34日目(5/17)蛍

 5月17日。今日は珍しく雨が降らなかった。


 今日も路上教習。少しずつ慣れてきたのか、会話をする余裕も、運転を楽しむ余裕も出てきた。お昼過ぎまで車に乗って、今日も送りが4時だと言われたので、母に迎えに来てもらう。


「お腹空いたでしょ」と持ってきてくれた肉みそおにぎりを食べたり、帰路の途中、寄り道をして海岸でまったりしたり、バイト先へ色々ごたごたしてしまった非礼を詫びたりしつつ、のんびり帰る。


 帰ったら縁側で祖母がらっきょうを剥いていた。「ただいま」を言いに縁側へ出て、10分ほど喋っていたら、その間に2カ所蚊に刺された。久々の雨上がりで、今日は蚊が多いみたいだ。


 おやつを食べ、小説を書く。相変わらずプロットの通りには進まないが、キャラが生きている証拠かもしれない。と思いつつ続きを書いている。その過程で今更、Mrs. GREEN APPLEのよさに気付く。


 ふんふんと気分よく書いていたら、母が部屋に入ってきて、「今日、蛍見に行くよ」と言われた。チビたちには、目的地につくまで内緒にするという。

 そんなこんなで、チビたちは超特急で勉強を終わらせ、お風呂に入り、おじさんの帰りを待って、出発。久々の五月晴れの空は、山肌の向こうに見える夕暮れが、すごくきれいだった。日が沈みはじめた頃特有の、ピンクのようなオレンジのような淡い空の色が、私は好きだ。

 チビたちはハイテンション。「お出かけ?」「どこ行くの?」と質問が止まらないが、全部「ないしょ」で答える。「いいものを見に行くんだよ」と言うと、「星?」

「かぶとむし?」とやっぱり質問が返ってくる。

 目的地の渓流につく頃には、日が沈んで暗くなっていた。山道をぐねぐね登ったり下ったりした先。「ひかりの郷」と呼ばれる場所が、ちょうどこの時期、蛍の名所らしい。

「えー、何見るの?」としつこいチビたち。

「光るものだよ」

 そろそろいいだろう、と教えてあげると、妹がすぐにピンときたようだ。

「ホタルだ!」

「正解っ」

 よくわかったね、と頭を撫でてやる。

 真っ暗な川岸。細くてきれいな流れの、向こう岸の茂みの中に、ほんのり光る点がひとつ、ふたつ。外が本格的に暗くなるにしたがって、見える光の数は増えていく。

 生で蛍を見たのは、小学校低学年ぶりだった。生き物の神秘を感じながら、小一時間、蛍のきらめく様を眺めていた。川のせせらぎの音と、虫の声と、瞬きながらきらめく、黄緑色の光。「美しい」という月並みなことしか言えないくらい、きれいだった。

 ただ、水辺だからやっぱり蚊が多い。長袖長ズボンだし、肌が露出しているところにはくまなく虫よけをしてきたし、対策は万全。

 と思いきや、なぜか膝と肘が蚊にさされた。服に覆われていたはずなのに。 

 なんで?


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