群青戦記

@Dendai_Akihiro

 プロローグ

 ────息を吸い、そして吐く。


 この瞬間を生き、そしてこの瞬間を体をもって感じるための動作。


 下に目を向ければ、そこら中に広がるいくつものクレーター。


 上にたたずむのは白磁の竜機。自らを誇るように浮いている。


 悠然と見下ろす姿はまさに王、闘域を総べる覇者。


 ひしひしと伝わる圧倒的な力に、思わず息を止めてしまいそうになる。


 暴力的かつ残虐的で────


 かつ神秘的。


 心の底から思ってしまう美しさが、そこにはあった。


「──もう、終わりにしよう」


 竜機は静かに呟く。


 それは威圧を込めた強い口調であったが、どうも一種の嘆願のようにも聞こえた。


 ──否、嘆願だけではなく呆れも感じられる。


 悠然たる竜機は己の持つ透明な剣先を向けた。


「アオイ、と言ったか──お前は十分に足掻いた。……が、お前の剣は私に届かない」


 竜機は淡々と言葉を発する。

 実際、その竜機の言う通りであった。アオイの竜機は大破寸前、まだ動けることが奇跡だ。


 ────それでも


「シロハ様、あなた様は勘違いをなされています」


 ふり絞るように、アオイは言う。


 心のなかの本音を、言葉にする。


「俺の心が折れないかぎり、いつかは届くものなんですよ。それが『十二機神姫』であるあなた様であっても」

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