億り人に僕はなる! ある日上がる株が事前にわかるようになった僕は彼女も出来て億万長者になります。僕と反対のことをした人が借金だらけになってますがそんなこと知りません。

気まぐれ

第1話 目覚め 

 僕は東証プライムに上場している超一流企業に勤めるサラリーマン、佐久間さくまれい


 勤めているのはカスミホールディングスといって、コングロマリット企業だ。

 建設、製薬、金融などなんでもこいだが、もとは(有)カスミ自動車から始まり、現会長が一代で築き上げた世界に冠たる企業だ。

 時価総額は200兆円を超える。


 こういうと何だか僕がエリートみたいだが、そういうわけではない。


 


◇◇◇




 僕は小さい頃から数字の羅列を見るのが好きな子供だった。


 九州の片田舎で生まれ育ち、なんとかFラン大学に行き、そこから関東郊外のカスミ自動車の下請け会社に経理担当で採用された。

 大学生の時に二人ほど付き合ったがそれ以降彼女なし、なんとなく生活をしていたが、就職してから一年もしないうちにカスミホールディングスの本社に引き抜かれる。


 本社の経理部門が何人か退職したため、一時的に補充要員として連れてこられたのだ。


 一年くらいと聞いていたが、代わりが採用されないまま時が経ち、そのまま居てくれ、と言われたので結局本社採用となった。


 お給料は上がったが、都会に住まないといけなくなったので、家賃も上がった。

 1DKなのにお家賃9万。

 これでも安い方らしい。

 都会って怖い。

 



◇◇◇



「次は、中野〜、中野〜」


 あいも変わらず満員電車で出勤だ。

 近頃流行りのテレワークで緩和されるだろうとか期待してたけど、今のところそうはなってないみたいだ。




「おはようございます」


 本社フロアの6階経理部に8時ごろ出勤して、今日もエクセルや会計ソフト、見積書、請求書と睨めっこする日が始まる。



「よう、佐久間、今日も飲みに行くぞ。お前の金で」


日下田ひげた先輩、まだ朝っすよ」


「やかましい。お前が薦めた銘柄あっただろ、OBK工業。あれ買ったら急落しやがってな。お前のせいだから穴埋めしろ」


「僕薦めたりなんかしてませんよ。先輩が『今なんか注目してるのがあるか』って聞いたから『新型のワイヤレスイヤホンを出すらしいOBKをチェックする予定です』って答えただけです。買えなんて言ってないっすよ」


「ああん? お前がその会社の名前出したから俺が損こいたのに変わりねーだろ。今日もお前の奢りな」


 ったく、後輩にたかるとか恥ずかしくないんだろうか。

 でもこの日下田先輩、ラガーマンだったのでガタイがよくて勢いに押されてしまうのだ。


 僕はといえば部活の名の下でひたすらナンバープレイスをやってたから、物理的に勝てるはずない。



◇◇◇



 先輩のどうでもいい愚痴に付き合って部屋に帰ってきたのは終電の一本前だった。

 ていうか、仕事教えてくれないんだよね。

 エクセルの使い方もあまりわかってないし。

 酒の席だと出世するためにはどうするかと延々語っていたが、参考になるとは思えない。



 部屋に帰ってきて、日課の株価チェックと記録だ。

 数字の羅列が好きな僕は、20歳になってからすぐに証券口座を開いていた。

 ただ、あんまりお金がないのであまり取引自体したことはない。


 いつか買えたらいいなあ、とか、なんとなく興味を持った会社の株価をチェックして場帳に書き込んでいく。

 日毎に数字の列が増えていくのを見て楽しんでいるのだ。



 そして、今日も10個くらいウォッチしている会社の株価を見て記録する。

 

 今日はいつもと違うことが起きた。


 東証グロースのゲーム会社、マクシームエンターテイメントの今日の株価を紙に書き込んだ瞬間、今日の数字が光った気がした。

 気のせいかな、と思ってもう一度その数字を見てみる。

 10日分くらい遡って今日の数字まで辿り着くと、やはり今日の数字が光って見える。


 その数字を集中してじっと見てみると、その株価が上がるイメージが脳裏に浮かんできた。



 ブンブン、と頭を横に振る。

 僕は疲れてとうとう妄想を見始めたのだろうか。

 明日の株価が分かるわけない。

 そんな奴いたら億万長者だ。

 


 だが、僕の頭に飛来した株価が上がるイメージがどうしてもまとわりつく。

 ええい、と思ってマクシームエンターテイメントの買いを入れる。

 今日のマクシームエンターテイメントの株価は521円だった。

 今証券口座には100万円入っている。

 全額買うのは怖いので、おそるおそる500株だけ成り行きで注文を出しておく。


 そして、この日はそのまま寝た。

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