「性格良くて顔が普通の子と性格普通で顔がタイプの子どっちがいい?」「そんなの顔もタイプで性格も良い子に決まってる!」

XIS

俺と女神の出会い①

 この新波しんなみ高校には学校中満場一致でかわいいと言うほどの美少女がいる。その人の名前は同じクラスの弓波楓華ゆみなみふうか


 彼女と関わることのできる人こそ少ないが、関われた人から聞いた話だと優しくて、面白いという完璧ぶりだという。


 俺みたいな陰キャとは縁のない話なのだが、それでも気になるほど彼女には魅力があった。髪の艶、爪、肌など人が目にするとこは美容に疎い俺でも毎日手入れしていると分かるほどキレイだから。


 それにしても今日も今日とて彼女の周りには人が集まっている。何を話しているのだろうか。女子が多いところから推測するにやはり、なんの化粧品使ってるの?何食べたらそんなスタイル良く保てるの?なんてことばかりだろうが。


 普段スクールカースト下位にいる俺はもちろん人とはあまり関わらないためこれぐらいしか思いつかない。ってかそもそも女子という生き物について理解が深くない。


 「よー来栖くるす、死んでんな、今日も」


 「……お前もいつもと変わんないな」


 机に頬杖をつき、退屈さを全面に出していた俺に唯一の友人である倉木蒼汰くらきそうたが倒置法をこれでもかと使い話しかけてきた。こいつは俺と似たようなタイプだが、なぜかスクールカーストでは上位の存在という常識外れの男だ。


 俺、来栖湊くるすみなとがこの倉木と仲良くなれたのはただ、気が合うからという単純なものだった。


 「んで、何見てたんだよ」


 「女神に集まるスクールカースト上位のやつら」


 「あー、見てるだけでもお前にはダメージでかいんじゃないか?」


 「ふんっ!ぜーんぜん。ゼロだねゼロ」


 強がりではない。実際俺は恋愛などには興味がないからだ。それにスクールカースト上位なんて下手すればハブられるし最悪いじめにも発展するかもだからなおさら興味ない。


 してみたいとは思うが無理にしたいとは思わないし、よく恋愛はめんどくさいと聞くためそのような話に体を向けることはない。


 なにより俺は俺にとって完璧の人を見つけるまでは何もする気はない。


 それに俺は自分の趣味に時間を費やしたい派だ。そんな俺に恋愛なんてその時間を減らすだけのものでしかない、だからしない。


 決してできないからではない。しないだけだ。


 「お前は混ざんないのか?」


 「混ざってなにするんだよ。今行っても愛想笑いするだけだろ」


 「確かに。お前ならそうするな」


 倉木は自由人なので、好きなときに好きなやつとつるむ。それにスクールカースト上位陣の中でも付き合うやつをしっかり決めており、関わり方も自分なりに考えているという。


 だから倉木のことを好きなやつはとことん好きだが、嫌いなやつは嫌いという組分けがはっきりされている。嫌い陣営は少数のため、好き陣営に抗えないため文句もなにも言わず黙っている。


 「なぁ倉木、お前は弓波のことどう思う?」


 「何だよいきなり」


 「なんとなくだ」


 「んー、まぁ確かに完璧だけど、弓波がいないとスクールカースト上位に居られないんですってやつらに囲まれて可哀想とは思う」


 これまた毒舌なこと。思ったことははっきり言うため、たまにイラッとくることもあるが、今回は激しく同意していた。


 「お前の質問お前に返すわ、弓波のことどう思う」


 「お前と同じ理由で可哀想以外まじで何とも思わない」


 「まぁそうだろうと思ったよ」


 陰キャしてて困ることといえば学校行事が始まると立場的に雑用をたくさんさせられることとかだが、陽キャはクラスを盛り上げたり、人間関係を常に意識して生活しないといけないのでどちらかというと圧倒的に陰キャがいい。


 「そんじゃ次の授業の準備するわ」


 「おう」


 次は物理。一回の授業で一つは必ずと言っても過言ではないほど公式が出てくる嫌いな教科だ。嫌いなだけでそこまで点数を取れないわけではないが。


 倉木が自分の机に向かうと同時に弓波の周りにいた集団も各々手を振り戻っていった。弓波はというと心なしか疲れているような表情を見せていた。


 「あの立場は勘弁だな……」


 好きなことも言えないし、趣味も無理に合わせないといけなかったりするのはまじでごめんだ。いや、弓波にみんなが合わせているのだろうか……それはないな、あの顔だもんな。


 弓波を憐れむが結局俺には何もできないので思うだけにする。そうして一週間の終わりである金曜日の学校生活を終えた。


 ――家につき、ただいまと言うがおかえりは帰ってこない。そりゃ一人暮らしだから当たり前か。


 両親ともに海外出張という寂しい話しだが、別に寂しくはない。一人の時間が好きだし、何より趣味を好きなだけやり込めるからプラスしかない。


 俺の趣味、それは掃除だ。幼い頃から大きな実家で暮らしていた俺は二日に一回は掃除をしていたため、その時に掃除をする楽しさを知った。それからというもの潔癖症のように掃除に使える道具を買ったり編み出したりしてはすぐに汚れを探すようになった。


 そしてつい最近、無償で部屋の掃除をする活動を始めたのだ。それがなんと大好評となり休日はほとんどその時間に費やしている。


 シンプルに部屋の掃除から、お風呂掃除やトイレ掃除など家の中を隅々まで清掃する。感謝されたときの嬉しさや達成感は俺のモチベーションアップに繋がるため、この活動を始めて苦を感じたことはない。


 「今日も誰からか依頼きてないかな……」


 キーボードに手を伸ばしカタカタと打ち込む。そして自作サイトを覗くと多くの依頼が来ていた。すべてを土日でできないだめ、ランダムで選んでいる。


 そして今も目についたものを選んでいた。


 「部屋の中の掃除か……。これにしようかな。場所は……」


 見つけた掃除依頼は強敵そうだった。しかしやりがいのありそうなものだったため俺はワクワクしながらパソコンを見ていた。


 そしてこのときはまだ強敵で、信じられない部屋に案内されるとは思っていなかった。

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