第3話「再会」
3話「再会」
「お迎え上がりました、アリッサお嬢様」
そう言って彼は優雅にほほ笑み、塔に閉じ込められていた私に手を差し伸べた。
金色サラサラした髪、サファイアブルーの瞳、目鼻立ちの整った顔……あの頃より身長が伸びて、体格がしっかりしたけど、間違いない! 彼はライだ!
「ライ……!」
斬られて役目を果たさなくなった鉄の柵を乗り越え、ライが私の元に近づいてくる。
私はライの胸に飛び込んだ。
「ライがどうしてここに?
冒険者になって世界中を旅しているんじゃなかったの?」
「なりましたよ、Sランク冒険者に」
「Sランク冒険者?! 凄い!」
Sランク冒険者になるには十年も二十年もかかるって聞いたことがあるわ。
それをたった四年でSランク冒険者になるなんて素敵ね! 素晴らしいわ!
「Sランク冒険者になってエーベルト侯爵家にお嬢様を迎えに行ったのですが、お嬢様は侯爵家にはいらっしゃいませんでした」
「私を迎えに来てくれたの?
なんで?」
「お忘れですかお嬢様?
Sランク冒険者になったら結婚してくださる約束でしたよね?」
「えっ……? そんな約束したかな?」
「しました!
お嬢様と結婚することを心の支えに、辛い旅にも耐えてきました!
なのにわたくしのいない間に王子と婚約していたなんて……あんまりです!」
「ごめんなさい。
王命だから断れなかったの……」
私だって好きでわがままで癇癪持ちの第一王子と婚約したわけじゃない。
三年前母が亡くなり、一カ月もせずに父が再婚した。
父が母と結婚する前から付き合っていたという女性(世間では愛人という)と、父の間には娘がいた。
私は継母と腹違いの妹と同居することになった。
それからは大変だった。
なんでも私のものを奪っていく妹。
私の顔を見るたびに嫌味を言ってくる継母。
私をいないもののように扱う父。
極めつけは王命による第一王子のフンベアト・ヨナス殿下との婚約。
私とフンベアト殿下との婚約が取り決められた日は散々だった。
フンベアト殿下には初対面で、「銀髪に紫の目のガリガリ女が俺の婚約者? 最悪! 全然好みじゃない! 他のと取り替えろ!」と言われ。
帰宅すれば妹に「なんでお姉様が王子様と婚約するのよ! ムカつくわ!」と罵られ、母の形見を壊された。
継母には「お前のような娘が殿下の婚約者に選ばれるなんて! 生意気よ!」と言われ頭から水をかけられた。
そんなわけで、継母と妹は私とフンベアト殿下の婚約を壊すのに躍起になった。
月に一度第一王子が婚約者とのお茶会のために、エーベルト侯爵家に訪ねて来るのだが。
その日は決まって私は自室に閉じ込められた。
そして、私の代わりに妹のミアがフンベアト殿下の相手をするのだ。
そんなことが何度も繰り返され、フンベアト殿下とミアが仲良くなるのに時間はかからなかった。
フンベアト殿下はミアがついた「お姉様に虐められるの……!」という嘘を信じ、私に辛く当たるようになった。
フンベアト殿下から、
「妹をいじめるなんてお前は鬼だ! 悪魔だ!」
と罵倒されたことは一度や二度ではない。
そして今日、卒業パーティで皆の前で断罪され、婚約破棄されたのだ。
「ここに来る途中、エーベルト侯爵と第一王子を捕まえ半殺しにして……いえ、お二人に丁重に尋ねたら、今までのいきさつを話してくださいました」
ライったら、お父様とフンベアト殿下に何したの?
「ついでに聞いてもいないのに、お嬢様の妹を名乗るミアとかいう女が、色んなことを話してくれました」
ミアが私のことをライに伝えたの?
ろくなことを話してなさそう。
「ミアはライに何を言ったのかしら?
私に虐められていたとか、私に物を盗まれたとか、私に物を壊されたとか……そんなことかしら?」
「そのとおりです。
よくお分かりになりましたねお嬢様」
「ミアは挨拶代わりに私を貶める噂を流すのが好きなのよ」
『はじめましてエーベルト侯爵家の次女ミアです。
あたしお姉様にいじられているの』
ミアが初対面の人にそう挨拶したとき、びっくりして私は声を出せなかったわ。
「ライも私が妹を虐めていたって思ってる?」
☆☆☆☆☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます