小田原
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そして、また身延線を戻って沼津へ。ここはちょっと移動に時間がかかるのがネックだが、明日がラストだ。頑張れよ。
18:46 甲府
|JR身延線
21:36 富士
21:50 富士
|JR東海道本線
22:09 沼津
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今から、甲府に戻って身延線に乗ったら5時間以上かかってしまう。いくら鈍行の旅だと言っても、それでは無駄に時間を過ごすだけだ。
こんな時にスマホは便利だ。昔なら、分厚い時刻表をめくりながら四苦八苦して旅程を作ったが、今では出発駅と到着駅を入力するだけで簡単に乗り換え経路がわかる。
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17:05 相模湖
|JR中央本線
17:14 高尾
17:23 高尾
|JR中央本線
17:29 八王子
17:40 八王子
|JR横浜線
17:52 橋本
18:01 橋本
|JR相模線
18:56 茅ヶ崎
19:14 茅ヶ崎
|JR東海道本線
20:07 熱海
20:10 熱海
|JR東海道本線
20:28 沼津
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相模湖から沼津に行くには、八王子から横浜線と相模線で茅ヶ崎まで南下し、東海道線に乗り換える。全5回の乗り換えで3時間23分だ。
見てるだけで目がくらくらする。気持ちは昂っているが、体は思った以上に疲れている。
どうせ予定を変えるのだ。”あいつ”のプランを基本にもっと柔軟に考えてみよう。もともとの予定では、今晩沼津に泊まって、明日は、三島、熱海、小田原と東海道線を途中下車しながら東京へと戻ってくる。片方向に進むのが効率が良いのはわかるが、東海道線は本数も多く、駅間もそんなに長くない。
だったら、今日は小田原に泊まるのはどうか。小田原なら一時間ほど早く19時27分に到着する。そして、明日は人の少ない早朝に小田原城を散策できる。その後、三島、沼津と下っていき、沼津から熱海に戻る。それならば体の負担も少ないし効率的だ。
考えている時間は無い。よし、そうしよう。検索した経路のまま進み、茅ヶ崎から東海道線に乗って小田原で降りればよいだけだ。JR相模線に乗っている時間が長いから、その間にスマホでホテルを予約すればいい。
必死に今日と明日のこれからの予定を考えていたら、さきほどまでの憂鬱な気分がいつの間にか和らいでいることを自覚した。こんな旅は初めてだ。今までは出発前に決めた予定に従って旅をしていた。それが当たり前だと思っていた。行き当たりばったりで、どこにいくかを決めるなんて正気とは思えない。
でも、今はちょっと楽しい。海外と違って国内の旅だから、安全だというのもあるだろう。しかし、最大の理由は『青春18きっぷ』が乗り降り自由なきっぷだからだ。頭ではわかっていても、この三日間、実際に『青春18きっぷ』を使って旅をしたことで、体が自由を感じている。
初日は、『青春18きっぷ』を使えば、どこでも乗り降り自由だということはわかったが、”あいつ”の立てた予定通りに行動した。
昨日は、”あいつ”の立てた旅程のとおりに旅をしたが、少しだけ電車の時間を融通した。
そして、今日の午前中は、悪天候という理由で”あいつ”の旅程に従わずに、途中を飛ばして先の目的地へと移動した。
少しずつ、私を縛っていたタガが緩み、少しずつ、私の考えが柔軟になっている。
これだ。これが、”あいつ”の言いたかったことなんだ。いつも、杓子定規でレールから外れずに生きてきた私。わき目を振らず、一直線に最短距離だけを進んできた私。そして、いつも疲れていた私。
そんな私に、もっと自由に生きろ、もっと周りを見ろ、世の中にはお前が見過ごしてきた素晴らしいものや、美しいものがたくさんあるぞ、寄り道したっていいんだ、そんなことを”あいつ”は私に伝えたかったのだ。
だが、それを言葉にされて面と向かって言われても、私は聞きもしなかっただろう。そんな、説教を言えるほどお前は偉いのかと、逆に頑なになっていたに違いない。だから、それを言葉ではなく、実際に私自身で感じるように、『青春18きっぷ』を贈ったのだ。
もし、私が旅を終えて、せっかく私のために作ってくれたプランなのに途中で変えてしまったよと”あいつ”に言ったら、”あいつ”はきっと笑って、
――旅程はあくまでも旅程、自由に変えていい。それこそ『青春18きっぷ』の醍醐味だ。
と言っただろう。
旅をしよう。”あいつ”の作ったプランで、私の旅を。
明日で最後だ。”あいつ”の作ったプランを楽しもう。後悔しないように。
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