江の島
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そして、夕陽を見に江の島へ。小田急は『青春18きっぷ』が使えないが我慢してくれ。稚児ヶ淵まではアップダウンがあってきついが、最終日だから気合を入れて頑張れ。素晴らしい夕日に感動すること間違いない。
15:03 小田原
|JR湘南新宿ライン
15:29 藤沢
15:36 藤沢
|小田急江ノ島線 (青春18きっぷ効力外)
15:42 片瀬江ノ島
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14:33 熱海
|JR上野東京ライン
15:26 藤沢
15:36 藤沢
|小田急江ノ島線 (青春18きっぷ効力外)
15:42 片瀬江ノ島
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東海道線には、湘南新宿ラインと上野東京ラインが乗り入れている。大船までは同じだが、そこから行き先が変わるのでややこしい。
江の島にはJRでは行けないので、藤沢から小田急江ノ島線に乗り換える必要がある。ここは『青春18きっぷ』は使えないが仕方がない。ここで、”あいつ”の作った旅程に合流だ。
ちなみに江の島の最寄り駅は、小田急江ノ島線の片瀬江ノ島、湘南モノレールの湘南江の島、江ノ島電鉄の江ノ島と三駅あるが、小田急江ノ島線の片瀬江ノ島が最も江の島に近く、熱海方面からの乗り換えの便も含めて考えると、小田急江ノ島線一択だ。
小田急はSuicaで改札を通り、藤沢駅から三駅目で片瀬江ノ島駅に到着する。駅舎は竜宮城のような(行ったことはないけれど)デザインで、朱色と緑青色と白の三色の屋根を白い円柱が支えている。
片瀬江ノ島駅を出て地下道を通ると、江の島へ続く弁天橋の入口に出る。この橋を渡れば江の島だ。蓬莱橋は大井川に架かる長さ897mの木造橋だったけれど、弁天橋は湘南の海に架かる長さ389mのコンクリート橋だ。今の橋に架け替えられる前は木造の橋だったらしい。橋の上は観光客で賑わっており、久しぶりの都会の人出の多さが懐かしい。
そして、江ノ島か、江の島か、どちらが正しいのでしょう? もともとは両方混在していたが、今は「江の島」に統一されており、統一以前に作られていた駅や昔の施設は「江ノ島」を使っているところもあるとのこと。
海風に吹かれて弁天橋を渡ると、江の島で最も賑わっている仲見世通りだ。仲見世通りの先には大きな鳥居も見えており、その奥には
仲見世通りには観光客向けの店がたくさんある。江の島はしらす推しなのか、しらすコロッケやしらすパン、しらすソフトクリームなど、しらすを使った食べ物が目白押しだが、個人的には微妙。なので、もう一つの名物のたこせんべいの店に並ぶことにする。丸ごとの”たこ”を1トンの圧力のプレスで押して、薄く焼き上げる。行列に並ぶこと15分ほどで、できたての熱々が手に入った。薄くて簡単に割れるので写真を撮るときには気をつけて。
人の顔よりも大きなたこせんべいだが、薄いせいか、あっという間に食べ終えてしまう。タコの風味が香ばしいけれど、これも、やっぱりシーフードって言っていいのだろうか。
鳥居を抜けて参道の階段を上ると、竜宮城のような江島神社の瑞心門が現れる。片瀬江ノ島駅の駅舎とは違った形だが、それでもやはり竜宮城デザインだ。江島神社は552年に建立された歴史ある神社で三つの宮に三人の女神を祀っている。
江島神社の本殿を抜けて江の島の反対側にある江の島岩屋までは、アップダウンの激しい山道をひたすら歩く。階段には手すりがあるのがありがたい。カップルで歩いている二人組も多いが、疲れた彼女の手を頑張って引っ張る彼氏は傍から見ていても大変そうだ。初デートで江の島を選んで、いいところを見せようとしているのだろうか。
島の中をくねくねと進む道は、歩いても歩いても先が見えない。ガイドブックによれば、仲見世通りから岩屋までは歩いて約30分。ちょっとしたハイキング、いや、軽い登山と言ってもよいだろう。いや、それはちょっと大げさか。江の島にはエスカーという長いエスカレーターもあるが、乗ってもそれほど短縮にはならないようだ。
道沿いには、土産物屋やカフェ、レストランなどが多数並んでいる。海鮮や、かき氷、パンケーキ、ソフトクリームなどが定番だ。地図を見ると江島神社の奥津宮はまだまだ先だ。島の半分ぐらいが江島神社の敷地内みたい。
へとへとになって奥津宮を抜けて島の反対側の海岸に着くと、稚児ヶ淵が見えてくる。ごつごつとした岩場に白波が砕けている様子が伺える。家族連れや若いグループは、岩場に降りて水遊びをしている。
江の島岩屋はまだ先だ。稚児ヶ淵から海岸線に沿って設置されている赤い手すりがよく似合う遊歩道を歩く。さすが観光スポットだけあって、遊歩道から見る岩場と海の対比は、ダイナミックな自然そのものだ。東京から一時間ほどでこんな場所があるとは知らなかった。
江の島岩屋は島の最奥部にある海食洞窟だ。かつて、弘法大師や日蓮上人も修行したと伝わっている。第一岩屋と第二岩屋からなり、最初に入るのは第一岩屋だ。入り口を入ると係員から手持ちのロウソクを渡され、ロウソクの灯りを頼りに洞窟内を進む。天井が低いので油断すると頭をぶつけそうだ。
洞窟の中はひんやりとしていて歩き疲れた体にやさしい。春でもありがたいのだから、夏の盛りに来たら洞窟に涼みに来る観光客でいっぱいになりそうだ。鍾乳洞のような洞窟を歩いていくと、最深部には”江島神社発祥の地”があり、
第一岩屋を見終えると一度洞窟を出て、海岸沿いの遊歩道をさらに進み、第二岩屋へと進む。こちらは中に入ってもロウソクはなく、敬虔な場所というよりかは、観光地化された洞窟といった体で、洞窟の中はイルミネーションが灯されている。そして、洞窟の奥には龍の像が一定時間ごとに色の変わる照明でライトアップされ、観光客が順番に撮影をしていた。
洞窟を出ると夕方の時間だが、夕陽にはまだ早い。一度、稚児が淵まで戻り、水しぶきを身近に見る。ここは江の島随一の夕陽スポットだが、ここまで歩いてきた距離を考えると、ここで夕陽を見て暗くなると帰りが大変そうだ。なので、来た道を戻ることにした。
階段を上っては下りの山道を歩いていると、だんだんと日差しが弱くなってくる。レストランの地ビールの看板が引き寄せようとするが、ここでアルコールなど飲んでしまったら足が動かなくなってしまうだろう。
頑張って仲見世通りまで戻ると、西の空が橙に染まり始めた。夕陽スポットをどこにしようかと迷っている時間は無いので、江の島と本土をつなぐ弁天橋から見ることにした。弁天橋から太陽の沈む方向を見ると、ちょうど江ノ島のハートのモニュメントと遠くに見える富士山の間に沈むところ。
太陽が地平線へと近づくにつれ、薄い橙がだんだんと濃い橙へと変わる。富士山も霞み始め、形だけ残し色彩が消えていく。ハートのモニュメントの前には、恋人同士らしい二人連れのシルエットが浮かぶ。
さらに太陽が沈む。もう、地平線と接する寸前だ。西の空の赤から東の空に残る青へと空がグラデーションに染まる。青かった海面は藍色に変化し、海と空の間の江の島はまるで影絵のようだ。
なんだろう、この胸を騒がせる感情は。
今日、陽が沈んでも、また明日、陽は登る。
同じ景色の繰り返し、だが、全く同じ景色は無い。
ただひたすらに美しく、ただひたすらにもの哀しい。
私は、この夕日を目に焼き付ける。
この景色の詳細は、すぐに忘れてしまうだろう。だが、この景色の美しさは、私の心に永遠に残る。
「あの人、泣いてる」
近くを通り過ぎた人が、いっしょに歩いている人にそっと話しかけた声が聞こえた。
そうか、私は泣いているのか。昨日のような泣き方ではないけれど、私の目からは涙が流れている。
ちゃんと見たよ。”あいつ”の見せたかった夕陽を。
あと一つ。
ちゃんと見るよ。”あいつ”の見せたかった夜景を。
私は最後の目的地へと向かった。
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