密室なんてクソ食らえ!
甘党むとう
問題編
「被害者はK大学三年生の星野香、二十一歳。
心臓を刺身包丁で刺され、その傷が原因で失血死。
死亡時刻は昨夜の二十三時から一時の間です」
若い警察官が手に持ったメモを読み上げる。
「第一発見者は?」
「被害者の大学の同級生である志嶋芽依が今朝、この部屋を訪れ、発見しました」
「今回の殺人は密室だと聞いていたんですが」
「扉の鍵は開いていたそうです。
その代わり、扉にはチェーンがかかっていました」
若い警察官は慌てて言葉を並べる。
「窓にも鍵はかかっていませんでしたが、昨夜はこの部屋の下の階に住んでいる音尾武が趣味の天体観測をしていたようで、窓が開くような音は一切しなかった、と。
なので窓からの脱出も不可能だと判断しました」
不安な顔がこちらの様子を窺う。
俺はそれを無視して、玄関で仰向けのままぴくりとも動かない被害者に顔を向けた。
水色のパジャマは既にどす黒い。
数少ない靴は玄関に乱立しており、クロックスだけが揃って端に置かれていた。
靴の収納ボックスの上には、数枚の写真といくつかのキーホルダーがついた鍵。
写真には笑顔で写る被害者と1人の女性が。
写真立てを掴み、よく確認する。
「そこに写る女性が志嶋芽依です。
二人は親友だったようで、少しだらしのない性格の星野香を、志嶋芽依が大学の講義が朝早いときに起こしに訪れるのが二人の日課だったそうです。
なので志嶋芽依は合鍵を持っていたらしいのですが……」
写真立てを元の位置からずらして戻す。
やはり、ぴったりだ。
「分かりました」
「……はぁ?」
「被害者と最近まで付き合っていた人はいますか?」
「……はい! います!!」
若い警察官が慌ててメモ帳をめくり、情報を引き出していく。
「園山愛翔、K大学三年生二十三歳。
星野香とは三日前まで付き合っていたそうです」
「では、その人に会いに行きましょう」
ーーーーーーーーーー
後日、K大学三年生の園山愛翔が殺人容疑で捕まった。
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