第4話 出会い④
「おっちゃん、もうそのへんで勘弁したってや。この子、困ってるやんか。」
リュウの声に男は振り向いた。
「なんや、お前。関係ないやろ、黙っとれ!」
男はリュウの肩を突き飛ばそうとした。だが直前にその手をリュウに掴まれた。
「それが関係無いことないねんなあ。後ろ、見てや。おっちゃんがそこに陣取ってるからみんな注文出来んで、待ちくたびれてるねん。」
掴んだ男の手を離すとリュウはニッコリと営業スマイルで微笑んだ。
「おっちゃんも納得出来んやろけど、ここはおさめてくれへん?コーヒーにポテトもつけてご馳走する。頼むわ。」
リュウは右手で小さく拝むようなポーズを取った。
リュウの言葉にあらためて男は後ろを見た。隣のカウンターに長い列が出来ている。客達はみんな迷惑そうにチラチラと男を見ている。一瞬顔をしかめた男はリュウが言い終わるや否や、カウンターに置かれた自分のコーヒーをリュウに投げつけた。
ビチャ!
間一髪、リュウはとっさに持っていた雑誌を顔の前に出した。男の投げつけたコーヒーは見事に雑誌に跳ね返されて男の顔はコーヒーまみれ。黒い滴をぼつぼつとしたたせらた。
「あぶねえな。落ち着けよ。」
リュウは雑誌を振って、表紙についたコーヒーの雫を床に払い落とした。
「なにするんじゃ、このクソガキが!」
怒りに燃えて目を血走らせた男。憤怒のあまり大きく顔を歪めて、リュウを睨みつけた。
「舐めやがって、許さねえ!」
その場で触れたものを男は手当たり次第、リュウに向けて投げ始めた。周りの客もたまらず男から距離を取ろうと下がり始めた。
その時、男が観葉植物の鉢を掴んだ。男の手が滑り、リュウのいる方向から離れた床に鉢が叩きつけられた。鉢の割れたかけらがそばにいた幼い子供の頭を切った。
ギャー!
子供の悲鳴。
母親は子供の頭からながれ出る血を見て叫ぶ。泣き叫ぶ子供の声に男はますます目を血走らせた。
「うるせー!」
怪我をした子供と母親に投げつけようと男は椅子を振り上げた。それを見た母親が子供を庇って男に背を向けた。母親の目はキツく閉じられ、恐ろしさに震えている。
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