第58話 魔人の選択

 - 罪人排除により、ダンポ400,000を獲得しました。対象の絶望値はSランクに到達しており、ボーナスダンポ400,000を追加獲得しました。-


 おお…………一気にダンポ800,000という凄まじい量のダンポが手に入った。

 これは最下層に着いた魔人をベルが倒した時に入ったダンポだ。

 三人のうち一人だけでこの量だから、他二人も手に入ったら中々の量だ。


 ただ、アスが相手した魔人は廃人になっており、ずっと部屋の片隅で震え上がっている。

 レヴィが相手した魔人はどうやらレヴィの術中にはまったようだ。


「主様」


「ご苦労。レヴィ」


 綺麗なメイド服のまま部屋に入ってくるレヴィ。

 とても戦いの後だとは思えないほどだ。


「どうやら私が相手した魔人は少し理解があるようで、こちらの提案を素直に聞きました」


「うむ。それは良いな」


「はっ。これからこちらに連れて参ります」


「分かった」


 すると、扉が開いて、武装メイド2人に両脇から連れられた魔人が一人中に入ってくる。

 モニターで見ていた彼は、レヴィと戦っていた魔人だ。


「!?」


 俺を見た彼は大きく驚く。

 今まで俺を見た人間は、外に出た時の連中かアメリアの父しかいないが、彼らはここまで大袈裟には驚かなかった。

 なのに、彼は驚くとともに全身を震わせ、立っているのもやっとに見える。


「こちらに来ると良い」


「は、はいっ! ただいま!」


 震える足で勢いよく飛び出した彼が一度転んでしまう。


「も、申し訳ありません!」


「構わん。落ち着くといい」


「は、はい!」


 地を這うように前に来て、そのまま土下座する魔人。

 何かを恐れるその姿に違和感を感じるのだ。


 …………もしかして、レヴィが何か仕込んだのか?


「お前の名前は?」


「はいっ! アルファと申します」


「ここに来た理由を簡潔に言え」


「かしこまりました! お、俺達の中でも特に強い魔人を上位魔人と呼んでいますが、上位魔人であるデルタによって招集されました。彼からこの地の周囲にあったダンジョンが3つ消滅したからと、その原因を調べて来て欲しいと依頼を受けました」


 デルタか。以前宿屋でも彼らが話していた人物だな。話から予想していた通り、彼らの上位なる存在と認識して良さげだな。


「どうしてダンジョンが消滅したのを知った?」


「我々は世界のダンジョンを感じ取る力がございます。特にデルタは現状、全てのダンジョンを把握しています。ダンジョンが消滅するケースは時々あるそうですが、3つ同時に消滅は類を見ないそうです…………いえ、大昔にそう言った伝承は残っているとデルタは言っていました」


「大昔の伝承?」


「はい。大昔に我々魔人と対峙した化け物・・・がいて、どうやらダンジョンから育つと伝わっています。なのでデルタは常にダンジョンを確認し、脅威が現れた時に芽が育つ前に切ると言っていました」


 魔人が化け物呼ばわりする存在か。魔人がダンジョンに住み着きやすいと聞いたのは、住み着くのではなく、ダンジョンを警戒していたからこそ、そういう風に見えていたのだな。


「お前達魔人の総数はいくつだ」


「上位魔人デルタと会った事はありませんがもう一人います。下位魔人は俺を含み23人います」


 23人という事は、一人減ったし、もう一人も廃人になっているから21人、アルファも除くと残り20人か。


「レヴィ。例のモノを」


「はっ」


 レヴィがとある四角い箱を持って、彼の前に置く。


「開けてみるといい」


 俺の声にまたもや全身を震わせながら目の前の箱を開いた。


「ひ、ひい!?」


 中身を見た彼は後ろに大きくのけぞる。


「お前には二つ選択肢をやる」


「はいっ!」


「どちらを選んでもお前が生きる事に代わりはない。一つはこのままデルタとやらに向かい、我々と敵対すると伝えて敵となる事。もう一つは、レヴィの手と足となり、この先も我々の飼い・・魔人となる事だ」


「!?」


「どちらを選んでも構わない。俺は約束は必ず守る。三日やるからゆっくり考えるといい」


 絶望的な表情のまま、武装メイドたちに連れられ玉座の間をあとにするアルファ。

 何だか弱い者をイジメてるようだけど、既にアルファは俺の支配下の人族をその手にかけている。

 ギブロン街の住民を配下と認めている訳ではないが、支配下に住む者を勝手に殺されてしまったのは事実。

 魔人達に容赦するつもりは全くない。


「レヴィ」


「はっ」


「例の件を進めておけ」


「かしこまりました」


 不敵な笑みを浮かべてレヴィも玉座の間を後にした。


 さて、上位魔人デルタとやらをどう捕まえに行くかだな。

 ただ、アルファの話から察するに、デルタは少なくとも2本角以上である事が分かる。

 3本角である可能性もあるけど、団長は歴史でたった1度のみ姿を現していると言っていた。

 それを考えれば、デルタとやらは2本角だろう。3本角ほどの強者なら自ら確認に来たと思われるからな。


 その日から3日間、アルファには極上の住み心地を体験させた。

 まずアメリアの極上料理を体験させ、普段はレヴィの下で『拷問の館』などを見せる。

 それを繰り返すうちにアルファの決心はどんどん揺れたようで、2日目の夜に忠誠を誓うと訪れて来た。


 魔人のアルファにも『嫉妬の王の眷属』の表記が見えるようになった。




 ◇ ◆ ◇ ◆




 - 獲得ダンジョンポイントが2,000,000を超えました。ボーナスが与えられます。好きなボーナスを選んでください。-


 - ①眷属強制成長(獲得済み)、②眷属視界共有、③眷属音声共有、④眷属連携転移、⑤眷属スキル共有 -


 獲得ダンポが200万を超えたおかげで二度目のボーナスを獲得できるようだ。

 前回は眷属強制成長を手に入れているので、獲得済みの表記になっている。

 その効果もボーナスとは思えないほどに破格な性能だったのだが、他の4つもまた素晴らしい効果だと思われる。


 二回目は③の眷属音声共有を獲得しておく。


 これにより、眷属同士ならどこにいてもそれぞれが会話できるようになり、連携と取りやすいはずだ。

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