第44話 デートへの道

「じゃあこの映画案でいいかな?」


「そうですね。よろしくお願いします」


「こちらこそよろしく。これから計画を立てて行くから、集合時間とかはまた連絡するよ」


「ありがとうございます。楽しみですね」


 こうして、俺と紗緒里ちゃんは、ゴールデンウイークの中で出かけることになった。


「ところでおにいちゃん、これってデートですよね?」


 紗緒里ちゃんは微笑みながら言う。


「デ、デート……」


「まだわたしたち、恋人どうしじゃないですけど、仲の良い二人がお出かけするんですもの。しかも最近はどんどん仲良くなってきていますし。わたしはもうデートだと思っています」


 改めてデートと言われると急速に恥ずかしくなってくる。


 紗緒里ちゃんの言う通り、俺達はどんどん仲が良くなっている。


 彼女の俺に対する想いも、始業式の時に比べてますます大きくなっているように思うけど、俺の方ももう彼女に恋をしているところまで来ていた。


 後は俺から告白をすれば、俺達は恋人どうしになれる。


 しかし、今回のお出かけの中で、俺は彼女に告白をすべきか、というところでも悩んでいた。


 一緒に出かけるところまでは決断できたが、告白となるとまた別の話になる。

 告白して、恋人どうしになるということは、彼女への結婚への道が開けるということだ。


 その道へ行くからには、今までのようにただ「好き」ということではなく、彼女を心から幸せにしたいと想っていくことが必要になってくる。


 彼女に告白すべきかどうかで悩んでいる俺だが、告白すると決めた場合は、レストランで食事をして、その後、くつろぎながらおしゃべりを楽しんだ後、告白するつもりでいる。


 彼女に対して、それでもまだいとことしての認識が残っている俺にとっては、そういう場で告白をすることが、恋人どうしとして生まれ変わる一番いい場所だと思う。


 とはいうものの、告白することを決めたとしても、それをうまく彼女に伝えることができるのだろうか……。


 俺はデートという言葉を聞いただけでも心が熱くなって、浮き上がってしまう。


 当日もそういう状態になったら、彼女に、


「好きだ。付き合ってほしい」


 と言うことができるのだろうか。


 その言葉のうちの、


「好き」


 という言葉も言うことができないかもしれない。


 いとことしての「好き」ではなく、恋人どうしとしての「好き」と言わなければならない。


 同じ「好き」でも、全く違う言葉だ。


 いとこから恋人へ。


 俺はその心の切り替えをきちんとするつもりでいる。


 それをしなければ、これからも魅力を増してくるであろう紗緒里ちゃんを前に、悩みはどんどん強くなってくるだろうと思う。


 しかし、言葉で言うのは難しくはないが、その心の切り替えはなかなか難しい。


 それでももう少しのところまではきた。後少しなのだけど、そこが難しい……。


 そう思っていると、


「おにいちゃんも、そういう気持ちで行ってくれるといいなあ、と思っています」


 と紗緒里ちゃんは言った。


 この気持ちにどう応えるべきだろうか。


 まだデートとは言えない、とまだ言うのだろうか。


 いや、もうここまできたらそれは言えないだろう。


 彼女は、俺のことを気づかってくれている。その気持ちには応えていかなくてはいけない。


 そして、俺自体も、彼女とデートをするという気持ちで盛り上がり始めていた。


 デートという言葉を使うことについて、恥ずかしいという気持ちはまだまだ強いが、そういう気持ちに打ち勝っていかなくてはならない。


「俺も紗緒里ちゃんとデートをすると思っているんだ」


 思い切って俺はそう言った。


「そう思ってくれるのですか?」


 紗緒里ちゃんの驚いた声。


「ごめん。まだ俺達恋人どうしじゃないけど、紗緒里ちゃんの言う通り、仲が良いものどうしが一緒に行動するんだ。デートとして行きたいと思う」


「うれしいです。おにいちゃんがそう言ってくれるなんて、思っていなかったです」


 紗緒里ちゃんは、少し涙声になりながら、続ける。


「おにいちゃんがどんどんわたしのことを好きになってくれている、ということですよね」


「そ、そうだな」


「ありがとうございます。おにいちゃんが、わたしの恋人になってくれるようにより一層努力します」


 そう言ってくれるのはうれしい。しかし、俺は、その彼女の想いにまだ応えられていない。


 応える為にも、今度のデートは大切なものになると思う。


 彼女が喜んでもらえるよう、準備をしっかりしていこう。


「今でも充分努力していると思うよ。俺の為に尽くしてくれている。申し訳ないぐらいだよ」


「そんな、申し訳ないだなんて。わたしこそ、おいしい晩ご飯をご馳走になっています。それに、ゆくゆくはおにいちゃんの妻になるんです。もっともっとおにいちゃんに尽くしていかなければならないと思っています」


「ありがとう。そう言ってくれて」


 俺は紗緒里ちゃんのことが、ますます好きになってきた。


「今度の初デートは、思い出に残るものにしたいです」


「俺もそうなるといいなあ、と思っている」


「おにいちゃん、好きです、好きです、大好きです」


 紗緒里ちゃんはそう言いながら、微笑んだ。

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