第5話
ベヤヤの背に揺られ、山を踏破して反対側に到着。
途中、ベヤヤの寝床の近くを通過すると言うので、ちょっと寄ってもらって素材を回収。
寝床にあったのは、毛皮の切れ端、骨の欠片、ツタの切れ端etcetc…・・・・
それらを集め、クラフト魔法で色々と足りない物を作るのじゃ。
毛皮の切れ端とツタの切れ端で、とんがり帽子。
毛皮の切れ端と骨の欠片で、腰巻ベルト。
爪の破片と牙、落ちていた小石を変化させた宝石で、アクセサリー等の小物。
しかし、切れ端やら破片ばかりで、大きな形で残っている物が無い。
ベヤヤによると、多少硬かろうが、骨も牙も爪も噛み砕いてしまうらしい。
なるほど、それじゃこうなるのう。
帽子を被り、ローブを少しだけ手直ししてベルトを通す。
首飾りを付けて、完璧な魔女スタイルの完成じゃ!
ベヤヤの寝床は洞窟になっており、その周囲は木は多いが、なだらかな平地になっている。
山でこれだけ広く平地になっている所は珍しい。
うむ、家を作る際、木はどうせ切り開く予定なのだから、ここに家を作るのが良かろう。
さて、少し手間取ったが、村に向かうとしようかの。
うむ、山を下りている最中に見えた村が見えたのじゃが、どうにもこうにも様子がおかしい。
今は昼を過ぎた頃、普通なら畑に出て作業をしている農夫の姿があるはずじゃが、村には無数の人がいる気配を確認出来るのじゃが、どうにも中央の一ヵ所に集まっておる?
少し悩むが、どうせ挨拶に行かねばならんのじゃから、さっさと終わらせてしまうのが良かろう。
と言っても、いきなりベヤヤを連れて行ったら大混乱が起こるのは必須。
なので、ポーション製作で『念話スキル』を作り、半分をワシが、残りをベヤヤに飲ませた。
コレでワシとベヤヤ同士は声に出さずとも、余程遠くであったり、何かしらで妨害されていなければ話す事が可能となったのじゃ。
「それじゃ、ここで待っておるのじゃ」
『あいよ』
ベヤヤを村近くの木々が生い茂る場所に残し、一人村の中に入って行く。
入って行くのじゃが……
うーむ、こりゃアレじゃな、どうもこの村は何かに襲われている真っ最中、と言う状況のようじゃ。
家々の扉は乱雑に破られ、そこら中に血やらが飛び散っている。
唯一の救いは、死体がまだ見当たらん事じゃが……
取り敢えず、人が密集しているのは中央の広場の様なので、そちらに向かってみる。
もし、手に負えそうになければ、ベヤヤを突撃させる予定じゃ。
そして、見えてきたのは、小汚いムサイおっさん集団と、ボロボロになったガリガリの集団だった。
「食糧は渡したので全部じゃ! これ以上何を渡せと言うんじゃ!」
「おいおい、あれっぽっちの食いモンで、俺達が満足出来ると思ってんのかぁ?」
「食いモンがねぇなら女だよ女! 村の女をさっさと出しな!」
錆びた剣やら斧やらで武装したムサイおっさん集団が、ガリガリの集団を脅している。
どうやら、このムサイおっさん集団は山賊か盗賊で、ガリガリの集団がここの村人のようじゃの。
で、
うむ、ギルティ。
「見ての通り、ここ数年の不作で何もないんじゃ!」
「これ以上持っていかれたら、村を捨てなくちゃいけなくなっちまう!」
「ガハハハハ、んな事俺らが知った事じゃねぇんだよ!」
村人達の訴えも、このムっさん集団には意味が無いようじゃの。
さて、そろそろ片付けるとするのじゃ。
「ぁー、近くに越して来たので挨拶に来たんじゃが、どうやら取り込み中のようじゃの」
そう言って、ムっさん集団と村人の間に歩いていく。
両方の視線が、ワシ一人に集中し、村人達からは落胆したような表情、ムっさん連中は爆笑していた。
まぁ予想通りの反応じゃの。
「ギャハハハハ! なんだこのちっこい奴は!」
「こんな状況で挨拶なんかに来るたぁ、どんだけ頭が抜けてんだ」
「おい、あの杖見ろよ、よく見りゃ、先に付いてるの宝石だぜ!」
「丁度良い、身包み剥いで売っ払っちまおう!」
ムっさん連中が口々に言い合っているが、まず最初に確認しなくてはならん事がある。
「一応確認じゃが、オヌシらは山賊か盗賊かの?」
その言葉で、ムっさん連中が顔を見合わせると、一際大きな体躯の男が最後尾から現れる。
どうやら、この男がリーダーのようじゃの。
先程まで、村人達を脅していたのは、どう見てもリーダーと言うには色々と貧相過ぎたから、怪しかったんじゃ。
「俺達、『黒血の牙』を知らんとは……まぁ餓鬼の様だし、知らんのも無理はないか……」
デカイおっさんがブツブツ言いながらジロジロと見て来る。
そして、自己完結したのか、ふんぞり返った。
「俺達がここいら一体を支配する、盗賊団『黒血の牙』だ! 分かったら身包み置いていけぃ!」
「うむ、悪人と分かったからには容赦などせん! 『マルチ・スタンショット』!」
ワシの周囲に野球ボールサイズの光る玉がいくつも現れ、それが目の前にいたムっさん達に向かって放たれる。
直撃したムっさん達が悲鳴を上げて吹っ飛び、倒れてビクンビクン痙攣している。
今のは『雷魔法』にある、一定時間身体を麻痺させて自由を奪う『スタンショット』と言う魔法を、『マルチロック』と言う補助スキルを使用して同時射出しただけの非殺傷魔法。
会話中、マルチロックでムっさん達をマークしておき、悪人と判明したので、一気に無力化しただけじゃ。
何故に手間でも確認したのかと言えば、もし、この争いが村同士のいざこざだった場合、確認せずに魔法を使って被害を出せば、村人に対して魔法を使って被害を出したとされて、ワシが悪人にされてしまう。
まぁ、どう見てもガリガリ集団を脅しておるムっさん達が悪人であるとは思っておるんじゃが、世の中には理解出来ぬ事もあるんじゃし、確実に分かってから無力化したのじゃ。
「このクソガキが!」
ぉ、どうやらリーダーのムっさんは、部下を盾にしてスタンショットを回避したようじゃの。
ワシ目掛けて振るわれた所々に錆が浮いておる剣を回避し、距離を空ける。
うむ、盾(肉壁)を使われたらスタンショットは効果は薄い、と覚えておくのじゃ。
「元気じゃのう、それだけ元気が有り余っとるなら、畑でも耕すか、森に入って獣でも狩ってれば良かったろうに」
「うるせぇ! んなチンタラやってられっか!」
ムっさんの体躯とパワーなら十分じゃと思うんじゃが、どうやらかなりのせっかちのようじゃ。
まぁ、確かに自分でやるより、誰かの成果を奪った方が楽と言えば楽なんじゃろう。
「ふーむ、仕方無い、これはやりたくなかったんじゃが……」
足を止め、村人の方を見る。
全員が一塊になっており、事の成り行きを見ているようなので、問題は無かろう。
「ワシの連れを呼ぶでの、安心しとれ」
村人達に一応注意を呼びかけ、念話でベヤヤに来るように命じる。
魔獣使役で、ベヤヤはワシのいる位置がある程度は分かるようになっており、今の距離ならまず、間違いなく直ぐに来れるじゃろう。
そして、足音を響かせベヤヤが突っ込んできた。
あ、相手をさせようと考えていたムっさん吹っ飛ばされた。
『呼ばれてきたが、なんだ?』
いや、ベヤヤに相手させようと思っとったんじゃがの……
その相手は現在、馬小屋だかの壁を突き破り、足だけが見えている状態。
一瞬だったの。
「あーうん、もう終わったのじゃ」
改めてスタンショットを撃ち込んで、確実に麻痺させて、改めて村人の方に向かう。
うむ、怯えとるの。
余程、あのムっさん達が恐ろしかったんじゃろう。
「もう大丈夫じゃ、悪人共は皆麻痺ってうg……」
「「「「「「「エンペラーベアァァア!!?」」」」」」」
村人達が叫んで逃げ出す。
中にはその場で失神して、倒れてしまった者達もいる始末。
うーむ、こりゃちとやりすぎたかのう……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます