおかげもあってなんとか猿達の脅威から逃れる。そして、彼がコーネリアス夫妻の上司であるザイアス博士の言いつけを破って猿世界のタブー「禁断地帯」へ足を踏み入れると、そこにあったものは……。


「……おい! 嘘だろう? ここは、地球だったんだ……。俺達は、とうとうやっちまった……。バカヤロォォォォォォ!!」


 こんな感じのセリフで物語は終了する。



最後に『真夜中のカーボーイ』(以下、カーボーイ)は、知らない人も多いだろう。これは、ニューヨークで金持ちの女と性的関係になって金を稼ぐ(今で言うママ活かな?)事に憧れを抱いていたカウボーイハットの男ジョーが、実際にニューヨークを訪れると町は、全く煌びやかなものではなく、人々は欲にまみれていて……そして、寒い。金持ちの女を捕まえようにもうまくいかなかったジョーは、ある時寄ったバーでラッツォと呼ばれる人と出会い、彼にお金が貰える良い方法と言われて10ドルを手渡して斡旋人の元まで行くが、彼は所謂男色を専門にしているものでジョーは、だまし取った金を返せとラッツォに何度も問い詰める。

 しかし、2人の中は最初こそ最悪だったが、徐々に関わり合ううちに打ち解けあう。ラストは、実は重い病気を患っていたラッツォが温かいフロリダに行きたいと言い、そこまで連れて行こうするが……。






 以上が、3作のざっくりとした解説だ。いずれも今にはないものを持った良い映画なので時間がある時にでも見て欲しい。また、上記の3作以外にも『時計仕掛けのオレンジ』とか『イージーライダー』などその他色々な作品の影響が混ざり合って現在に至っているのだ。


 ちなみに、上の説明を読んでくれれば分かると思うが『勇者は二度、死ぬ』のダスティンは、カーボーイのラッツォからアイディアを得た。(ちなみに名前の由来もラッツォ役の演者、ダスティン・ホフマンから来ている)

 他にも『勇者は二度、死ぬ』の本編でアランが「この世界は、狂ってやがる!」と言うシーンも猿が元ネタだ。


 そして、もう一つ。これは、作者個人の『勇者は二度、死ぬ』に対するちょっとした見どころポイントなのだが……2001年のラストに出てくる。モノリスの中の当時の技術とは到底思えないような凄まじい光の映像。あれとほぼ同じようなものを文字で再現しようとした部分が第41話のビックバンのシーンで、パソコンで適当にタイピングしたような文字が羅列されているのだが……あれは、よく見ると実はちゃんと並べられている文字には規則性があって、そしてビックバンによって何もなかった世界に膨大な量の情報が流れ込んだというのを表現しているのだ。

 まぁ、とはいえ……これが何かというのを尋ねてくる人は誰もいなかったんだけどね(笑)


詳しくは、こちら。『勇者は二度、死ぬ~転移したところでもう遅い~』第41話↓

https://kakuyomu.jp/works/16816927859335631217/episodes/16816927860265158258





③コイツができるちょっとしたきっかけの話


 こいつは、①の内容と被る部分もあるが、①と②を経てもまだこの作品は異世界ものとなる予定ではなかった。どちらかというとSFもので初期設定は、宇宙から帰って来た宇宙飛行士が地球に戻るとそこには男は存在せず、女だけの世界が広がっていて……主人公はそんな世界で苦しみながらも生きていく。というものだった。


 これによって、今作は現代よくネットの世界で見かける「男性、いらなくない?」みたいな意見に対する風刺になる予定だったが、これが書く直前で変更となる。


 実は前日に、とある友人と焼き肉を食いに行って、そこで最近のアニメの話になった。彼は言うのだ。


「最近のアニメは、なんだかよくある異世界ものばかりでつまらない」


 俺自身、今のご時世でアニメを見るのなら俺のような書き手でなければ自分の好きなジャンルに絞って見てしまえば何も気になる事でもないし、人間社会の流行り廃りなんてそんなもんだと思っているから気にしてなかったが、彼にそう言われて私の中の何かが立ち上がったのだ。


「だったら、俺が全然違う形の異世界ものを作ってやるよ」


 そうして、俺は異世界ものと言うのがどんなテンプレートを持っているのか、徹底的に調べ上げ、更に元々自分が感じていた偏見とを重ね合わせて、そしてついに『勇者は二度、死ぬ』のそれまでの異世界ものと呼ばれる作品群に対するアンチテーゼとなるものが作られていったのだ。


 そして以降、俺の作品はアンチテーゼの要素を孕んだものとか社会問題を風刺したものとかが多くなった。


 嬉しい事にそんな俺の作品を最近は楽しみにしてくれる人が増えてくれた。ありがたい事だ。



 少し長くなってしまったが、読者の皆さんには本当に感謝している。ありがとう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る