二章 冒険者ギルド

ジザール村へ

 カンテミール侯爵家を追放されたセラは、南端の街サンドラから五日程東へ行った所にある、ジザール村へと向かっていた。

 セラがジザール村に向かうのにはいくつか理由があった。

 嫌な思い出ばかりのサンドラから離れたいのと、シャロとヨシュアの話でジザール村の話を耳にした際に、人が優しく環境的にも良い村だと聞いていたからだ。


 そんなジザール村への道中でセラは、ゴブリンの群れに襲われている商人の一団を見つける。

 護衛が数人いるようだが、護衛も数人負傷して商人たちを守り切れていない状態だった。


「いけない! 急がないと! スズは周りを警戒してて」


 セラは駆け出して商人達を襲っているゴブリンを両の手に持ったナイフで攻撃していく。


「大丈夫ですか?」

「だ、誰だかわかりませんが助かります」


 助けに入ったセラは次々とゴブリンを殺していく、セラの勢い凄まじく三十はいたであろうゴブリンの群れを、ものの数分もしない間に全滅させた。


「私はハンス、この度は危ない所を助けていただき大変ありがとうございます」

「無事なら良かったです」

「助けていただいたお礼をした――」

「――た、大変でございます。ハンス様! 護衛のダノンとリィナが負傷してます」

「慌てるな馬車にあるポーションを使え」

「そ、それが先程のゴブリンの襲撃でポーションが一本残らず割れてしまって……」

「一本もか?」

「……は、はい」

「なんてことだ……」


 その話を聞くとセラはダノンとリィナの下へと駆けて行く、二人は馬車の後ろ側辺りに寝かされていた。

 怪我を負ったダノンは腹部に二箇所の刺し傷が、リィナは腹部に一箇所の刺し傷と背中に大きな切り傷が二箇所あった。

 それだけではなく、二人の傷口は変色していた。

 これは恐らく武器に毒物が塗布されていたのだろう。


「おい! ダノン、リィナ気をしっかり持て!」

「ダメだカール! ダノンとリィナは怪我だけでなく傷口から見ても毒が……」

「くそっ……ポーションもないしどうしたら」

「私に任せて……」

「あんたはさっきの……」


 セラはダノンとリィナの下へ近づくと手をかざして魔法を使う。


「オールキュア! エリアヒール!」

「う……うん!?」

「……あれ?」


 セラの魔法によってダノンとリィナが受けた毒と怪我はあっという間に良くなっていった。


「ありがとう。おかげでダノンとリィナが助かったぜ、俺はゼンって言うんだ。ダノン、リィナ、カールと一緒に冒険者をやってるもんだ。それにしてもゴブリンを倒す手際といい、回復魔法の腕といい、君は名うての冒険者か?」

「違うよ。ただの旅人で名前はセラそれと……あっ来た来た。この子が家族のスズ」


 セラが自己紹介を終えた後に辺りを見回していると、小さな雀がセラの肩に止まる。


「……セラ様」


 ゼンとセラが自己紹介を終えたところを見計らって商人のハンスがセラに声を掛けてきた。


「あ、さっきの商人さん」

「セラ様。改めて先程のお礼を……この度は本当にありがとうございました。おかげで護衛の皆様と私共は命拾いしました」

「いいえ、気になさらないでください。無事なら良かったです」

「あの……それで助けてもらった上で図々しいお願いだと思うのですがセラ様もジザール村へ向かわれるご様子。もし、ご迷惑でなければジザール村まで護衛をお願いできませんか? 無論それ相応の報酬はお支払いします」

「うん。いいよ」

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