奇跡の青い花

緑のキツネ

第1話 桜祭り

僕の街では1年に1回桜祭りが行われる。

それが今日の3月15日だ。


賢治けんじ、準備はできた?」


下の階からお母さんの声が響き渡った。

10時から始まる桜祭りは、毎年、夜遅くまで行われる。何をするかというと、午前は花見大会。屋台を回ったり、写真を撮ったりする。

午後からはみんなでこの街の山の奥にある

大きな神木しんぼくに挨拶しに行く。

そして、最後に花火大会が開かれる。

この町に住んでいる住民はこの祭りに参加する事が義務付けられている。本当は行きたくないけど…‥。まあ行くしかない。

つい5分前まで寝ていたので、まだ体が重く感じる。それでも、準備をしないと……。


ピロリン


スマホのLINEの着信音が聞こえた。

明美あけみからかなあ。

明美は僕の友達で、

いつも中学校に一緒に行っている。


9時30分に会場で待ってるからね


明美からだった。

まあ間に合うだろう。スマホの時計を確認した。そこには9時40分と表示されていた。


「え……。スマホの時計が壊れてるだけだよね」


恐る恐るもう1度LINEを確認すると、

その明美からのラインが来たのが9時20分だった。そうか。僕が起きる時におやすみモードを解除したからか。スマホにはおやすみモードという機能がある。

これは寝ている間は、着信が来ても音が鳴らないようになっている。それは朝起きて目覚ましを解除する事で、着信が来るようになる。

やばい……。まだ待ってるかもしれない。

僕は急いでクローゼットを開けた。

服は別に何でもいいよ。えっと……。


「賢治、入るよ」


お母さんが部屋に入ってきた。


「何だよ。今、急いでるんだけど……」


「これ、着るよ」


お母さんの手には袴があった。

何でこんな祭りに袴なんか着ていくの?

僕はこの祭りについてあまり分かっていなかった。去年も一昨年も僕は行っていない。

行く意味が無いと思っていた。

いつも仮病して逃れていた。

でも昨日、明美から


一緒に行こうよ


とLINEが来て、僕は咄嗟に


はい


と送っていた。

明美と出会った日からずっと気づいていた。

僕は明美の事が好きなんだと。

今日の花火大会で告白できたら良いなあ。

そんな風に考えていたのに……。

間に合わなければ、嫌われてしまうかもしれない。こんな忙しい時に袴なんて……。


「もう時間無いよ」


「賢治が起きるのが遅いんでしょ」


それから着付けに20分かかった。

始めたの袴。物凄い違和感しかなかった。


「じゃあ車で行くよ。お父さんはもう行ってるから」


「うん」


時計は10時を指していた。

もう怒っているかもしれない。





会場では凄い盛り上がりを見せていた。


「年に1度の桜祭り。張り切っていきましょー」


村長の合図と共にみんながビールやジュースを持った。


「乾杯!!」


グラス同士が当たる音が響いた。

この街の名前は桜街。

桜がどこにでも咲いているからそんな名前がついた。

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