第十四話 ザ・ナッツ

 ピ~ヨピヨピヨ、ピ~ヨピヨピヨ、ピ~ヨピヨピヨ……。

 目覚まし時計が鳴っている。時刻は午前7時半。カーテンの向こうから朝日が射しこんでいる。簡素だが良質な薄緑色の壁紙で覆われた部屋は学生寮の一室だ。ベッドルームが2部屋、リビングルームが1部屋の狭い二人部屋の寮だった。

 部屋の主はその味気ないベッドルームをラッパーのポスターで埋め尽くし、机の上にはCDやパソコン、ヘッドホン、スマートフォンなどの電子機器を乱雑に置きっぱなしにしていた。

 布団を頭まですっぽり被った主は全く起きる気配がない。お菓子メーカーのマスコットキャラクターのヒヨコの目覚まし時計が場違いに間の抜けた電子音を鳴らし続けていた。

 キッチンではダークブラウンのストレートヘアを綺麗に整えた男子が朝食のパンケーキを作っていた。日焼けで白い頬に少し赤みを帯びている。真っ白いワイシャツに紺色のベストを着て、その上から”Revolta Academy”と書かれたエンブレムが縫いつけられたダークグレーの制服を着ている。

「ピート、朝食ができたぞ」

 男子はヒヨコの鳴き声が鳴り響いている部屋に向かって声をかける。狭いので少し大きな声を出せばキッチンからでも届く。

「ピート、早く起きろ」

 男子は何度も呼びかけるが一切起きてくる気配がないので、フライパンをシンクに置き、ピートのベッドルームに向かった。

「起きてる……」

 ピートが布団から片腕を出して手を振る。チョコレート色の艶やかな腕だった。

「今日は地理の小テストがあるんだろ。遅刻したら大変だぞ」

「大丈夫だよ、ウォルトの弟でバディなんだぜ、俺は」

「それでも成績が悪かったら卒業はできない。中学校もまともに行ってないのにリヴォルタにまで見放されたら学歴なしなんだぞ、君は」

「そしたらフレイムシティに戻ってラッパーに弟子入りでもしようかな」

「バカな事言ってないで早く起きろ。フルーツは何がいい?」

「何がある?」

「リンゴとオレンジとバナナ」

「オレンジ」

 ウォルトはキッチンに戻って冷蔵庫から昨日買ったばかりのオレンジを取り出した。食べやすいように8等分に切る。

 ウォルトが食べ始めようとする直前にピートもベッドルームから出てきて食卓に着いた。寝起きのピートの髪はボサボサだ。ツーブロックに刈られて金髪に染められている。地毛は癖のない黒髪で、染めてもさして痛まず、軽くブラシで整えるだけでまとまるいい髪をしていた。

 ウォルトとピートは向かい合って座った。2人は同じグレイグリーンの色をした瞳を見つめ合う。ウォルトとピートは肌の色も性格も幼少期を過ごした環境も異なるが、瞳の色だけが2人が同じ父親から生まれた兄弟だと示していた。

「小テストの確認をするぞ」

「ええ? 今起きたばっかりなんだけど」

 ウォルトが食事をしながらピートに話しかける。ピートは露骨に嫌そうな顔をするが、2人の力関係では逆らうことができない。

「いいからやるぞ。今日の範囲はハプサル州の主要都市とウェイストランドの特別措置についてだ。まずはハプサル州のスペルを言ってみろ」

 ピートはオレンジにかぶりつきながらゆっくり答える。

「えっと……。H、Y、P、S、A、L」

「違うな」

「マジで?」

「H、A、P、S、U、Lだ。Hapsul――ハプサルだ」

 ウォルトは丁寧に発音しながらピートに覚えさせようとする。

「でもハプサル州の人、ヒャプサルって言うよな?」

「ハプサルなまりが強い人はな。母音が軟母音になりやすいんだ。正しくはハプサルだ。それに、AをYにしただけじゃヒャとは読めない」

「へえ」

「次。ハプサル州の州都はどこか?」

「ミヅクシティだろ?」

 ピートは得意げに答えたが、ウォルトは間髪入れずに否定した。

「違う。それはここだ」

「は? ここ州都じゃないのかよ?」

 ウォルトはナイフとフォークでパンケーキを綺麗に切っては口に運びながら説明を始めた。

「ミヅクシティはハプサル州最大の商業都市だ。30年前、事故で研究所を失ったリヴォルタに広大な土地を提供したことから発展が始まった。それを機にベンチャー企業のオフィス街として注目され、主にIT企業がここに本社を置くようになった。国内外の多くの大手企業がミヅクシティのIT企業にIT関連事業を任せている。ミヅクシティの北端がウェイストランドと接していて、そこにリヴォルタの新しい拠点がある。僕らが通うリヴォルタの高校やその先の理科大学、主要な研究施設の全てがここに集められている。リヴォルタは国内外における化学製品のシェアの大半を占めている。IT企業とリヴォルタ、この2つの産業によってミヅクシティは発展し、ハプサル州の財政を支えているんだ。だけど、州都はカルサットシティだ。300年以上の歴史があり、郊外に伝統建築の町並みが残る古都だ。旅行客は建て直されたばかりの州議会議事堂を見てから、車で30分の距離の古都エリアで伝統の刺繍が入った服を買うのが恒例だ。観光のカルサットシティと産業のミヅクシティがハプサル州の主要都市というわけだ」

「待って、待って。そんなにいっぺんに話されても覚えられねえよ」

「昨日も同じ事を繰り返し説明したのに何も覚えてないのか?」

「昨日はウェイストランドの異常気象についての話じゃなかったか?」

「それは一昨日説明した」

「そうだったか?」

「ピート……」

 呆れた顔のウォルトはため息をつきながらナイフとフォークを置いた。

「頼むからちゃんと勉強してくれよ。君はリヴォルタのCOOのイーデルステインさんのご好意で義務教育をすっ飛ばして入学を許可されているんだ。1年生の頃は学校生活に慣れるまで我慢しようと思っていたけど、もう2年生だ。素行も悪いし学力の成績も悪過ぎる。僕がかばってあげるにしても限度というものがあるぞ」

「んなこと言ったってよ……」

 ピートは席を立って洗面所へと行ってしまった。残された皿には綺麗に身の部分を食べ尽くされたオレンジの皮とパンケーキの切りくずだけが残っている。どれだけ厳しく当たられてもピートは食事を絶対に残さない男だった。

 身支度を済ませるまで2人は無言を貫いた。それでも2人はほぼ同時に出かけられる状態になり、2人揃って家を出る。


*     *     *


 2人はリヴォルタの敷地内にある学生寮から徒歩10分のリヴォルタアカデミー高校に通学している。ウォルトは他の生徒と同じカリキュラムを履修しているが、ピートは彼の習熟度合いに合わせた特別カリキュラムを受けていた。それにはピートの生い立ちが関係していた。

 その日の最後の授業の終了のチャイムが鳴ると、2人は別々の教室にいながらほぼ同時に席を立つ。ピートが先に廊下にあるロッカーに到着しテキストを投げ入れる。数秒遅れてウォルトがテキストを自分のロッカーに入れてきちんとダイアル式の鍵を閉め、ついでにピートのロッカーの鍵も閉める。

「ザ・ナッツ! この前貸したDJヒサギのサイン入りCD返せよ!」

 廊下を颯爽と走るピートとウォルトの目の前に大きめのタンクトップに短パンを履いた黒人の男子が立ちはだかる。

「悪い! また今度な!」

 ピートとウォルトは左右に分かれてバスケ選手のように軽やかにその男子の横をすり抜けて行ってしまう。男子は振り返って叫ぶ。

「いい加減にしろ!」

「悪いな、トビー、次は返すから!」

 ウォルトが手をひらひらと振る。トビーと呼ばれたタンクトップの男子は憤慨しつつも、それ以上何も言えない。

 ピートとウォルトは跳ねるように軽やかに猛スピードで廊下を突っ切り出口を目指す。その間にどこからか飛んできたバスケットボールをピートがキャッチしてウォルトと数回パス回しをしてから相手に投げ返し、女子に付きまとうラグビー部の男子達を蹴散らして後ろ向きに走りながら悪態をつく。大きな荷物を荷台で運んでいた女子にぶつかって荷物を散乱させた時はさすがに荷台に積み直すのを手伝った。2人を見かけた生徒達は口々に2人をザ・ナッツと呼ぶのだった。

 ザ・ナッツ――そう呼ばれているのには理由があった。2人の苗字はナットという。ウォルト・ナット” Walt Nut”とピート・ナット”Peat Nut”だ。2人のファーストネームの最後のtを取るとくるみ”Walnut”とピーナッツ”Peanut”となる。それで2人合わせてザ・ナッツ”The Nuts”と呼ばれているのだ。

 2人はこのあだ名を気に入っていた。ナットという苗字はウォルトとピートが深い絆で結ばれていることの証だった。そのナットという苗字で2人を一括りにするあだ名をつけられたことを誇りに感じていた。たとえそれがいい意味ではなかったとしても、2人には関係なかった。

 外に出ると目の前の道に山岳用のオープンカーが止まっていて、運転席には大学生くらいの女子が座っていた。大きなべっ甲の丸眼鏡をかけ、ウェーブのかかった黒髪をベージュのヘアバンドで後ろにまとめている野暮ったい女子だった。

「リズ!」

 ピートが運転席の女子の名前を挨拶代わりに大声で呼ぶ。

「コピアガンは?」

ピートが車に飛び乗り、続いてウォルトもドアを開けて入ってくる。

「たまにはきちんと手続きしてコピアガン取りに行ってよね」

 リズはウォルトのコピアガンをガンホルダーごと後部座席に投げる。

「リズが取ってきてくれるんだからいいじゃないか」

「本当はダメなんだからね。適合者じゃない人がコピアガン持ち出すなんて。バレたら大問題だよ」

「でもバレないように持ってきてくれるじゃん」

「まったく……」

 リズが車を発射させる。ピートは腕を車外に投げ出してどっかり座り込んで風を受けている。ウォルトはガンホルダーを装着してからシートベルトを締めて行儀よく座っている。

「今日の任務は?」

「西南部の生態調査。いつものやつ」

 リズはリヴォルタ理科大の学生で、リヴォルタのインターンもしている。専門はコピアの安全運用の研究だ。コピアガンなど、コピアを使用するための装置の開発がメインのエンジニア志望だ。コピアガンナーだった父親を任務中に亡くしてからリズはいつかコピアで人が死ぬことがない世の中にしたいと願っていた。インターンでウェイストランドの動植物の生態調査を行っているのもその一環なのだ。

「俺らすっげえ暇なやつじゃん」

 ピートがぼやく。コピアガンナーでも研究者でもないピートにとっては退屈な仕事だった。

 ウォルトとピートの仕事内容はリズがウェイストランドで安全に調査を行えるように護衛することだった。獰猛な動物に襲われたり、道に迷ったり、交通事故を起こしたりした時に活躍する。特にウェイストランドの新種の動物はコピアガンでなければ対抗できないため、コピアガンナーの同行は義務付けられていた。ピートはウォルトの手伝いという名目で同行を命じられている。

「暇? アンタ、今、暇って言った? ちゃんと周囲を確認しなさいよ。いつどこから危ない動物が出てくるかわからないんだから」

「はいはい」

 車がウェイストランドの入場ゲートに到着する。荒野のど真ん中を南北に分ける高さ10メートルの鉄のフェンスの一部分が開閉できるゲートになっている。ゲート前には警備員の事務所があり、警備員にIDカードを見せスキャンしてもらわないと中には入れない。

3人はIDカードを警備員に見せる。

「こんにちは。リズ・マキリさん。ウォルト・ナットさん、ピート・ナットさん」

 警備員はIDカードをスキャンする。スキャンが完了するとゲートが自動で開く。

「お気をつけていってらっしゃい」

 後方から警備員が声をかける。それはウェイストランド入場ゲートの警備員が必ず言う言葉だった。ここから先が安全ではないことを毎回思い出してもらうためだった。

 ウェイストランドの荒れた大地に道と呼べるものはない。事故が起こる前は広大な農地が広がる自然豊かな土地だったが、今は見る影もない。ウェイストランド奪還紛争でバーク・ロック率いる反乱組織が突然変異種の発生を防ぐことを大義名分に畑だった場所を燃やしたり農薬を撒いたりして荒らし回ったからだった。ウェイストランド内に点在していた比較的大きな町も戦闘により廃墟と化した。30年近くたった今、反乱組織が阻止しようとしていた生態系の変化は止まらず、多くの新種の生物が確認されていた。

 舗装されていないゴツゴツとした荒野をリズが運転する車はガタゴト揺れながら走った。大きく分けて台地と盆地に分かれるウェイストランドには大体真ん中辺りに東西を分断する崖がある。南に行くにつれて崖は低く緩やかになり、車で登れる急な坂と同程度の傾斜になっている場所がある。そこへリズは向かっていた。

 その日は天気がよく、危険な動物が出てくる気配もなかった。念のため、ウォルトはコピアガンを構えて周囲を窺っていたが、何も見えない。

「ピート、地理の小テストはどうだった?」

「……あぁ? まずまずだな」

「返却はいつって言ってた?」

「もう返されたよ」

 ピートはリュックサックに押し込んだクシャクシャのテストを取り出した。ウォルトはテストを見た瞬間、絶句した。

「10点満点中2点!?」

 合っていたのはハプサル州のスペルを書く問題だけだった。

「ピート、アンタって本当にバカなんだ」

 リズも運転しながら話に入ってくる。

「うるせえよ! スペルは合ってるのに間違ってるって言われたんだよ」

「それは問題の答えが違うからだ。よく読め。ハプサル州の首都はミヅクシティじゃないって今朝言ったばっかりなのに、君ってやつは」

「あぁ、そうだった!」

「カルサットシティのカルサットは合ってるのにシティのCがSになってるし、一体どうなってるんだよ君の頭は!」

「カルサットシティってCとSが多すぎてややこしいんだよ!」

「ちゃんと勉強しろってば!」

「お前の話が長すぎて覚え切れねえんだよ!」

 オープンカーとはいえ後部座席で大声でケンカを始められるとリズにとっては不愉快だった。リズのイライラに気付かずウォルトとピートは怒鳴り合う。

「ちょっと、ケンカするなら下ろすよ?」

「やってみろよ、危ない目に遭うのはお前だぞ!」

 ピートはつい感情的になってリズにまで暴言を吐いてしまった。

「はあ?」

リズがバックミラー越しにピートを睨みつけた。ピートはさすがに言い過ぎたと感じ姿勢を正す。

「すみませんでした。ボス」

「よろしい」

 リズは再び運転に集中した。坂を上がって5分後には目的の地点に到達する。最近になって新種が確認されたサボテンのサンプル採取が今回の任務だった。

 様々な種類のサボテンがポツンポツンと間隔をあけて生えているエリアに突入し、リズは車を止めた。車を降りてウォルトは周囲に何かいないかコピアガンを構えてうろうろする。

「しっかしよ、俺らコピアに適合してない人間が入っても平気なんだから不思議だよな。新種のサボテンが生まれるような場所なのに」

「コピアの活性度が人間に危害を及ぼさないレベルまで下がったからね。まだコピアの活性度を数値化できなかった頃は調査隊は捨て身でウェイストランドに入っていたのよ。これもコピアの活性度を測れる機械ができたおかげ、つまり、私達エンジニアのおかげなのよ」

「リズはまだインターンじゃん」

「その機械を開発したのは私の父だよ」

 ピートはまた余計なことを言ったと自覚する。

「それにね、一時的に滞在するだけなら他の動物もさほど影響はないよ。この土地で生まれ、この土地の物を食べて生きてる動植物達はこの土地により適応するために進化を繰り返す」

 ピートは難しくなってくるリズの話を聞き流し、望遠鏡を覗き込んで遠くの地平線を見た。北は山脈に阻まれ、西は丘陵地帯が広がる何もない荒野が見えるだけのはずだった。

「ん?」

 ピートは何か異質な物が見えた気がしてゆっくりと動かしていた首を止めた。

 見慣れない服装の人物が2人、望遠鏡のレンズに映し出された。そのすぐ横には馬らしき動物もいる。

「ウォルト、リズ、ちょっと!」

「何? 忙しいんだけど」

「何かいたのか?」

 リズはサボテンの先を切り取って瓶に入れる作業を止めない。ウォルトは不審物を見かけたら対処しなければならないので自分の首にかかった望遠鏡を掴んでピートと同じ方向を見ようとする。

「女の子だよな!? アレ!!」

「女の子!?」

 ピートはウォルトの首と望遠鏡を掴んでグイッと動かして見せたい方に向けた。

「あ、いた……!?」

 ウォルトもピートが見ていたものを視認した。赤い髪の人間と帽子を被った人間だ。それと馬も1頭いる。遠すぎてそれ以上はよくわからない。向こうもこちらに気付いたのか動きが激しくなった。そして、次の瞬間辺りに黒煙が立ち昇り、彼女達の姿は見えなくなった。

「追うぞ、リズ! 車出して!」

 ウォルトはリズの肩をバンバンと叩いて腕を引っ張った。

「何言ってるのよ! 任務が優先よ!」

 リズは抵抗しようとしたが、ウォルトは引き下がらない。

「コピアガンナーだ! あの子、コピアガンを撃った!」

「嘘でしょ!?」

 リズは顔を上げてピートとウォルトが指さす方角を見た。真っ黒い煙が北西の方から立ち上り、入道雲のように高く膨れ上がっていた。

「あれがコピアガンの仕業なの?」

 リズは急いで車のエンジンをかけて黒煙に向かって走り出した。

「コピアの反応があった。あの子、おそらくレン・ミヤモトさんのコピアガンを持ってるんだ」

 コピアは適応した持ち主を選ぶとその人の性格に合わせて性質が変わる特徴があった。持ち主を乗り換えても多少は前の持ち主の性質を引き継ぐことがあり、だんだんと今の持ち主の性質に完全に切り変わっていく。

コピアガンナーは他人のコピアの性質を感じ取ることができる。コピアの性質で誰の撃ったコピアかわかるし、特徴や威力を見極めることもできる。ウォルトは先程、女子が撃ったコピアガンからレン・ミヤモトのコピアに似た性質を感じたのだ。

「紛失したミヤモトさんの形見の……」

 リズは深刻な表情で言った。半年近く前、ウェイストランドの西南部での任務中にコピアガンナーのレン・ミヤモトが亡くなった。遺体を回収した時にはコピアガンは見つからなかった。

「でも、どうする? 俺達だけでコピアガンを取り返せるのか?」

 ピートがウォルトに疑問を投げかける。

「いきなり身柄確保は難しいかもしれない。馬がいたからきっとバークヒルズの子達だ。バークヒルズに戻られたら手出しができない」

「じゃあ追いかけても無駄じゃないか?」

「いや、あの黒煙のコピアを少しでもいいから回収して調査に回したい。どんな子がミヤモトさんのコピアガンに適合したのかわかるかもしれないから」

「……撃ったってことは適合したってことなんだよな」

 ピートもいつになく深刻な声になる。

「そうだ。いつどのタイミングでコピアガンがミヤモトさんからあの子に主人を変えたのかわからない。サンプルが採取できたら何かしらわかるはずだ」

 5分と経たずに3人は女子達のいた場所に着いた。女子達はどこかに逃げた後だった。黒煙はほとんど消え、サンプルを採取できるほど残っていなかった。

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