のきさきさっき

「ぬあん!」

 鬱陶しさを払い抜けたかったものの、赤い古ぼけたポストに腕をぶつけた。鈍い鉄の音がする。

 悶絶してしゃがみ、唸る。

 しゃがんだ景色から地面を見る。

 雨が凄すぎる。といったような単調な感想しか出てこない。

 コンクリートに打ち付けられた雨粒たちは弾性衝突を繰り返す大量のスーパーボールのように雲という雲の玩具箱をひっくり返したように零れ落ちる。

 恨めしそうな視線で髪をかき上げて古いポストを見る。ずっしりとした赤い巨体は古ぼけたまま誤りもしない。

 ふーっ。とため息じみたものが体から抜け落ちる。

 その横で黒猫が退屈そうにあくびをしていた。

「何よ、お前も」

 猫もポストと同じように答えない。

 コンクリートに少し土が乗っていたが、そのまま後ろの木の壁に背を寄せて体育座りをしてみた。

 見上げた先には軒下、鳥の巣がある。

 それぞれが雨宿りをする中で、何となしに気持ちが溶けてただ、物思いに耽るようにして雨たちの軌跡を観察する。

 止む気がしないままに雨垂れる。水たまりに浮かぶ葉っぱは、あっち行ったりこっち行ったりで波面に操られていた。

 冷えてきたかもしれない。髪の隙間からつぅーっと水滴が降り、

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