浮気性な美貌の吸血鬼さんと、その彼に唯一なびかない花屋の娘のお話。
ファンタジーな世界を舞台にした、堂々たる王道の恋愛劇です。
魅了(チャーム)の術を駆使し、夜毎貴族のご令嬢を口説き落としている、美貌の吸血鬼クラウスさん。しかし一体どういうわけか、しがない花屋の娘のアメリアさんにだけは、彼の魅了も美貌もまるで効かないのでした——。
と、大まかに要約するならそのような筋のお話で、そしてこの時点でもう〝間違いない〟とわかるのがすごい。
この人物の配置から期待されるいろいろ、ふんわり頭の中に想起される「こういうのが見たい・読みたい」を、本当に余さずすべて叩きつけてくれます。
まさに王道中の王道、ハズレのない完璧なラブストーリー!
クライマックスがもう本当にたまらないんですけど、でも真の魅力はそこまでの筋道というか、細やかで丁寧な話運びが本当に綺麗。
しっかり溜めが効いているというか、出会いから入ってじわじわ関係性を積み上げていく様子を見せてくれるからこそ、終盤でこれほどまでの火力が出るのだと思います。
そしてクラウスさんがもう大好き。単純に好きなタイプのキャラクターだというのもあるのですけれど、本当にアメリアさんになりきって読んでました。
とにかく読み応えがたっぷりの、分厚く濃厚な恋愛物語でした。この満足感!