天は二物と異物を与える〜天才系主人公(女)と問題児系主人公(男)は名門お金持ち学校の台風の目となるそうですよ?

モノクロウサギ

第1話 幼馴染(女)

 俺の幼馴染、朽木梓は凄い奴だ。


 文武両道、才色兼備、容姿端麗、天真爛漫など、装飾する言葉は数知れず。全国模試では一桁台に位置し、運動能力は各部活のエースと張り合う程。まるで漫画の中から飛び出してきたかのような完璧超人。


 欠点らしい欠点と言えば、口調が『〜っス』という妙に舎弟じみた口調である事と、能天気というか、率直に言ってアホな部分が多々あるという事ぐらい。


 そしてこの欠点というべき部分も、人からすれば梓の魅力に見えるようで、結局完璧超人という評価に落ち着く。


 そして当然の事ながら、梓は人気者だった。


 小学校ではクラス関係無く梓と遊びたがる者が続出し、中学校では学校の三分の一の男子が好意を抱いていたように思える。その割には、女子に嫌われているという事も無く、むしろ梓の間抜けっぷりに危機感を抱いて、団結して保護していた位だ。


 いやもう、幼馴染である俺がドン引きするぐらいの人気だったね。俺が梓に話しかけようとすると、周りにいた女子がガードするかの如く即座に梓の近くに集まるのだ。過保護か。


 まあ実際、梓の人当たりの良さに勘違いを起こし、犯罪一歩手前の行為を行った馬鹿も出たので、女子のガードはかなり有り難かったのだけど……その警戒対象に何故か俺も入っていた事だけは、未だに納得いかない。アイツはそんな対象に入らねえんだよなぁ。


 俺と梓は、本当に小さい頃からの付き合いだ。どうも俺達の両親四人も幼馴染だったらしく、その延長で俺と梓は兄妹のように育った。何というか、お互いがお互いの兄であり弟、姉であり妹なのだ。その為、よく誤解されるのだが、俺も梓も恋愛感情を抱く事は無い。


 っと、話がズレた。


 兎も角、朽木梓って奴は凄い優秀な奴なのだ。


 だからこそ、梓がこっそりと受験し、特待生として見事合格を果たした高校を教えられた時は、学校中が驚愕し、同時に納得もした。


 梓が受験した学校は、『私立帝櫻学園』。かつては華族、士族が通っていた日本でも屈指の伝統を持つ名門校にして、現在ではトップクラスのセレブ達が通う超お金持ち学校。将来日本を背負う立場にいる者達が就学する、正しく別世界の学校であった。


 尚、梓の家は上流階級ではなく、個人経営のケーキ屋である。それなのに帝櫻を受験したのである。理由を聞いてみたところ『あそこって特待生だと学費諸々が全額免除されるんスよ。家からも近いから、丁度いいかなって思ったっス。あ、後、帝櫻は制服がすっごい可愛いんスよ! ちょっと着てみたかったんっス!』だそうだ。相変わらずのアホっぷりである。


 とは言え、なんだかんだ優秀な梓の事だ。帝櫻でも上手くやっていくのではないだろうか。……やっていってくれる筈、である。


 ……微妙に不安なのは、アホ故に気付かず地雷を踏み抜く事が多々あるからか。いやまあ、空気を凍らせるような事を度々やらかすが、性質として梓は人気者だ。多分、大丈夫、だろう。


 まあいっか。何かあったら、俺がフォローすればいいや。


 ん? ああ、言い忘れてたけど、俺が通うのも梓と同じ帝櫻学園だったりする。

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