第5話 出会い⑤
「やめろって!」
リュウはすばやく男の足を払った。バランスを崩して、落ちてきた椅子に頭をぶつけ男の動きが鈍くなった。男の右腕を取り、リュウは素早くひねりあげた。
男を床にねじ伏せると呆然としているカウンター内の店員達に顔を向けた。
「あんたら、警察と救急車呼んで。早く!」
隣の列のカウンターにいた店員は事務室をチラチラ見て電話をかけるのをためらっていた。
しかし男にからまれていた方の店員の女の子は涙声で返事をした。震える指先でスマホを操りどうにか電話をかけた。
ものの5分程で近くの交番から警官が数名とパトカー、救急車がやって来た。怪我をした子供と母親が救急車に乗り込んだ。リュウが取り押さえた男は二人の警官に脇を抱えられ悪態をつきながらパトカーに乗せられた。
一人の年嵩の警官が店長に話を聞きたいとカウンターにいた店員に声をかけた。
「ちょっといいですか?店長さんを呼んで下さい。何があったのか教えてもらえます?」
呼び出されて、奥からこそこそ店長が出てきた。
「店長さん、経緯を聞かせてもらえますか?」
「いやあ、私は奥の事務室で仕事をしてたので全く気がつかなかったんですよ。」
そう言うと、店長はカウンターで男の相手をしていた若い女の子の店員に手招きした。
「この子が応対してましたので、この子から聞いてください。でも、誰も呼びに来なかったし、事務室には聞こえなかったし、大したことなかったと思いますよ。」
「救急車に怪我した子供が乗せられてるのに、大したことないはないでしょ。」
「まあまあ、お巡りさん、続きはこの子が話します。君、ちゃんと話すように。」
警官はチラッと若い女の子の店員を見た。
「この子、未成年でしょ。店長さんから話聞きたいんですけどね。」
すると店長は大袈裟に手を振った。
「いえいえ、若く見えますけど、この子二十歳過ぎてます。専門学校生ですわ。なあ、棚橋さん?ちゃんと話ぐらいできるやんな?」
店長は店員の方をキッとにらんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます