第2話 ナンパ成功か?

「は?」

静かな部屋に俺の声がやけに響いた。

いやだってそうなるだろ。

何がナンパしろだよ普通の人だったら(こいつ頭イカれてんのか?)なんて考えるレベルでしょ。


でも考えてみればこれもありなのかも知れない。可愛い女の子をナンパして彼女にすれば、椎名さんのことも忘れられるかもしれないし。


次の日俺は久しぶりに学校に行った。

でも椎名さんと同じクラスだから気まずいのは避けたい。

俺がそんなことを考えていると蓮がやってきた。


「お前まじでナンパする気?」

「いやお前が言い始めただろ。でもまぁ可愛い彼女ができれば何か変われるかもしれないし」

「ふーんそっか」

「聞いてきた割にはそっけない返事だな」


その日の放課後俺はようやく行動に移した。

道端であった可愛い子に片っ端から声をかけた。


がうまくいくはずもなく

「キモ」

「すみません急いでいるので」

「遠慮しておきます」

さまざまな理由で逃げられた。


なので俺は秘密兵器を使うことにした。

自分の魅力でナンパ成功させたかったが無理だったので仕方なく使おう。


秘密兵器、それは、「タヤ恋愛術、これを読めば君も恋愛マスター」という本だ。


たまたまネットで見かけただけだけどまさかこんなところで使えるとは、ちょっと胡散臭いけど。


俺は家に帰ると例の本を読みまくった。

大事なところをまとめると、とびっきりな美人がちょろかったりすることがある。

その分ナンパ失敗した時メンタルやられるがまぁこの本を信じよう。



次の日は土曜だったため人も多かった。

俺は再びナンパをはじめたが。

「えと、通報しますよ?」

「え、タタタタ(逃げた)」

「すみません急いでるので」


またもや失敗。

やっぱナンパってイケメンかどうかですべてが決まるかもしれないな。


というかナンパ慣れてくると「すみません急いでるので」が1番優しい断り方だと気づいたりする。


俺は諦めかけてベンチに腰を下ろしてそんなことを考えていた。

お茶でも買おうとして立ったその時、俺好みのめっちゃ美人な人を見つけた。


肩を過ぎた長い茶髪にくりっとした大きな目にサファイアのような青い瞳。整った顔にどこか幼さを感じる。艶がある肌からは年上だろうけれども俺よりも若いのではないかと考えさせられる。


もう帰ろうかと思ったがせめて最後のナンパにと俺は声をかけた。


「へ、へいそこのおねぇさん!」

「えと、私ですか?」

「そうだよそこの可愛い君だよ君、お茶でもしないか?」

タヤ恋愛術に書いてた通り無理してでも明るく喋った。

しかもめっちゃ痛いセリフ。普段喋らない口調なのでめっちゃぎごちない。


「か、可愛いなんて、えへへ」

「照れ姿も可愛いなおい」

これは本音だったし紛れもない事実だ。


俺はもうそんなに期待をしていなかったが。

「じゃ、じゃあちょっとだけなら」


来たああああああ俺のモテ期。

俺たちは近くにあったカフェにでも行ってお互い自己紹介を始めた。

「え、と、私は椎名舞って言います」

「俺は和樹良太でしゅ」


あぁぁまた噛んでしまった。なんで大事なところでいっつも噛むのだろう。


「ふふ、かわいいですね和樹さんは」

だがイケメンでもない俺なのに案外うけが良かった。椎名さん可愛いし神かよ。


そいえば雰囲気どことなく胡桃の方の椎名さんと似てるし苗字同じだから姉妹なのかな?

そんな疑問を一瞬持ったが—

でもそんな偶然ないでしょ。

すぐにこの考えを捨てた。


今はただ舞さんと話したい。


その後俺はもうタヤ恋愛術のことなんて忘れて彼女と会話に花を咲かせた。




この時の俺はまだ舞さんと胡桃が姉妹どころの関係でないと知る由もなかった。


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