無感情な金髪金眼の美少女が俺の前だけ照れるんだけど
りんごかげき
1
「未白こころです。趣味なし、目標なし、がんばることが嫌いです。仲良くしてくれても、してくれなくても、いいよ。わたしの力だけじゃどうにもできませんので。無意味なこころです」
金髪に金色の瞳をした女の子、未白こころ。
明らかにクラスメイトの中でも群を抜いた美少女に見えた。
未白こころは、自己紹介を終えて、俺の隣の席に戻ってくる。
こちらを気にする様子はない。
にこにこ、黒板の方を見ている。
『窓際の最後列から自己紹介、始めちゃおー☆』
と茶目っ気を出していた三浦先生も青ざめて、生徒の個性の強さに口をパクパクさせている。
やがて、俺こと堂島の番が回ってきた。
俺は、さっきまで使っていたスタイラスペンをタブレットの上に装着して、席を立つ。
タブレットには、今までの自己紹介で語られた、クラスメイトたちの長所や短所、好きなもの、嫌いなものが書き込まれていた。
いちいち、自己紹介の内容をメモしていたのだ、俺は。
「はじめまして、堂島です」
俺はハキハキと言葉を発していく。
「友達はいた方がいいと思いますが、自分は不器用なので、こればかりは自分の力じゃどうにもできません。
どこからが友達なのか、明確な線引きもできません。
はっきり言うと、俺は人間関係の構築が不得意です。
得意な教科もありません。
難易度の高い問題は、運がよくないと解けないから。
皆様が正解できる問題は、僕自身正解することもありますし、ミスすることもあります。
不勉強だった場合、解けない場合だってあります。
自分は、自信を持って、この教科なら任せてください、とはとてもじゃないけど言えない。
好きな食べ物。嫌いな食べ物。味で評価することは自分にはできない。一日に必要な栄養素、集中するためのエネルギー。ビタミン、鉄分、タンパク質、水分、その辺りが十分に取れたら大体いい感じです。
これが俺の自己紹介。
今後、迷惑もかけるでしょう。ですがこのような生き方しかできないのです。
以上、よろしくお願いします……」
「「「………………」」」
恐らくクラスメイトたち全員が「「「めんどくさー……」」」と総ツッコミを入れたい気持ちだろう。
だが、これがあるがままの自分なのだ。すまないと思っている。
ほら、担任の三浦先生なんて、白目を剥いている。
後でフォローを入れたいが、ますます彼女に迷惑をかけるだろうと思ったので、我慢する。
自分の席に着くと、先ほどまで黒板の方を向いてニコニコしていた未白こころが、こちらを見てにっこりしていた。
「今の挨拶、超面白かった」
「そうか」
(((未白こころが喋ったー⁉︎⁉︎⁉︎)))
クラスメイトたちの心境がこちらまで届いてきそうだった。
だって彼女、この教室に入ってから、さっきの自己紹介以外、一言も声を発していなかったからだ。目も笑っていないし。
その彼女が、恐らくは自分と同じくらい偏屈な隣席の少年に話しかけた。ほぼほぼ、事件だ。
俺たちでコンビを組ませたら、なかなかのちょいワルに仕上がりそうである。
俺は正直に話す。
「君に好かれようとして話したわけじゃない」
「分かってるよ。だから、超面白かった」
「まだ、クラスメイトたちの自己紹介が残っている。私語は慎もう」
「ん」
未白こころは再び黒板の方を向いて、にっこりした。
俺も同じ方向を見る。
変人×2に見られて、ふらふらと次に自己紹介する女子生徒は卒倒しかけていた。申し訳ない。
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