高校博打に誉あれ
soた
第1話 カイマク
キーン コーン カーン コーン
他の高校と比べても負けず劣らずほどの大きなチャイムが耳をさす。普段人通りの少ない廊下、解放はされど特に人が来ることもない屋上、物寂しげに屋上の端に置かれた木製ベンチは、ここの学校の生徒が実習の授業で作った物だ。
「んぁ、」
目を覚ました瞬間、ベンチに横たわって寝ている高校1年生 寺井颯人(テライハヤト)はまた午前中の授業をすっぽかしていたことに気づく。
「またか、こりゃ西垣に怒られるぞ〜、ん?」
ベンチに仰向けになり上の空になっている井上のもとに、屋上の静寂を破るように唯一の屋上への扉から足音が近づいてくる。
「寺井、また屋上でサボってんな。昼休み突入しちゃったぞぉ?西垣先生も探してたし」
語尾が気になる話し方、そして俺の授業さぼり事情を知る男、高校に入学した時に地元が近くでたまたま仲良くなった友達、大本和(オオモトナゴミ)が寝ているベンチへ歩きよってきた。
「あぁ、なごみ。めちゃ快適な昼寝だったわ、それにしても腹減ったな」
俺はベンチから体を起こし歩いてくる男のために隣に座れるよう端によった。
「和って呼ばんといてや、女っぽくて気にいっとらん言うたやろ?いつも言うてるけどオオモンにしてや呼び方」
そう言って和は俺の隣に座った。
「和ご飯食べた?ずっと寝てて腹減った」
「何時間目からおらんかったんか知らんけど、寺井の教室チラッと行ったら席空いたったからな。飯はまだやで、呼びにきた。」
和のクラスは1年S2組、俺はB1年と高校のクラス分け自体は少し複雑なのだ。
「そっか、じゃ行きますかっ」
そう言って2人は屋上を後にした。
※
「おばちゃん、クリームパンあります?」
「俺、アンパン」
屋上から食堂へ移動してきた2人は真っ先に食堂の奥にある購買へ向かった。
購買で立ってたのは眼鏡をかけた40過ぎぐらいの女性だった。この人は入学前からずっと購買で仕事してるらしい、、、いや知らんけど。
「あるよ〜、どうせ誰も来んて。みんなあっち行っとるわ。はい、200円」
そう言っておばちゃんは手のひら大のクリームパンとアンパンをケースから出して置いた。
「そっか。あんなもんみて何が楽しいのやらね〜いい気なもんだよ」
「怖いもんやからなぁ〜、見んのはオモロいねんけど」
財布から200円を取り出してトレイに置いておばちゃんにお金を払った。
「また来てな。あんたらしか来んからさー」
購買おばちゃんは、この学校の制度のせいで客足ならぬ生徒足が減って話し相手もいなかなったから寂しがっていた。そんなところに俺らが行ったもんだから、えらく楽しそうに喋るのを見てだんだんくる回数を増えてった。
「おけー、気が向いたら来ますわ」
そう言って購買を後にした。
2人は食堂の出口に近い窓際の席に座って、それぞれパンを、かじっていた。
「寺井はやらへんの?試合、」
そう、さっきから購買で言ってことや、昼休みに関わらず生徒人っ子一人いない理由は学校の制度にある。
これは多分4年年前のこと……、、、、
『今年も始まりました。高校生による剣と拳を交わす大会、高校チャンピオンシップ!!!各県から選りすぐりの生徒たちが自分の強さを証明しに続々と集まっております!!!!』
当時まだ動いた壊れかけテレビから、そんな熱い熱い放送が流れた。その時俺は体も小さかった中1なりたての時で高校野球だのサッカー、ラグビーetc、には全く興味はなかった。そんな自分が唯一そそられたもの、それが高校チャンピオンシップだった。
―― 高校チャンピオンシップ――
それは高校生たちが友達同士はたまた先輩後輩と、さらには他校の生徒達と、自分たちが作り上げた武器・鎧・技術で戦いあうBIGイベントである。はじめは大阪にある2校が高校同士の関わりを持つため作った生優しいイベントだったが、いつしか日本を駆け巡るほど大きな大イベントとかしていた。
当時それを見ていた世間を全く知らない俺は目をバチバチに輝かしていた。
「(すげぇ!かっけぇぇ!!面白ぇ!!!)」
今から思えば、そんなニュース1つで進路を決めてしまったのはいかがなものかとは思うが、その大会において良い成績を残している『桜井東高校』入学すると、ずっと意気込んでいた。
まぁ、本当に桜井東高に入学を果たしてしまうんだから結果的には申し分ない。全くない!。
だけど親にはそれは大層反対されたもんだ。生徒同士が剣を握って喧嘩なんてって親は心配するわな。だけど行きたかったんだ俺は。入学も果たし、入学式には気の合う友達も出来て、最高の人生を送るつもりだったさ。だけど入学初日に行われた適正診断によって希望は打ち砕かれたからな〜。
「そりゃ俺も試合出たいって思ったぜ!でも仕方ねぇじゃん。適正診断で出た結果が剣士でもハンマー使いでも大剣持ちでもない、まさかの両手ガントレット。拳闘士だよ!!」
そう桜井東高校にはそれぞれの学科がある。戦闘に特化したbattle(バトル)専門学科「Bクラス」、そして後方支援support(サポート)専門学科「Sクラス」、さらには生徒たちの武器や防具を製作するために存在する鍛冶師、及び錬金術師alchemy(鍛治錬金)専門学科「Aクラス」と3日も存在する。
勿論だか俺、寺井颯人はBクラスの1年B1組、大本和はSクラスの1年S2組という感じだ。戦闘方法やサポート方法でも役割は大きく変わるため、新入生は始めに「適正診断」があるのだ、そこで出た俺の結果は、
判定結果
『1年B1組 寺井颯人』
職種 : 拳闘士
適正武器 : ガントレット系
だった…………、、、、、。
「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」
「ありえるか!?この世の中、生徒同士で剣を交わす世界で素手ってなんだよ〜(泣)」
「まぁ気持ちは分かるけどなぁ〜」
「(お前は良いよなぁ、ハズレでも最悪、道具サポート師って道もあるしなぁ)」
「まぁ寺井と違って俺はサポートながらに武器持ちっつうレア職やから困らへんけどな(笑)、ほれ」
そう言って和は自分のステータスが書かれた生徒手帳を見せてきた。
判定結果
『1年S2組 大本和』
職種 : 後方支援、長槍使い
適正武器 : 槍適正.大
「(くぅ〜っ憎いぜ!!)」
「寺井がこんなんやから仕方なし友達として横おるけど、一緒に戦いたいねんどー?」
「分かってるよ、この学校にいる以上は試合が全てだからな。だけどガントレットじゃなぁ」
実は俺は喧嘩がすっごい強いってわけでもない。ただただ本当にカッコいい剣を振りたかっただけなのだ。
「まぁ考えとくよ、迷惑もかけられないし」
そう言って食堂の席を立った
「出来れば早めに頼むで、夏休み来たら一学期の成績、集計されてまうで!」
和のためにも早めに……か………、、、、。
第1話.終
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