第68話 シャルルの検証

「殺してやるううううう!」


 檻の中から全力でぶつかってきて、肉がぶつかる鈍い音が響く。

 目の前の檻の中には、シャーロットの妹であるシャルルが見える。

 シャーロットに斬られた両手両足には義手と義足が付けられていて、普段と変わらない生活を送っている。

 ただ、どうしてか俺を見ると全力で向かってくるのだ。


 既に何度目か会っているが、一向に懐く気配はない。

 ではシャルルはそもそもこういう人間なのか? と聞かれれば、答えは『違う』だ。

 モニターで見ている彼女は至って普通の性格で、生活も貴族らしい振る舞いを見せる。


 彼女の様子が変わる条件は、今のところ3つ。

 1つが俺を見つけると問答無用で突撃して叫び散らかす。

 もう1つはシャーロットを見ると、犬のように興奮する。


 そして最後の1つは、シャーロットと俺を同時に見かけると奇声をあげながら暴れるのだ。


「アス。どう思う?」


「ん~普段は普通なんですけどね~☆」


 アスが棒で檻の中のシャルルを突くと、怒る動物のように威嚇してくる。


「彼女のトリガーは間違いなくシャーロットだと思うのだが、どうしてこうなるんだ?」


「あ~それでしたら、一つだけ気になる事がありました☆」


「ほお?」


「この子、普段は普通の生活を送っているのですが、それでも気になる点が一つだけあります」


「気になる事?」


「はい☆ ずっとシャーロットちゃんの名前を繰り返したりするんです。例えば、あの金髪の人形をシャーロットお姉様と呼んだりしてますね」


「そういや、モニターでもそういうのが見えていたな」


 あまりにも叫び散らかすので、一旦部屋を後にする。

 俺が視界から消えた瞬間、今までの暴れが嘘のように終わり、静かに金髪の人形の下に歩いていった。


「ご主人様」


「シャーロット。妹は元々ああなのか?」


「いえ。ここまで酷く・・はなかったのですが……」


「どの程度だったのだ?」


「普段は私とも仲が良かったのですが、私が男性を一瞬でも見つめると怒ったりしてましたね。子供の頃はまだ弱かったのですが、私が騎士団に所属してからはあからさまな態度に出ていました」


「ふむ…………では、彼女は昔から強かったのか?」


「はい。レイジネ王国で一番強いのは私という人も多かったのですが、少なくとも私は剣術で彼女に勝てたことがありません」


「ほお……シャーロットでも勝てなかったのか」


「ですが妹の戦い方は脆い部分も多く、猪突猛進な部分が多かったので、よく怪我で動けなくなってましたから、騎士団には所属していなかったのです」


 まぁ、あの戦い方を騎士とは呼べないだろうからな。


「久しぶりに会った時、あまりにも酷い形相だったので、妹だとすぐには気づきませんでした」


「変わったのが最近であるのは間違いないな。その理由は間違いなくシャーロットの存在だな」


「だと思います。気になる事があるとするなら――――妹は昔からよく私と結婚したいと常々言っておりました」


「ほぉ……それは面白い事を聞いた。アス」


「はい☆」


「今から俺が言うモノを用意してくれ」


「かしこまりました☆」


 アスはすぐに俺が伝えたモノを用意するためにその場を後にした。




 ◇




 まず最初の実験だ。


 シャルルが檻に入っている部屋に元騎士団員をで中に入れる。

 入って来た元騎士団員を見たシャルルは眉間にしわを寄せる。


「ゲイル様。はしたないですわ。服は着てくださいまし」


 こう聞くとただの貴族令嬢そのものだな。

 次は知らない男の裸姿だ。


「…………殿様があまり女性の前で裸になるものではありません」


 これも普通だな。

 次はヘルサイズのシャーリーを裸で入れる。


「寒くなりませんの? 風邪を引いてしまいますわよ?」


 これも普通か……。


「シャーロット。次はお前だ」


「かしこまりました」


 シャーロットが中に入る。


「シャーロットお姉様!」


 すぐに檻の中から走ってきて、檻の鉄棒を握り、つぶらな瞳でシャーロットを見つめる。


「シャルル。気分はどう?」


「問題ないですわ! 義手義足も不便なく使えますわ!」


「そう。それにしてもここは少し暑いわね」


「そうですか? ――――――っ!?」


 暑いと言いながら上着を1枚脱ぐシャーロットは、可愛らしいワンピースを着ていて、両肩が丸出しとなった。


「シャルル? どうしたの? 顔が赤いわよ?」


「ひっ!? な、何でもありませんわ。お、お姉様?」


「うん?」


「そ、その……お、お手を触れても?」


「いいわよ」


「っ!」


 近づいたシャーロットが座り込んだ手を差し出す。

 その手を震える手で握ると全身を震わせた。

 義手だから触感は繋がっていないのだが、どうやら触れているという事実にもしっかり反応しているようだ。


「うふふ。懐かしいわね。昔はこうしてよく散歩に行ってたわよね」


「!? は、はいなのです! お、お姉様? 覚えてくださってたのですか?」


「もちろんよ。大好き・・・な妹ですもの」


「ひっ!?」


 少しずつ分かって来たかも知れない。


「それにしても暑いわね」


 シャーロットがワンピースを脱いだ。

 可愛らしい下着姿となったシャーロットをシャルルが食い入るように見つめる。


「は、はぁはぁ…………お、お姉様の…………肌…………はぁはぁ…………」


 なるほど。

 まさか、自分の予想がここまで当たるとは。


 今度は俺が部屋の中に入っていく。

 俺を見つめたシャルルが怒りの表情に変わるが、次の瞬間。俺がシャーロットの胸を揉み始めるとシャルルの表情が一気に変わっていく。


「や、やぁ…………いやぁ…………」


 最後に服を脱がすと同時にシャルルはその場で痙攣・・し始める。


 そして、すぐにその場を濡らした。

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