絶体絶命の危機と少女セラ ゼン視点
俺達冒険者パーティ南の群狼は、南端の街サンドラの冒険者ギルドで商人のハンスの依頼を受けてジザール村へ荷運びの護衛をしていた。
その最中に大きなゴブリンの群れに襲撃される。
「不味いぜゼン。ゴブリン共に囲まれている」
口にしたのはカール
「ハンスさんとゴンザレスさんは俺の後ろに隠れてください! カールは遊撃してかき回せ! ダノンは荷物を守れ! リィナは近づいてくるゴブリンを狙っていけ」
「おぅ!」
「わかった!」
「うん」
指示はしたもののゴブリンの数があまりにも多く、手が回りきらない為に徐々に損害が出始める。
荷物を載せた馬車は襲撃され、荷を一部持ち去られ、四頭いた馬は一頭は奪われるといった感じだ。
「くそっ! こいつらどれだけいるんだよ。きりがねぇ」
数は減らしたが、まだ残りのゴブリンは三十以上はいるように見えた。
「泣き言言ってる前に倒すしかないだろ」
怒鳴りながらゴブリンの相手をしてる時にリィナの悲鳴が聞こえる。
「きゃああああ!」
遠くから、弓矢で攻撃するリィナが邪魔に感じたであろうゴブリンは、ターゲットをリィナに絞る。
リィナは腹部を刺され逃げようとしたところを斬られた。
それに気づいたダノンはリィナを庇いながらゴブリンと戦うが、数の多さと庇いながらの為に攻撃を避けきれずに腹部を刺される。
「うわあああああああああ!」
ダノンとリィナが負傷したことにより、俺達はいよいよ追い込まれる。
ゴブリンの数はまだ三十は残り、戦えるのは俺とカールだけ、しかも、商人二人を守りながらという状況。
この詰んだと言わざるを得ない絶体絶命の中で彼女は現れた。
「いけない! 急がないと! スズは周りを警戒してて」
その声と共にゴブリンの群れの中に少女は飛び込んでいく。
少女は銀髪褐色でスラっとしていて、如何にも普通の女の子といった風貌。
少女がゴブリンを倒し切ったのを確認した俺は、負傷したリィナとダノンの下へと急ぐ……
「おい! ダノン、リィナ気をしっかり持て!」
負傷した、ダノンとリィナにカールは声を掛けていた。
俺は怪我を負った二人を見る、二人の傷口は変色を始めている、恐らく毒が塗布されてたのだろう。
「ダメだカール! ダノンとリィナは怪我だけでなく傷口から見ても毒が……」
だが、治す手立てがない、こっちに来る時にポーションは全て破損してたと聞こえたからだ。
「くそっ……ポーションもないしどうしたら」
そんな時だった……
「私に任せて……」
「あんたはさっきの……」
先程の少女がダノンとリィナに回復魔法を施している?
「オールキュア! エリアヒール!」
「う……うん!?」
「……あれ?」
少女はダノンとリィナの毒を治療しただけでなく、二人が負った大きな傷まで治していた。
それにしても戦闘技術もさることながら、ここまで高度な回復魔法を使いこなすなんて、この子は本当に何者なんだろうか?
俺は感謝の言葉と共に疑問に思った事を聞いてみた。
「ありがとう。おかげでダノンとリィナが助かったぜ、俺はゼンって言うんだ。ダノン、リィナ、カールと一緒に冒険者をやってるもんだ。それにしてもゴブリンを倒す手際といい、回復魔法の腕といい、君は名うての冒険者か?」
「違うよ。ただの旅人で名前はセラそれと……あっ来た来た。この子が家族のスズ」
名前はどうやらセラというらしい、冒険者でここまで有能ならば無名な筈はないから旅人というのは事実なんだろう。
それにしても、この
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