第11話 村長の話を聞く
「……はぁ……はぁ……はぁ」
「や、やっと着きましたね」
俺達はエマという村まで歩いていった。失敗した。お金を使い切ったのは失敗だったのだ。村まで歩いていくのは相当疲れた。
お金があれば馬車を使い、体力を温存する事ができた。それに時間の節約にだってなった事だろう。
だが、後悔したってもう遅い。次から気を付けるより他にない。やはり財力はないよりあった方が良いのは確かだ。
とはいえ不必要なものは買ってなかったので仕方ない事なのかもしれないが……。
「ん? あなた達は……冒険者の方々ですか?」
村に着くと、農作業をしていた中年の男が声をかけてきた。
「は、はい。そうです。ルナールの冒険者ギルドからの依頼を受けてこの村まで来ました」
「……と、言うとやはりオークの件で?」
「は、はい。そうです。俺達はオークを退治しに来たんです」
やはり村を見回しただけで、明らかに若い男性や女性が少なかった。やはりオークの影響だろう。若い女性は連れ去られた事も多いだろうが、身の危険を案じて、外に出ていないのかもしれない。若い男性があまりいない理由は、オークにより命を落としているからだと思われた。
これではこの村の活気が失われてしまうのは必然の事と言えた。
「そうだったのですか。でしたら村長の家に行ってください。村の奥にある大きな家です」
俺はそう案内された。こうして俺達は村長の家へと向かうのであった。
◆
「……おお。あなた達は」
村長と思しき老人が庭の花に水をやっていた。他の家に比べて大きい。家庭菜園をやるくらいのスペースがあるようだった。恐らくはここが村長の家であろう。
「もしや冒険者の方々ですか?」
「は、はい。ルナールの冒険者ギルドから依頼を受けて来ました」
「でしたら家に上がってください。大したものはありませんが、お茶位なら出せます」
「は、はい。ではお邪魔します」
俺達は村長の家で話を聞く事になった。
◆
「お茶になります」
コト、コト。若い女性にコップに入ったお茶を出される。お茶と、それから多少のお茶菓子も付いていた。
若く美しい女性。この村に来て、一人たりとも会った事はなかった。なんだか物珍しいものを見たかのような気分になってしまう。
「孫娘のクレアです……。何分、このご時世でしょう。オークによる被害に悩まされているので、極力昼間でも外を出あるかないように言いつけているのです」
村長はそう言っていた。
「やはりオークの被害は深刻なのですか?」
俺は訊いた。オークは雌を持たない種族として有名である。その為、他種族の雌を捕まえて来て、交配する事のが基本となる。その他種族のうち、弱い個体が多い人間の雌がさらわれる事が多いのだ。
オークにさらわれた女性の末路は筆舌し難いものがある。
「それはもう……。最初は若い村の娘が何人かいなくなったのです。当初は我々も盗賊による人さらいかとも思いました。それで若い男達を集めて、捜索隊を作ったのですがその男達もいなくなってしまったのです。命からがら一人の男だけが逃げ帰ってきて、我々に報告したのです」
村長は語る。
「『オークに襲われた』と……。そして私達は被害の原因がオークにある事を知ったわけです。そしてその男はオークの根城が『北の洞窟』にある事も教えてくれました。そこに若い娘達が連れ込まれていくのを見たと……」
『北の洞窟』。どうやらそこをオーク達が根城にしているようだった。必然的に目的地が決まった。
「もうすぐ、夜にもなります。どうか今日はこの家で泊まっていってくだされ。風呂も沸かしますし、晩飯も用意します故」
俺達は村長の言葉に素直に甘える事にした。
「クレア、頼んだぞ」
「は、はい……おじい様」
こうして俺達は村長の家に宿泊する事になったのである。
しかし、穏やかに朝の時間を迎える事は敵わなかった。
――夜のうちに事件は起こるのであった。そう、オーク達が襲撃してきたのである。村娘が出歩かなくなった事で獲物を確保できなくなったオーク達。危険(リスク)を冒してでも得物を得ようと、直接的な行動に出たようであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます