ビターミルク

蝶衣

第1話 破壊

女性に対する甘い幻想を抱く幸せな男たちに一つアドバイスをしよう。

女というのは子宮の奥に眠っていた本能が目覚めた時、とてつもなく大胆に、また残酷になる生き物だ。浮気を繰り返す男や、ギャンブルで借金の山を作っても人の良い笑顔をつくり妻に罪滅ぼしをしつつ隙をみてパチンコ屋に足繁く通い続ける夫、世間ではクズと称されるがそんな人間は可愛いものだ。私が女の真の恐ろしさを教えてあげる。女は血を乳を体内から放出し、そして股の間から生命を生み出す。そうやって命を削って生命を生み出す生き物だから怖いものなど何もないのだ。



ぼんやりとそんな事を考えた。「なかなかいいフレーズだな。整理すれば割といい詩になるかも」冴子は荒ぶる夫の重み背中に感じ退屈な時間を過ごしていた。ああつまらない‥携帯でもいじりたい気分だった。夫は正面からよりも背後を征服するのが好きなタイプだ。冴子はこの体勢を以前は好まなかったが

夫に対して関心を持てなくなって以降は、顔をみなくてすむので案外助かっていた。

「そういえば声出してないな‥退屈してるの

分かってしまうかしら」女というのは抱かれている男に関心が持てないと悲しいくらい快感が遠のき、意識が冴えて冷めた気持ちが非常に強くなるものだ。荒くなる夫の鼻息が

おのれの肌にかかる事すらいらいらした。

へたくそ‥。冴子は大腿部に力を入れて膣を思い切り締めた。そうして早く果ててくれる事を期待していた。不毛な時間。腰部に鈍い痛みをおぼえはじめるほど長い時間を経て夫はようやく果ててくれた。体液を冴子の白い肌に散らして。「本当に嫌」だらしなく布団に寝転び、妻の身体を汚しておきながらティッシュペーパーすらよこさない品のない男。冴子は全身にけだるさを感じながら起き上がり浴室に向かう。シャワーで全身を念入りに流す。

一滴たりとも夫の身体から放たれたあらゆる液体を残したくはなかった。やがて乳ににわかな張りをおぼえた。「時間か」冴子が気づくのを待ちわびていたように琥太郎が泣いた。身体をさっさと拭いてローブを羽織ると

ガーガーと大きないびきをかいて寝ている夫を階下に残して冴子は階段をあがった。扉を開けると琥太郎が小さな体をのけぞらせて泣いていた。冴子は慌てて乳を出し琥太郎に含ませた。いくらあの人の要求に応えるためとはいえ、こんなに小さな赤ん坊を暗い部屋に1人にしてしまった‥。子どもに配慮して階下の部屋に誘うというせめてもの気遣いはみせたが、そもそも子どもの世話とパート勤務で

睡眠時間や体力を削られて疲れ果てている私を求める事自体どうかしている。

乳を吸う琥太郎の顔にふと瀬戸の顔を重ね合わせていた。

「あの人がこうして私の乳を貪ってくれたら

どんなにいいかしら」飲ませたい‥我知らずそんな事を呟いていた。変態?いや違う、

おのれの本能にとことん貪欲なだけ。平凡な日常はもはや壊されて始めてしまったのかもしれない。知らず知らず。おそれを知らない私の手で

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