第2話
この世界は魔王に支配されかけていた。
魔王の支配下の魔族たちは人間より優れた魔力と力を持っており当然人間はなす術はなかった。
そんななか、後に『勇者』と呼ばれる三人の人間が現れ、彼らによって魔王は討ち果たされた。
その中の一人『マスターマジックキャスター』と呼ばれるアルドル・エールスは魔族にに対抗できる人材を育成するためにエルドリア王国に「魔導学園」を設立した。そして今年も年に一度の入学式が近づいていた。この学園の創設者兼学校長であるアルドルは使い魔を使い大陸中の魔法の才能に恵まれたものに招待状を送る。この招待状は学園への入学許可証にもなっており一部の地域では招待状が来ただけでお祭り騒ぎになるらしい。そして人が寄り付かないような山奥の小屋にも招待状は届いた。
~とある森のとある小屋~
「おーいエイン招待状が届いたぞ。」
小屋の前に置かれていた招待状を手に取り、小屋の中でリーダー的存在であるゴルドーは小屋にいるエインに声をかけた。
「もうそんな時期なのか。」
エインはそう言うと招待状を受け取った。
「そう嫌な顔するなよエイン。前々から言われてただろ、入学してくれって」
同じく小屋にいるゲルフは招待状を貰って嫌な顔をしているエインに冷やかし気味に言った。
「それでもたかが学校でしょ?ゲルフたちと訓練してた方がましだと思うよ。」
「俺だって言えたたちじゃないが、学園に通えばここでは経験できないことが経験できる。それだけでも行く価値はあるんじゃないか?」
ゴルドーはエインに入学を進める。
「それに、あそこにはあのとんでも爺さんがいるんだろ?学園が退屈ならあの爺さんに教えてもらえばいい。俺らじゃ知らないようなとんでも魔法とか教えてくれるかもしれない。」
「それはそうかもしれないけど……」
エインは一般的な魔法の才能が開花してから学園に入学するというプロセスとは外れた魔法教育を受けているため、学園で習うような基礎はほとんど覚えてしまっている。さらにゴルドーたちとの訓練で魔法戦闘技術は国の兵士に匹敵するほどまで成長してしまっているのだ。
「学校で学べることは少ないかもしれないが、都市で学べることはたくさんあるはずだ。お前だってこの小屋に中にずっといたって学べることはないだろ?」
ゲルフの行ったことに一理あると思ったエインは
「ちょっと考えてみる。」
と言って自分の部屋に戻っていった。
(お前はどう思う?)
エインは、誰もいないはずの虚空に向かって話し始めた。はたから見たらおかしい光景だが、エインにははっきりとそれが見えている。
(私は行ってもいいと思うよ。学園には『光帝』と呼ばれる人間がいるようだし、退屈はしないはずだよ。)
虚空からの返事はエインにしか聞こえていない。この声の正体は人ならざる存在であり、人間が畏れ敬う存在である【神】である。【神】は人間とは違う次元に存在しており彼らは人間を依り代としてこの世界に存在している。
(その『光帝』はゴルドー達より強いのか?)
(そうだね……学園に行けば分かるんじゃないかな)
少し子供じみた言い方でエインの質問に答える。
(これも運命の神の思し召しってことなのかな?)
(さぁどうだろう?いくら私が【運命の神フォルトゥ】だとしても君の運命だけはわからないからね。)
(まあいいか、自分の運命がわかっていても面白くないからね。学園に行ってみることにするよ。)
(そうするといいよ。あそこには私の知り合いもいるだろうからね。)
「エイン飯にするぞー」リビングからゲルフがエインに呼びかけた。
「わかった今行く」
自室の扉を開けてリビングに行くとゴルドーとゲルフのほかに五人増えていた。増えた五人のうちの一人ガルアが「招待状が届いたんだな」とエインに話しかける。
「あぁ。そのことで話があるんだ。」
「もしかして今回はあのマジックキャスターの誘いにのるのかい?」ガルアの対面に座っていたセインが聞いてきた。
リビングにいるゴルドー達は一斉にエインの方を向いた。今まで何度もアルドルに誘われては即断ってきたエインが今回は学園入学に悩んでいるとゴルドーに教えられたガルアたちはエインの答えが気になっていたのだ。
「セインの言う通り学園に入学してみようと思う。ガルアやセイン、ギルダ達みんなと一緒にいることで学べる事は多いけどゴルドーが前々から言っていたように学園や都市でしか得られない経験ていうのをしてみたいんだ。」
ゲルフはキッチンで料理をしながら聞き耳を立てている。
「だから今回は、学園へ行くことにしたんだ。」
「そっかぁエインもとうとう巣立ちするのかー」間の抜けた感じでシルニアが返答をする。
「お前にはいい刺激になるかもしれんな。」グルトは静かに、しかしはっきりとエインの決断を支持した。
「いつ出発するつもりだ?」ゴルドーは答えはわかりきっていたという顔をしながら別れの日を聞く。
「明後日には出発しようと思う。入学するまでに街の雰囲気とかに慣れておきたいから。」
「そうか。」ゴルドーはそれだけ言うと席を立って自分の部屋に戻って行った。
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