第18話 オークレベリング

レベリングの前に、今のクレアの能力を確認させて貰った訳だが――


彼女の口にする能力を聞いて、俺は「ん?」となる。

見やすく表記するとこんな感じだ。


クレア・ヴェルヴェット


クラス:暗殺者

Lv :8

HP :37/37

MP :297/297

筋力 :33

魔力 :297

敏捷性:36


・スキル


隠密【1】

クリティカル【―】

バックアタック【1】


何この能力?


筋力や敏捷性、それにHPが想像以上に低い。

まあだがそこはあれだ。

箱入り娘で、全く体を鍛えて来なかったからだろうって事で分る。

だからそれはいい。


だがなんだ?

この異常な魔力とMPは。


特に魔力の方は、魔法クラスに分類されるレベル100の死霊術師である俺よりずっと高いんだが?

普通に考えたらありえない数値だ。


嘘申告?

だが何のために?


MPはともかく、暗殺者は魔力が高くても余り意味が無い。

そこを盛って報告する必要は皆無だ。


「えーっと……魔力とMPの数字、あってる?」


「ええ、間違いないわ」


聞き返したら、自信満々に返事が返って来た。

やはり嘘をついている様に見えない。


「そうか……クレアは随分と珍しい感じのステータスしてるな」


彼女の申告が事実だと考えるなら、この異常な数値は何らかの特殊体質と考えるのが無難だ。

きっと本人も、その原因なんかは理解していないだろう。


仮に理解していたとしても、余り女の子の体質の事を突っ込んで聞くのも躊躇われた。

まあ世の中不思議な人間もいるな、位に考えておくとする。


「ふふ。闇に生きる私は、世界の法則にすら縛られないのよ」


クレアが両手に短剣を構え、体を斜め後方に倒す意味不明のポーズを取る。

きっと本人はそれがカッコイイと思っているのだろう。


「しかし、そう考えると――」


微妙扱いされる黒曜石の武器も、魔力が極端に高いクレアが装備すれ十分実用的と言える。

何せ攻撃力が99もある訳だからな。

攻撃力があまり高くない短剣でこの数字は、中々優秀と言えるだろう


クレアもその辺りを考慮して選んで――は、怪しいか。

彼女の場合、純粋に黒くてカッコイイからという理由の可能性が高い気がする。


因みに、俺が今装備している鋼の剣の攻撃力は50しかない――ゲーム時代表示の物で、リアルの方では確認は不可能。


「じゃ、取り敢えず始めようか」


場所は街の外の平原。

俺は死霊の指輪内に封じてある、アンデッドオークを3体呼び出した。


そのステータスは――


種族 :オーク(アンデッド)

Lv :45→145

HP :420/420→140/140

MP :20/20→6/6

筋力 :240→80

魔力 :15→5

敏捷性:148→49


・スキル


生命力【3】

槍術【1】


――見ての通り、完全なパワータイプだ。


スキルの生命力はHPの自然回復とHPにボーナスの付くスキルで、槍術の方は槍を使う際にステータスに補正が付く効果がある。


オークはレベルペナルティが無かった初期では、取り合えずこいつを狩っておけばオーケーと呼ばれるぐらい経験値の多い魔物だった。

俺も結構お世話になった思い出がある。


「動かないから、まあ案山子相手に修練する感じでやってくれ。あ、ちゃんと攻撃する時は背後からな」


暗殺者は背後からの攻撃にダメージボーナスが発生する、バックアタックというスキルがある。

そのため、正面から攻撃するよりも後ろからの方がダメージ出るのだ。


「ふふ、伝説へと至る私に抜かりはないわ」


「あ、それと……MPが切れたら、この武器を使ってくれ」


俺は用意していたダガーを彼女に手渡す。


黒曜石の短剣はMPがある間は有効だが、切れると途端に攻撃力1のゴミ武器に早変わりするからな。

レベリングの為にひたすら攻撃し続ける事を考えると、替えの武器は必須だ。


「名前は?」


「は?」


「この子達の名前よ」


クレアが手渡したダガーを前に突き出して、そう聞いて来る。

一瞬何の事か分からなかったが、どうやら渡した武器の名前を教えろと言っているのだと気づく。


雑に用意したダガーの名前とか、聞かれても困るんだが?

まあとりあえず、適当に答えておこう。


「ダリーとガリーだ」


「ふふ、ダリ―にガリーね。果たして、この子達は私の動きに付いて来れるかしら?」


武器が動きに付いて来れないって、それ、手からすっぽ抜けるって事になるんでは……

まあ無粋な突っ込みは良いだろう。


「さあ始めようか」


当然レベル上げは俺も並行して行う。

そのために3匹全部呼び出したのだ。

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